第37話 トラトラトラ!
ども!カトユーです。
テスト期間になったのでどんどん投稿していきます!
帰投した翌日、早くも次の作戦が始まった。ライノゼ王国軍迎撃するためのものだ。幸い、ライノゼ王国の大軍はゆっくりと行軍しているので、時間の猶予はまだある。
まず最初はビラまきだ。またかよ……と思うかもしれないが、敵の戦意を減らすにはこれしか無いのだ。目的地はライノゼ王国の王都・サーベスだ。今回のビラは新聞のような感じのものにしてみた。内容は、アルノーツ村を帝国が占領したというニュースで、白黒だが写真付きでまいといた。印刷するの大変だよ?
あとはビラまきを兼ねてB-17による偵察。備蓄しておいた燃料もほぼすっからかんになってきたので、二日に一機のペースでしか飛ばせて居ないが……
半月後、いよいよ我々の攻撃が始まる。自分はレーネ大佐を呼び出し、出撃命令を下した。
「レーネ大佐。部隊の練成は?」
「完璧です。皆、攻撃に出たくてうずうずしていますよ」
「そうか、分かった。なら、明日の朝寝ている奴らの目を覚ましてきてやれ」
そう言うと、レーネ大佐はクスッと笑って
「分かりました。起きたら天国にいたなんて事にならないと良いですね」
と言ってきた。そのまま、失礼しますと出ていったが、あいつ絶対浮かれてるな。
午後には五〇一空の隊員に、航空写真や簡易的な地図を見せながら作戦指示を出した。ここまで、三ヶ月も訓練のみだったからか皆初めての実戦にワクワクしているようだ。まあ、三ヶ月で実戦とか練度大丈夫なのか?って普通は思うけど。そうは言っても、抜群の身体能力のおかげか、彼らの飛行技術は悪くはない。流石に空戦は無理だろうが相手にそんな飛行兵器は無いので大丈夫だろう。問題は爆弾の命中率だ……
「君。爆撃の命中率はどれくらいだ?」
気になったので近くにいた兵士に聞いてみた。するとその兵士はビクッと驚いてから敬礼して、
「よ、43.3%です!」
とどもりながら答えてくれた。そりゃそうだよね。軍の一番トップの人間が突然話しかけたらびっくりしちゃうよね。
それはともかく、43.3%か……。大体、半分当たるって感じか。
ちなみに五〇一空には九七式艦攻が4機配備されている。少ないと思うかもしれないが、現状この機数を維持するので精一杯だ。それに、燃料備蓄の問題もあるし。
今回の攻撃では、全機が250kg爆弾1つと60kg6つを搭載する。正直、800kg爆弾1つでも良いかなと思ったけど、命中率の事を考えると数撃ちゃ当たる戦法にしてしまった。
翌日、自分はまだ暗い飛行場に立っていた。出撃する五〇一空を見送るためだ。目の前では、爆装した九七式艦攻がブロロロと力強いエンジンが響かせて待機している。
出撃前の軽い打ち合わせの後、出撃する隊員達にエールを送った。
「諸君の攻撃がライノゼ王国軍への最初の一撃となる。これはとても意義のあることだ。今まで虐げられてきたエルフが、初めて人間に牙を向くのだ!君達は後に英雄となるだろう!何が何でも爆弾を当ててこい!最後に、帝国に勝利を!以上だ」
傍らで控えていたレーネ大佐がソワソワしている。そんなに出撃したいのか……
そんな彼女を見て、面白い事を思いついた。おもむろに塗料を取り出し、彼女の乗る機体の250kg爆弾に「最初の一撃!!」と書いてみた。最初、彼女はポカンとしていたがやがてニヤッと笑って
「私が最初に爆弾を落として良いんですね?」
と言うと、周りの兵士達も俺の爆弾にも書いてくれ!とねだってきた。あまりにも必死だったので、全員の爆弾に「最初の一撃」と書いておいた。これでは誰か最初の一撃を決めるのかが分からない……
そんな騒動があったせいで、予定より10分遅れて全機が離陸していった。上空でぐるりと旋回すると、見事な編隊を組んで目標へと向かっていった……
〜
私はレーネ・フォン・ルドルファー。シュヴァルツェルナー帝国空軍第五〇一航空隊の司令官で、階級は大佐です。今でこそ空軍のトップである私ですが、ほんの数年前までは貧しい生活をしていました。その頃は人族との戦争で焼け出されたエルフが多くいました。かく言う私もその1人でした。育ての母を目の前で亡くし、アテもなく彷徨っていた私はライノゼ王国軍の兵士に捕らえられました。そのまま、王都に運ばれて薄汚い牢屋に閉じ込められました。兵士の話を盗み聞けば、私達はそのうち奴隷にされたり殺されたりして処分されるだろうとのことです。私、死ぬのか……と考えていたある日、私を含めたエルフ全員が外に出されました。いよいよ最期の時か、と涙を流しそうになった私達に対して、偉そうな人は「今からとある村へ移動する」と。それが今いる「ハルコフ」です。あ、前はハルシコフスカヤと言っていました。とても長かったですよね。
ともかく、私はそこで奴隷のように扱われるのかと思ってました。しかし、ハルノリ大佐が来てから全てが変わりました。召喚というスキルを使って瞬く間に生活を豊かにしてくれました。もちろん、軍人として育てるために辛い訓練をさせられましたが、今では良い思い出です。そこで訓練を終えた私は部下を持つ司令官になれました。
今日もこうして部下を率いて飛び立ちます。ただ、今までと違うのはこれが実戦だということ。私の母を殺したライノゼ王国軍への攻撃です。更に言えば、私達が最初の攻撃をするそうです。部下も最初の一撃を決めたいと言ってますが、ここは上官の命令に従ってもらいましょうか。
暇つぶしに無線で会話しつつ、目的地であるライノゼ王国軍のもとへ向かいます。
「居ませんねえ〜」
通信手席の部下が話しかけてきます。実際、彼はどこに行っても暇なので仕方無いですよね。私も「暇だな」と言いながら、目的の部隊を探します。
やがて僚機から敵発見の報告があり、その機体の示す報告にライノゼ王国軍の姿が見えました。遠くから見る王国軍はアリの行列みたいです。
「各員、突撃せよ!」
4機の九七式艦攻は私の指示で爆撃姿勢に入ります。
「ヨーイッ」「テーッ」
私の号令のもと、全機が爆弾を投下しました。
「偵察手!戦果確認!」
私は偵察手の部下に命令して、爆撃の成果を聞きます。どれくらい命中したのでしょうか?
