第63話 対地射爆撃
(前書きに書くことが思いつかない……)
王国対帝国戦に介入することを決めたシュバルツェルナー帝国軍は、その日の内に軍の再編を行った。
まず空軍力の強化だ。今回の作戦に向けて、一式陸攻を装備していた偵察第一〇一飛行隊は、機種転換を行い爆撃任務に就くことになった。元々、暇を持て余していた偵察隊はいづれ来る戦闘の為に爆撃訓練、射撃訓練も行っていたのだ。
新生爆撃隊が導入したのはJu88 A-4である。これは第二次世界大戦中、ドイツが主力爆撃機として運用した機体だ。4名の乗員を全て機体前部に集約していることが特徴で、爆撃機によくある尾部銃座は無い。とはいえそれなりの防護機銃はある(7.92mm4丁)。同時期の日本軍の爆撃機である一〇〇式重爆撃機「呑龍」と変わらないサイズの機体だが、爆弾搭載量はなんと3倍もあった。その上で双発爆撃機とは思えないような軽快な動きが出来るのもポイント(どこの日本機だ?)。その為後に戦闘爆撃機型や夜間戦闘機型(G型)が造られている。ちなみに本機は戦時中にも関わらず15000機もの大量生産が行われている(戦闘機型も含む)。日本で最多生産された零戦ですら10000機程。日独の工業力の差を感じてしまう。(米帝のB-24は4発機の癖して18000機以上が生産された。さすが世界の工廠……)
余談だが、この機体もダイブブレーキを装備し急降下爆撃出来る(実際は緩降下爆撃)ので、スツーカ(急降下爆撃機)と呼べる。
爆撃機隊の任務は行軍中のベルムス帝国軍を急襲、対地射爆撃により敵兵力の漸減することと敵兵の士気を下げることであった。
今回の作戦では、航空兵力のみによる攻撃しか計画されていない。理由は単純で、ベルムス帝国軍まで距離がありすぎたのだ。いくらベルムス帝国領内に秘密基地があるとは言え、そこから出せる地上兵力は空挺部隊(数十人)だけである。
介入決定から3日後、爆撃機隊の人員と少数の歩兵部隊はベルムス帝国領内の秘密基地に到着した。1100mの滑走路が一本あるだけの場所で、格納庫は無く小さな司令部施設と宿舎があるだけだった。
翌日の早朝には、ハルノリが召喚したJu 88 爆撃機が9機並んでいた。
日が昇る前に呼び出された兵士達は、搭乗機の前で今日の任務を言い渡された。
「爆撃機隊最初の任務は宣戦のビラを撒くことだ。地味な仕事ではあるが、非常に大切な仕事である。各々抜かりなく」
爆弾槽に積まれたビラには、宣戦布告についてこと細かく書かれていた。また、ビラを拾った者は積極的に隣人に伝えるよう注意書きされていた。
数万枚ものビラを載せた爆撃機は、日が昇ると同時に飛行場を飛び立っていった。
当たり前だが特筆すべき戦果は無し。全機が無事に基地まで帰ってきた。
翌日は昼前に搭乗員を集めた。
指揮所の前に立ち、自分は飛行計画と爆撃目標を伝えた。
今日の爆撃目標は行軍中のベルムス帝国軍だ。今回は数十万の大軍のため爆撃は上手くいくだろう。
自分は指揮所のトップに立ち、飛び立って行く飛行機を見送った。
〜
俺はボムス。攻撃第七〇一航空隊第一中隊第二小隊の指揮官だ。以前は一〇一空の操縦だったが、今回の作戦に向けて小隊長を任せられることになった。使用機材もずんぐりとした一式陸攻からスマートなJu88に変わった。
出撃前の作戦会議では俺達二小隊は、一小隊に続いて目標を攻撃することが決まった。これには一番乗りを期待していた部下達もだいぶ落ち込んでいた。ちなみに三小隊は二小隊のあとに攻撃することとなった。また、戦果確認は一小隊がすることとなった。
