第33話 召喚!召喚!召喚!
ども!最近になって現代兵器の良さが分かってきたカトユーです。(作中ではまだ出せないけどね…)
今回は、説明マシマシパートです!
☆はとばしても構いません。(雑学を増やしたい人や、指摘厨、アンチの方々はぜひご一読を)
突然だが、新兵器を導入しようと思う。何故?と思うかもしれないが、ディッカー達に欺瞞情報を流させることで、ライノゼ王国の大軍と戦う事が決定的となった今、自分達の軍隊ー帝国軍ーの攻撃力は低すぎると考えられる。まずは陸軍だ。面白半分にルノーFT17を導入したが、弱すぎる。37㎜砲では全く太刀打ち出来ない。また、歩兵にブローニングM2機関銃を装備しているから、まだマシなものの有効射程外から魔法攻撃でもされたら、何の意味もない。今作戦(あ号作戦※1・絶対成功させるからな)ではアルノーツ村併合は攻勢に、その後はアルノーツ村防衛にでも回ろうと思っている。つまり、初戦では攻撃力がなんとしても必要だ。機関銃は防衛戦では力を発揮するが、攻勢時では移動に邪魔なお荷物となってしまうのだ。
そこで、今回導入するのは歩兵の支援火器となる、「歩兵砲」だ。ちなみに歩兵砲というのは、第一次世界大戦後に歩兵の脅威となった戦車に対する火器として、平射射撃を可能とした兵器だ。
「15cmsIG33を❰召喚❱」
そう言って出てきたのは、迫撃砲を無理矢理砲架に載せたような、不格好な砲であった。これは、一九三三年にドイツ軍が採用した兵器で、迫撃砲と歩兵砲を同じ兵器にした汎用砲だ。(一応、区分は重歩兵砲だ)
この砲は、38kgもある砲弾を初速240m/sで撃ち出す。有効射程は4.6kmある。また、仰角は75度まであり、迫撃砲と同じように使う事も可能である。史実では、その巨大さ故に移動が困難で運用に苦労したり、そもそも高額な生産コストが仇となり、後継となる新兵器が登場すると、早々と更新されてしまった。しかし、機動性に関しては、自走砲化に成功し多くの戦車の車体に載せられた。
そんな中途半端な兵器だったが、威力だけで言えば群を抜く性能だったので採用した。要は、数より質を優先したのだ。また、歩兵砲というだけあって、歩兵部隊への配備が簡単だったので、早急な火力強化にはうってつけだった。
歩兵の装備更新は済んだので、次は機甲部隊だ。現在のFT17では、前述の通り威力が弱いので一刻も早く新兵器の導入が必要であった。だが、現在のレベルで召喚出来る(一九三〇年代前半)AFVの中で、特に使えそうな物は無かった。……いや、これならいいかも。またしても、面白半分で召喚することになったのは、戦車大国ソ連が誇る重戦車だ。
「T-35を❰召喚❱」
出てきたのは、いくつもの砲塔を持つ巨大な戦車だった。T-35。後継車設計の時には、かの有名なソ連共産党書記長のスターリンに、「君たちは何故戦車の中に百貨店など作ろうとするのかね」と言わしめた迷(名)戦車である。
特徴的なのは、砲塔が五個もあることだ。一番大きい砲塔(主砲塔)には当時としては大口径の16.5口径76.2㎜砲を。副砲塔二つには、42口径45㎜戦車砲を搭載している。また、二つの機関銃砲塔には7.62㎜機銃が搭載されている。ちなみに同機銃は6門ある。まさに、陸上戦艦と呼ぶに相応しい武装となっている。反面、この巨大の動かすエンジンは500馬力という貧弱さなので機動性は悪い。そうは言っても30km/s近くは出るので、歩兵よりかは機動力はあるのだが。(比較対象が歩兵って言うね……)また、非力なエンジンのせいで装甲は見た目に反して薄い(最大で30㎜程)。まあ、生産された時期を考えると厚い方ではあるのだが……。
☆
