第4話 腹が減ってはなんとやら!
どうもカトユーです!
今回も異世界遭難?編です。
それではどうぞ!
今日も朝から草刈りだ~!
······はい、精神が病んできています。異世界にきて、すでに太陽が十五回は昇っている。つまりは遭難?十六日目だ。ちなみにここ三日は水以外は何も口にしていない。ああ、腹がへった。
基本、草刈りだけなので頭は暇だ。だからこそ、ふとした時に食べ物のことを考えてしまう。和花の作った弁当が懐かしい。食べ物もそうだが、人も恋しくなる。人に会わず、手元にあって文明を感じるのはまさかの銃······。これで人の温もりなど感じるはずがない。
黙々と腕を振ること八時間。今日も日が沈み、異世界生活十六日目が終わる。そして、今日もエルフの村に着かなかった。火を起こす気力も無く、すぐに寝てしまう。
十七日目。今日も日の出とともに前進し始める。昨日は久しぶりに夢をみた。ただ、飯をたらふく食べるだけの夢だったが、鮮明に覚えていた。それほどまで空腹だということかもしれない。もう頭のなかでは、茶碗一杯のご飯の事しか考えられなかった。異世界に来たときは、エルフの村に対して非常に興味を抱いたが、この空腹ではそこで飯にありつけるということしか考えられなかった。
その日の夕方、空腹に堪えきれず、刈った草を水洗いしそのまま口にいれてみた。
「あ~っ!」
口の中に電流が流れたようだった。自分は慌てて水を飲み、口の中のものを吐き出した。それを何度か繰り返すうちに痺れは消えていった。後に知ることになるが、この草は電気草と呼ばれ、麻痺薬などに使われるもので、自生していることが少なく、天然物は貴重なものだった。
自分は顔をしかめる。さっきの草の見た目は地球の雑草とほとんど変わらなかったのに、痺れる効果があったのだ。いよいよ、地球の常識が通じなくなってきたのかもしれない。
次は、道から少し外れたところに生えていた、芹のような植物を選ぶ。これは、少しお湯を通して食べてみる。
「おおっ!うまい」
率直な感想は、甘いだ。植物らしい苦さが多いもののその先に少しだけ甘さを感じることができる。それに、ひどい空腹のため美味しく感じるのかもしれない。周りを見れば、たくさん生えているので片っ端から採っていく。
わずか十分で一キログラム以上採れた。そのまま、水洗いして飯盒の中につっこんでいく。ブクブクと沸騰しているのを見ていると、早く食べたいと気がはやる。堪えきれず、残っていた芹らしきものを水洗いのみで食べる。
「ん!」
思わず声をだしてしまうほど甘かった。さっきとは比べ物にならない。飯盒の中にあるのも全部取り出す。これまた悠育の知らぬことだが、この芹らしきものは「コンカン」と呼ばれておりレアな山菜である。
そんな一キログラムもあるコンカンを貪るように食べて、寝てしまった。
十八日目。これまでと変わらず、朝日が上ると同時に起きて持ち物をまとめ、出発する。相変わらず小休止ではスキルの練習をする。ちなみに、これまでにわかったことは、
・スキルの使用回数はレベルで変わる
(現在は一日一回)
・一度に召喚できる量が決まっている
・召喚出来るのはミリタリー関連のもの
最後の項目だが、中々便利だった。ミリタリー関連のものといっても、携帯食糧や燃料なども召喚出来た。しかし、歴史上の偉人などは無理だった。それに、携帯食糧といっても今のレベルだと重焼麺麭つまりは乾パン一枚だ。これでどうしろと······
極めつけは、レベルが全く上がらないことだ。今まで、八回使用したが上がらない。こんなことなら、女神様に経験値上昇のスキルとかつけてもらうべきだった。
今日も乾パン一枚を召喚して、五秒で呑み込む。ああ、自分のスキルが······
そんなことをしつつ、今日も前へ前へと進んでいく。
日が沈む、そして日が昇る。そうこうしているうちに、異世界にきて三十日が過ぎた。そして、自分は変わり果てていた。頬はやせ、腕と脚は小枝のような細さになり、骨と皮だけになっていた。
目には生気が無く、手入れをしていないため髭が伸び、髪も伸び放題。まるで落武者のような形相だ。それもこれも食糧がないせいだ。草を毎日喰うだけでは満足できるはずがない。ましてや、自分は育ち盛りの高校生だ。
そんな体になりながらも、蛮刀を振るい前へと進んでいく。不思議なことに、人間は不足した栄養素のことを無性に欲しくなるらしい。事実、自分の中では魚や肉などタンパク質の豊富なものを想像してしまう。いつぞやのコンビーフが頭から離れない。
ちなみに、悠育が今日まで進んだ道のりは三百キロメートル程。日本でいうと、東京から名古屋まで位だ。それを高校生が所持金無しで行けるのか?いや、行けないだろう。
三十日が過ぎてからはどうなったかあまり考えていない。考えるのが無駄だと感じたからだ。途中も、色々あった。
例えば、小休止した時に蜥蜴らしき生物がいたので銃剣を突き刺し、捕まえた。捕まえた蜥蜴を木の棒にさして火にかけた。久しぶりの生物に喜びながら、こんがりと焼けた蜥蜴を口に入れた。「ジャリッ」と砂を食べるような音がした。あまりにも体が小さく食べるようなところが無かったのだ。ほぼ炭のような蜥蜴を食べたが、満足感を得ることは出来なかった。
また、草を刈っている時に人の声が聞こえたこともあった。森の中から、言語は分からないが人が話している声が聞こえたのだ。慌てて探しに行ってみたものの、遂には正体を見つけることは出来なかった。或いは人に会いたいがゆえの自分の幻聴だったのかもしれない。
結局、自分は律儀に日付を数えていた。
三十三日目。その日も地獄を味わうことになるのだった。
どうでしたか?
なるべく、戦記の本を読んで史実のような雰囲気にしています。
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