会議を終えた俺は自機に向かい、出撃前の確認作業を色々と行う。最も大事なのは爆弾投下実験だ。せっかく目標に辿り着いても、お荷物が捨てられなかったら意味がない。俺は繰り返し何度も、爆弾が投下出来ることを確認した。ちなみに搭載しているのは250kg爆弾4発と50kg爆弾28発。この内250kg爆弾は翼下に懸架されている。
出撃の時間が迫り、俺達搭乗員は指揮所の前に並んだ。出撃前に皇帝と司令の訓示を聞き、自機へ乗り込む。Ju88は機首に乗員を集中配置しているから、4人が並んで乗り込む。俺は操縦席に座り、各員が乗り込むのを待つ。全員が乗り込んだことを確認すると、整備員に発動機始動の合図を送る。右、左の順に発動機を始動させる。回転数が既定を上回ったことを伝えると整備員達は機体を離れていく。
機体はエプロンを出て滑走路へと向かう。烈機も続々と滑走路に向かってきた。
小隊が滑走路に並ぶと指揮所からのゴーサインが出た。さぁ、離陸だ。
機体はゆっくりと加速していく。機体がフワッと浮き上がるまで異様に長く感じたが、何とか離陸出来た。機体が重すぎるせいで1100mある滑走路でも離陸にはヒヤヒヤする。
飛び立った俺達は先に離陸し空中待機していた一小隊に合流する。そして遅れて離陸した三小隊と合流し、緩やかな編隊を組んで目標へと直進した。大量の爆弾を抱えているため上昇率は低めで、0.1m/sあるかないかくらいだ。ノロノロと高度を500m程まで上げたあと、離陸と上昇で酷使したエンジンの出力を絞って進む。
目標付近まではとても暇な飛行時間である。直線飛行なのと、敵対空兵力が皆無だからだ。座学の時間に対空砲火等の話も聞いたがこの世界に火砲は存在しないし、そこまで警戒する必要は無いだろう。とは言え目標も予想と異なる動きをしている可能性もあるので、偵察員は双眼鏡片手にずっと地面を睨んでいる。
離陸から一時間が過ぎた頃、指揮官機から目標空域に入ったとの連絡があった。その後すぐに蟻のように行列をつくり、地上を進軍する敵を見つけた。同時に指揮官機も確認したようで攻撃準備が伝えられた。
各小隊が分離し、小隊3機で単縦陣を組んで目標に接近した。
一小隊を戦闘に9機が一列に連なって目標に向かう。指揮官機から敵のど真ん中を目標にするとの連絡が来た。
街道を進撃する敵軍と平行して高度300mの爆撃針路に入る。先頭を行く指揮官機が爆弾を投弾したのを確認すると、各機から無数の爆弾が投下された。
ヒュルヒュルという音とともにどんどん機体が軽くなっていく。暫くするとドンドンと音を立てて煙が立ち上るのが見えた。
爆撃を終えると今度は機銃掃射を開始する。
各機が旋回して散開し射撃準備をする。偵察員はMG 81機関銃(7.92mm)を構えた。
俺が機首を下げ降下し始めると偵察員と機首の機関銃2門が火を吹いた。
機銃掃射は5分程繰り返し行われた。それが終わると俺達はまた高度を取り、編隊を組んで基地へと帰った。
〜
予備機の一式陸攻による戦果確認では今回の射爆撃の成果が十分に認められた。いくつかの物資が炎上、パニック状態に陥った軍の様子が伝えられた。
この戦果大という結果を受けて、翌日、翌々日の反復攻撃が決定された。
ちなみに後日判ったことだが、今回の射爆撃による帝国軍の被害は以下の通りであった。
死者 73名
行方不明者 145名
負傷者 451名
死傷者 669名
損害率 0.004%
行方不明者が死者よりも多いのは、爆弾の直撃等により遺体を確認出来なかったことと脱走兵も一部含まれているためである。
日本軍機以外の戦記なんてどこにも無いから書きにくい……
 