そもそも、何故このような戦車が生まれたのか。それは、イギリス(変態)のせいである。彼らは時として素晴らしい兵器を発明する反面、時折ゲテモノ兵器を造る事もある。(やはり紅茶は頭に重大な影響を与えるのだろうか?)第一次世界大戦中に戦車という画期的な兵器を発明したイギリスは、戦後も新たな戦車の開発を続けていた。その中で出来たのはA1E1 インディペンデント重戦車という、多砲塔戦車であった。結局、この戦車は試作段階で終わってしまった。ここで終われば良かったものの、あろうことか、世界各国がこの戦車に注目してしまったのである。日本、アメリカ、フランス、ドイツそしてソ連である。(ちなみに何を血迷ったのか大元のイギリスもこの後に、多砲塔戦車を生産する)しかし現在、多砲塔戦車は見られない。それは何故か?一見して、一両あたりの砲が増えて攻撃力が増したように見える。しかし、現実は上手く行かない。多くの砲塔が重なり合うようにしてあって、射界が制限されたり、砲塔同士の連携が困難であったり。そして、トドメとなったのはその生産コストの高さである。多砲塔戦車がブームとなった一九二〇年代には何があったか?世界恐慌である。各国が軍事費を減らす中、当然のごとく馬鹿高い金額を払って造る、鈍足、紙装甲、弱武装(当時の大口径砲=主砲の貫徹力は低かった)戦車なんて早々に切り捨てられた。しかし、ある国は独自路線を突き進み世界恐慌の影響を受けなかった。それはソ連だ。資本主義国が不況にあえぐ中、ソ連は資源や資金を大量に注ぎ込み、T-35を生産した。ちなみに、総生産数63輌は世界最多だ。そうは言っても、欠点の多い多砲塔戦車の歴史は、時の指導者スターリンの一言によって終了する。当然、他国も世界恐慌から立ち直る途中で多砲塔戦車を造る余裕はなく、第二次世界大戦を迎える頃には多砲塔戦車の歴史は終わってしまった。
☆
そんな、時代の潮流の中で生まれた多砲塔戦車だが、この世界では大きな活躍をしてくれるだろう。何故なら、対人攻撃を主任務とするため貫徹力は全く考慮しなくて良いことや、機動力が乏しいなら現地で召喚すればいいだけである。逆に、この巨大さなら敵への威圧感は十二分にあるし、仮に攻撃をくらっても多砲塔なので、残りの砲塔で反撃できるので生存率が高く、継戦能力が高い事等のメリットが多い。そして何より、大口径砲が搭載されているところだ。これで攻撃力の大幅な強化が期待出来る。それに、多砲塔戦車というロマンの塊だから!
ということで、我が機甲師団にはT-35が三輌のみ配備された。一輌減ったのは、T-35一輌に十人乗ることになるからである。同じ人数であれば、FT17を五輌も運用出来たのだが……。
ともかく、陸軍には新兵器を続々投入することで、大幅な攻撃力の強化を図った。
空軍はというと、戦闘飛行隊を廃止にした。理由は単に戦闘機要らなくね?という、至って単純なものである。これまで、空を飛んでいるものと言えば、地球と同じような鳥ぐらいで、ファンタジーの定番であるドラゴンやワイバーンは未確認だ。おそらく、王国軍も対空兵器なんぞ持っているわけがないし、仮に持っていたとしても高度をとっていれば撃墜される事は無いだろう。そんなわけで、アルバトロス飛行隊のアルバトロスD.Ⅲは一年と少しの間、特に実戦に参加することなく退役することとなった。逆に以前あった、偵察飛行隊を再編成することにした。偵察飛行隊と言っても、今回はある任務を遂行してもらうことになる。
その偵察飛行隊に配備される機体は……
「B-17を❰召喚❱」
出て来たのは四発の巨大な飛行機であった。B-17は、一九三九年に初飛行したアメリカの大型戦略爆撃機である。本機は、元々沿岸防衛用に立案された機体だが、後に爆撃機として開発されることとなった。その後なんやかんやあって(皆大好きウィキ●ディアに詳しい話が無かった……)アメリカ軍に採用され、第二次世界大戦の欧州、太平洋等の各戦線に配備された。この機体の特徴は、強固な防弾仕様と防御火器の多さ、優れた照準器を搭載したことだ。機体主要部に防弾設備を置くことで、かなりの耐久性があった。それにより、零戦の20㎜機銃を持ってしても撃墜は困難であったと言われる。また、防御火器の数も多く、最終型では実に13丁ものブローニングM2機関銃を装備していた。
