工兵は辛いよ
ども、Twitterで大嘘ついたカトユーです。
本当に申し訳ない。
そのお詫びというか今回は長めです。(多分)
引き続きインクヴァルト君目線で話が進みます。
訓練は色んな事に及んだ。まずは行軍から。どの様な作戦が行われるのかは知らないが、夜の暗闇なか整列して行軍する方法まで教えられた。これはかなりキツくて、途中眠気でウトウトしてしまったが、その度に中隊長殿にぶん殴られて目を覚ました。彼は口癖のように「敵はいつどこから攻めてくるかも分からん!そんな中気を抜けば、一瞬で殺られるぞっ!」と言い続けた。結局、日が昇ることには俺の顔は芋のようにデコボコとした顔になってしまった。
次は小銃の射撃訓練だ。俺達歩兵の武器といえば、各々がもつ小銃だ。これが使えなきゃ戦えない。その為、小隊長殿、中隊長殿に厳しく教え込まれた。「良いか!小銃はお前たちの半身だ!片時も話してはならん!寝る時も飯を食う時も小銃と共にあれ!」という、中隊長殿の有り難いことで、俺達は一日中小銃を持ち歩かされた。それなりの重さ、大きさがあり、中々持ち運びに困る代物であったが、手放せばすぐに中隊長殿が飛んできてぶん殴られるので、手放そうにも手放せなかった。そうそう、寝る時も小銃を話さなかったが、その小銃が暴発して死んだ仲間が居たなぁ。また、小銃に銃剣を着けて白兵戦を行う練習も行った。思った以上に使い勝手が悪かったが、万が一敵が接近した場合にはこれか徒手格闘で相手を倒さなければならない。それ故に、小銃訓練並みにみっちりとやらされたのが大変だった。疲れるし。
射撃訓練を終えた俺達は、次に戦闘工兵としての動きを学んだ。これはかなり危険な任務で、命の危険も大きい。何せ、戦闘の最前線で作業を行うのだから。敵陣に爆薬を仕込んだりするのは大変で、訓練では敵陣にたどり着く前に死亡判定をもらうことが殆どだった。つまり、実戦なら俺は死んだのだ。そんな、厳しい訓練だったが、少しずつ工夫を凝らして行けば割と安全に敵陣へとたどり着くことが出来るようになった。まあ、上手く出来るからと言って自ら志願したいとは到底思えないが。
他にも習うことはまだある。それは、陣地の構築だ。今回の戦いではこれがメインとなるかもしれない。というのも、今回の防衛戦は彼等を自らの陣地に誘いだして一網打尽にするというものだからだ。陣地が効率的に出来ていれば、それだけ安全に、敵を葬ることが出来る。逆に、穴だらけの陣地を作ればあっという間に突破され、俺達が殲滅されるだろう。そんな訳で、俺達は陣地とはなんぞや?という初歩的な内容から、かなり細かく学ばされた。……作戦開始までの時間は、殆ど陣地構築の講義と実践だった気がする。ただ、これまた慣れれば陣地を、構築するのも容易であった。力仕事は辛いがこれが俺達を守ってくれる重要な存在になるなら、嫌でも一生懸命になるものだ。
こんな感じで今まで以上に濃密な訓練期間を終えた俺達は、皇帝陛下の命令により敵前面への配置が行われたのであった。驚いたことに皇帝陛下が直接指揮するらしい。さらに、後方で教育中だった筈の第二中隊まで前線に連れて行くらしい……。
以前から続けられていた、道の整備のおかげで俺達が分乗した半装軌トラック(Sd.kfz.251)は快調な走りを見せていた。とはいえ、目的地まで道が整備されている訳でもなく、俺達は途中で下車を命じられ、渋々トラックを降りた。そこからは徒歩での行軍だ。聞けば、まだ数十kmは前進しなければならないらしい。鬱蒼とした森林をただひたすらに進んだ。結局、4日間歩き続けて見つけた草原に、俺達は陣地を構えることになった。さぁ、ここからは工兵の出番だ。皇帝陛下が中隊長殿の指示を出し、それを俺達に伝えて、俺達が実行する。今回は小隊単位で行動する様だ。まず、小隊用の陣地を配置したあと、他の小隊との接続する塹壕を掘る。配置は、右翼から第三小隊、第一小隊、第二小隊の順である。第二中隊の新兵達は第一中隊の支援に徹するらしい。また、戦線の中央にある第一小隊の陣地に中隊本部が置かれ、そこに皇帝陛下も待機している。
また、歩兵陣地の後方には砲兵陣地が置かれ、1個中隊が配置された。
人員のみがやってきた戦車中隊の兵員は、皇帝陛下が召喚した戦車に早速乗っていた。どうやら、帝都の戦車中隊を全て連れてきたらしい。俺達の目の前には、鋼鉄の馬車が7輌もいた。以前、戦車乗員の話を聞いたが、あれはチハ車というらしい。歩兵の豆鉄砲に比べたら、57mm砲はとても大きく感じる限りだ。俺達用の陣地を掘った後は、戦車がダッグインするための場所を右前方に掘り、偽装を施す手伝いをした。まあ、見慣れた俺達なら一瞬で見破れる気もするが……
