戦い。そして彼は王になる。上編
投稿遅くなってすみません。
「お願いしますっっっ!!!」
僕は床に頭を打ち付けていた。
先刻、紅葉と別れた後、僕は家に帰り、居間に家族全員を集めた。
そして、今に至る……。
「一体どうしたんだい急に…」
父と母が不思議そうに尋ねてきた。それもそうだろう、いきなりお願いしますと言われて、はいそうですかと受け入れられる人間はそうそういない。
しかし、これは最初に僕の本気を示すために言った。
今まで、僕が熱中した物なんて特になく、精々妹達、佐喜と佑喜のお守りをしっかりやっていた事ぐらいだ。
そんな僕が何かやりたいと素っ気なく言っても説得力がない。だからこうやって先に言って、真剣味を漂わせているのだ。
「実は、父上と母上にお願いがあります。
さらに、佐喜と佑喜には傍迷惑な話です。僕に、剣術を習わせて下さいっっ!!!」
僕が土下座したまま言うから、父と母はそんな事を言うために大袈裟なと笑っていた。
しかし違う、話はここからだ。
「そして、僕は王になるつもりです。もし僕が優勝すれば、この家を継ぐことはできないでしょう。そうなれば、佐喜と佑喜には、自動的に家を継いで貰わなければなりません。そのため、全員をここに集めたのです。」
パチパチと囲炉裏の火の弾ける音がうるさい。額を、冷たい汗が通る。
空気が重い。でも、ここで曲げてはいけない!
僕は、土下座し続けた。
不意に、父がゲラゲラと笑いだした。
「お前が王にか、そりゃまた大きく出たもんだ。」
腹が痛いと言わんばかりに笑い転げる。
しかし、僕の土下座は終わらない。
父が僕の気を察したのか、急に真面目な声になった。
「ま、それが本当だと言うのなら、剣術を習わせねばならんな。まぁ、私も今の国王が気に入らん。はよう邪国と合併すればいいものを、、、。
よし、私が直々に王国流剣術を教えてやろう。その後は他の道場で、さらにワザを増やせ。」
そう言って、父は僕の頭をワシワシと撫でた。
「佐喜と佑喜、お前たちには強制的で悪いが、17代目旅具秋宮の店主を継いでもらわなければならない。本当にすまないな。」
父上が深々と二人に頭を下げた。
「いえ、寧ろ光栄です。私達が店主なんて、夢にも思いませんでしたから」
「それに、兄上のために働けるのであれば、それもまた本望です。」
佐喜と佑喜が急いで、父上に頭を上げるように言った。それに、十歳とは思えぬ受け答え、僕の知らない間に大きくなったんだな。
まだ、僕には甘えてくるのになぁ…
「二人とも、迷惑をかけてすまない。そして、ありがとぅ。」
僕は一度立ち上がって、深々と頭を下げた。
妹達はまた、頭を上げるよう言った。
「ただし、慎太郎。お前は剣の修練以外の時間は秋宮で働いてもらうからな!」
父上がピシッと締めてくれた。
剣術を習わせてもらえるんだ、それくらい当たり前だ。
「はいっっっ!!!」
居間に張りのある声が響いた。
普段は無機質な返事をする僕が、こんなにイキイキと力の漲った声で返事をした事で、家族全員がギョッと驚いていた。
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〜玄武の年 春〜
あれから半年…。
「慎太郎、あれから半年経ったわけだが…。お前に、免許皆伝を与える。」
父上が頭をポリポリ掻きながら言った。
「いや、まず半年で免許皆伝を得られるお前が信じられん…。
今になってはもう小さな事だが、半年前からお前はどこかおかしかった!