後ろを振り返って見ると、土煙の中にいくつか黒煙が見えます。
「至近弾多数確認!」
それからやや間があって。
「物資の炎上を確認!爆撃の効果アリ!」
通信手に同様の文面で、司令部に送ってくれと伝えておきます。ハルノリ大佐も心待ちにしているでしょうから。
〜
「司令!攻撃隊からの電信です!」
やっと来た!
「続きを」
ここまで走って来たのだろう、兵士は深呼吸して次のように述べた。
「トラトラトラ。ワレ奇襲ニ成功セリと。来ました。その後、敵ノ被害ハ甚大ナリ。サレド、第二、第三ノ攻撃ノ要有リ。と来ています」
うーん、自分は真珠湾攻撃の電文でも傍受したのかな??レーネ大佐め、遊んでるな。
「うむ、分かった。報告ありがとう」
そう言うと、「失礼しました!」と伝令は去っていった。その後ろ姿を見つつ、自分はふと思いついたある事をするために別の整備兵を呼び出す。
「なんのご用ですか?」
「もう少ししたら帰投する、九七式艦攻の内の1機を再出撃させる事は出来るか?」
「はあ…?もちろん、出来ますが?」
整備兵の男はいまいち理解していなかったようだがこれで準備は終えた。レーネ大佐、ゆっくり帰ってきなさい。我々は歓迎するから(悪魔の微笑み)
何も知らないレーネ大佐は、定刻より30分遅れて帰ってきた。
彼女は機体から降りると部下とともに「無事成功したね」と話し込んでいた。
彼女の機体には、整備兵が取り付き燃料補給をしたり装備換装したりと慌ただしく動いていた。彼女もいつもと違う整備兵の動きを不思議に思ったようで、自分のもとに向かってきた。
「あの?何で出撃準備をしているんですか?」
「ああ、レーネ大佐が電文で遊んでいたからね。新しい任務をやってもらおうと思ったんだよ」
「ふえっ!?」
彼女は可愛らしく驚く。
「レーネ大佐には、戦果確認の仕事をしてもらう。写真撮影もな」
元々、この任務はB-17に任せようと思っていたのだが、燃料の使用量が尋常じゃないので九七式艦攻に変えたのだ。まあ、彼女に頼んだのはあのふざけた電文のせいだ。たぶん。
「まあ、そういうことだから任務、頼んだよ?」
そう言いながら絶望する彼女の肩を叩く。機体の方からは整備兵が「出撃準備が整いました!」言っていた。
レーネ大佐頑張れ。
明日は僕がなろうに投稿し始めて一年が経ちます。ってことで、次話はちょっと変わった?話を書こうかなって思います。勿論、本編とは関係ないです。
なんか、最近閲覧数増えてるんですけど、俺なんかした??いや、嬉しいんですけどね。
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ちょーどうでもいいこぼれ話
今回出てきた「最初の一撃!!」には元ネタがあるんですよ〜
真珠湾攻撃の時の話。瑞鶴艦爆隊がいちばん最初に爆弾を投下することになったと言うことで、第二分隊長の坂本明大尉(当時)が、自身の乗機に搭載されている250kg爆弾に白エナメルで「開戦劈頭第一弾」と筆太に書いたそうです。
また、その4ヶ月後意趣返しと言うべき出来事が…。初の日本本土空襲をおこなったB-25の搭乗員が、日本本土に落とす爆弾に日本から贈られた勲章を縛りつけたらしいです。なんだこれ?
こんな感じでちょいちょい史実の話を作中にとりいれてます。探してみてね!
後書きがなげえ…