こんな感じで、大急ぎで陣地を構築したが、敵が来るのはまだまだらしい。というわけで、何故かこんな所に簡易的な飛行場を設置することになった。皇帝陛下の移動を考慮して、とのことだ。勅令とあらば、即座に実行に移さねばならない。とは言ったものの元々平坦な草原だったから、草を取り除いてロードローラーで均せばすぐに出来た。
完成した飛行場に皇帝陛下が召喚したのは、今でもとはちょっと違う変な形の飛行機だった。翼は異様に長く、機首はめちゃくちゃ細い。そして翼からはえる長い主脚。この奇妙な飛行場はどうやら、Fi156 シュトルヒというらしい。俺達陸兵が滅多に見ない飛行機を間近で眺めるなか、陛下は自ら機体に乗り込んだ。陛下は飛行機を操縦出来るのか!そんな風に驚く俺達を横目にシュトルヒという飛行機は、ほんの僅かな滑走で離陸してしまった。陛下が操縦する飛行機は、今まで見た機体の中で最も遅く飛んでいる。あれが限界なのか?皆がざわつくくらい、ゆっくりとした飛び方を見せたあと、シュトルヒはストンと落ちるように飛行場に帰ってきた。うーん、変わった飛行機だ。
降りてきた陛下は燃料を補給したあと、中隊長殿を乗せてどっかへ飛んでいってしまった。あれ?俺達どうすれば良いんだ?
陣地を築いた俺達は軽く訓練をしたあと仲間と談笑をしていた。次にやってくる敵は、人族無敵の騎士だとか、王国軍の総兵力がこちらにやってきているとか。あと、俺達も飛行機に乗りたいな〜とか。なんて他愛もない話をしてるうちに陛下が操縦するシュトルヒが帰ってきた。あれ?中隊長殿の顔色がよろしくないような。……何かヤバいのか?いつもと違う中隊長殿の表情を見た、俺達は「やっぱり、大軍がこちらに向かってきてるんじゃないか?」とざわついた。
やがて、中隊長殿は各小隊長殿と軍曹殿を中隊本部に呼び出した。……やっぱり、よろしくないことが??
しばらくして、何故かげっそりとした小隊長殿と軍曹殿が出てきた。すぐに不時呼集がかけられ、慌てて小隊長殿の前に並ぶ。今更だけど、殿付けは面倒くさいから小隊長と呼ぼうか。
小隊長は何故か、ため息をついて俺達に話し始めた。
「皇帝陛下の命により、第一小隊はこれよりトーチカを造る!トーチカというのは……」
うへぇ。ここにきてまた土木工事か〜。小隊長の口調から、陛下の思いつきらしい。俺達に休みをくれよ。……あ、さっきまでのんびりと喋ってたわ。
ともかく、トーチカというのはかなり大掛かりなもので、造るのは結構大変そうだ。
驚いたことに壁の厚さは1mも必要らしい。何と戦うんだ?
言われた(命令された)からには、やらなければならない。それが軍隊だ。造り方はともかく、これの必要性については小隊長も言葉を濁していた。……やっぱり陛下の思いつきじゃね?
陛下が召喚したコンクリートに四苦八苦しながら、夕方までには形が出来た。ここで軍曹が予想外の事を口にする。「インクヴァルトぉ、俺達第一小隊だけで他の小隊用のトーチカも造るんだぞぉ」と。もう泣けてきたね。てか、他の小隊は何やってんだ?と愚痴る様に言うと、傍にいた小隊長が、「第二小隊は予備陣地の構築、第三小隊は道路整備を任されていたぞ」と返してきた。うわ!小隊長殿、そこに居たんですか!?第三小隊羨ましいなぁ…ここなら道路整備なんて楽勝じゃねぇか。
こんな感じで時折、仲間達あと将校も交えて言葉を掛け合った。
流石に日が沈んだ後は、作業中止となり休むことが出来た。
「インクヴァルトぉ、今夜の歩哨を頼んだぞぉ」
おいおいマジかよ。今すぐに寝っ転がって寝たいんだけど。てか、そこで酒飲んでる奴、どこで手に入れたのかは知らんが俺にも寄越せ。
グダグダしてると軍曹に睨まれたので慌てて歩哨に向かう。とは言っても敵の気配はまだないし、とくに魔物が出る訳でも無いので、丁度いい大きさの岩を見つけて座る。煙草を嗜んでいる訳でも無いので、手持ち無沙汰になり満天の夜空を見上げる。
「そういえば、こんなにゆっくりしたのは久しぶりだな……」
「ゆっくりするのもいいもんだろ?」
「……。ゑ?」
「どした?」
どした?じゃねぇよ!なんでこんなとこに陛下が居るんだよ!?
なんか歩哨をサボってたら皇帝陛下に会ったんだけど……
次回は来週の火曜日か水曜日…?
実を言うと、テスト週間。週末は航空祭とかで忙しい。浜松基地に行きますよ〜