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三つ目の照準器についてだが、これはノルデン爆撃照準器と呼ばれる物だ。B-19やB-24、B-25、B-26にも同様に装備されていた。その構造は、眼鏡部と自動操縦装置からなる。ノルデン照準器は、高高度から水平爆撃でできるかぎり、多くの爆弾を命中させるために開発されたものだ。自動操縦装置と連動して、風速や速度、風向き等のデータをセットし、目標を照準器に捉えてあれば、その目標に向かって飛んでくれる便利な代物だ。また、夜間爆撃や超低空爆撃に対しても有効な照準器である。簡単に言えば、第二次世界大戦後期までアメリカが機密事項とした超スゴイ兵器である。ちなみに、日本は太平洋戦争初期の南方侵攻てほぼ無傷のB-17とノルデン照準器を手に入れ、コピー開発を進めた。だが、試作ですら完成したのが一九四五年六月の事である。知っていると思うが、この頃はすでに孤軍奮闘といった状態であった。さらに言えば、ようやく出来た生産品も、いざ機上テストを行ってみるとトラブル発生。そのトラブルを改善している最中に終戦となったのである。結局、四年近くかけてもノルデン照準器のコピー開発は出来なかったのである。そこに、日米の工業力、技術力の差を感じずにはいられない。
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話をB-17に戻すと、この機体は極めて優れていた。その一言に尽きる。さすが、空飛ぶ要塞と言われるだけあって、小ネタに尽きない。具体的には機首が吹っ飛んでも帰ってきたり(写真が残っている)、四発あるエンジンのうち三つが止まっても帰ってきたり……。ともかく、タフさが尋常じゃない。それ故に、少人数の我が空軍に採用した理由だ。ぶっちゃけ、機体がどれだけを壊れようとも召喚できるのでどうってこと無いが、搭乗員を失うとその補充は厳しいからだ。
ちなみに、航続距離は比較的短くG型で3220kmだ。まあ、それでも十分足りるのだが。
ここまでB-17の説明してきたが、一つ何よりも気になった事があるだろう。それは、この機体が偵察飛行隊に配備されるということだ。そもそも、B-17は重爆撃機である。なら何故、爆撃機として使用しないのかというと……。何か自分の良心に引っかかってしまうのだ。いや、何かではなく明確に戦略爆撃をすることに躊躇いがあるのだ。九七式艦攻であれば、緩降下爆撃などである程度狙った目標に命中させる事が出来るが、重爆撃機ではそんな器用な真似は出来ない。つまり、ある程度外れてしまうのだ。これでは非戦闘員への殺傷もあり得る事態となる。例えば、対ライノゼ王国戦では、王都サーベスへの爆撃を行うとする。果たしてそれは、人道的にどうなのか?戦争に勝つためなら手段を選ばないべきか?これは中々に難しい問題であると思う。今でこそ、国際法で無差別爆撃は犯罪であるとされているが、第二次世界大戦ではドイツもアメリカもイギリスも日本も無差別爆撃を敢行した。また、戦後も東西冷戦の中で米ソは互いの国に、核兵器を投入する方法を必死に考えていたのだ。勿論、この世界に国際法や条約等は無いと考えられる。そう言うと、なんだ別に良いでは無いかと思ってしまうかもしれない。ただ、忘れてはならないのは太平洋戦争で日本は東京大空襲を始め、広島・長崎への原爆投下等の無差別爆撃の被害を受けた歴史もあるのだ。そんな事が脳裏を過ぎっていくが故に、こうしてうんうんと唸るように堂々巡りを繰り返すのであった……
そんな話はともかく、B-17は第一〇一航空隊に二機配備されることとなった。二機のB-17は配備されて間もなく、ある任務に就く事となる。
次回は戦闘シーンですよ…
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@RVdX8yzugRufoNT
んだばっ!
※1、あ号作戦
一九四四年、米軍によるマリアナ諸島侵攻を受けて立案された大規模な作戦である。実行前から、あ号作戦の元となる計画書を米軍が入手したりしていたが、実行に移された。
マリアナ沖海戦では、何重にも及ぶ米軍の防空網(レーダーや待ち構える直掩機、VT信管等)を前に手も足も出ず敗北した。この海戦の結果、帝国海軍は最新鋭空母大鳳を含む機動艦隊(空母艦隊)は壊滅、それと同時に多くの艦載機を失うこととなった。また、絶対国防圏であるサイパン島を失陥することとなる…
こっちのあ号作戦は上手くいくから!(フラグ)