なぜいきなり真剣で素振りができるのだ!?」
父上は、腑に落ちないと言う文字を顔に浮かべながら、王国流剣術免許皆伝を名乗る事を許してくれた。
田舎では、ちょっとした小競り合いから喧嘩に発展する事が多い。
だから喧嘩独特の身のこなしに、王国流剣術の体捌きを合わせてたんだけど、そのお蔭か、こうして免許皆伝を逸早く手に入れれたのだ。
ちなみに、真剣を素振りで使っていたのは、木刀が無かったから、代わりに使っていただけだ。
「父上、僕は自分の剣術を完成させたいです。なので、他の道場には習いに行きません。これから馬国の名だたる道場に、道場破りの旅に行きます。」
僕が言いきって父上を見ると、、、ポカンって音が似合う顔をしていた。
そして父上は黙って歩きだした。
家の縁側で草履を脱ぎ、金箔の線が混ざった障子を開け、自分の部屋へ入る。
そこには刀掛けに二振りの刀が掛けてあった。その内の一つには、見覚えがあった。
馬国の名刀、大業物が一刀、雷切、又の名を千鳥と言う刀だ。
「父上、それは雷切じゃないですか!
どうして、そんな国宝級の物がうちにあるのですっ!?」
驚愕する僕に、父上は徐に話しだした。
「秋宮家は何百代も前は武家だったのだ。当時は日本最強とも言われた程だったが、その力も衰え、今はこうしてしがない旅具店だ。
そして、お前が道場破りをするのなら、今ここに秋宮流剣術再興を目指そうではないかっ!
慎太郎、私は雷切を自在に扱う事が出来ない。だからお前が持て。真剣を素振りに使うお前なら扱えるはずだ。そして、秋宮流剣術初代師範として、馬国に名を轟かせろ!」
父上は僕の前に雷切を突き出してきた。僕はそれに跪いて、両の手で受け取る。
「承知しました。」
こうして僕は旅に出た。
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〜白虎の年 秋〜
道場破りの旅から、一年と半年。秋宮流剣術の名は馬国全土に知れ渡るまで大きくなっていた。
今では、京の僕の実家の近くに道場を建て、そこで父上が剣術指南をしている。
秋宮流剣術の奥義は父上にも使えない。使えるのは僕だけだ。
父上の許しがもらえるまで、奥義習得の修業に励むことはできない。
ちなみに、まだ誰一人とて奥義習得の修業を始めている者はいない。
「そろそろかな…」
そう言って僕は紅葉岳を見た。紅葉岳は例年通り朱く染め上がっている。
去年は旅で行けなかったが、ここに行く事をすごく楽しみにしていた。
昨年は旅で行けなかったため、紅葉岳の茶屋に言伝を頼んで、紅葉会えない事を伝えてもらった。
丁寧に舗装された赤と黄色の絨毯を登り、高台から辺りを見渡す。相変わらずの京の景色に感銘を受けながら、茶屋で買った団子を頬張る。
「ジュルリッ」
隣から何となくデジャブを感じるような音が聞こえる。
「もう、腹は鳴らさないんだな」
しれっとそんな事を言うと、太もも辺りに衝撃が走る。彼女の蹴りだ。しかし、もう痛くはない。
「全く!久しぶりに会ったと思ったら、デリカシーに欠けるな!お主は!」
右に佇むのは朱色の振袖に身を包み、金の簪が光る、紅葉だった。
もう昔の様な幼さは抜け、代わりに妖艶さが漂い、凹凸のしっかりした体になっている。
「これまたべっぴんさんになって、久しぶりだね、紅葉」
そう言うと、彼女は顔を赤くしながら
「お主だって変わりすぎだ!背も六寸くらい伸びただろ?あと顔も、あの、その、凛々しくなっとるし〜///」
「確かに背は伸びたけど、顔には自信ないよ…
実際言い寄ってくる女子は沢山いるけど、多分俺の剣の腕を知ってだろうし」
そう言った僕に、紅葉は呆れた顔で言った。
「お主は自覚がないんか、残念と言えばいいのか、良かったと言えばいいのか………。
まぁ、よい。あとお主、邪国でも相当有名人じゃぞ?『神速の剣豪』と言えば知らん者はおらんじゃろ」
『神速の剣豪』、僕に着いた二つ名。
僕の剣技、特に抜刀術に関してついた異名だ。光の速さのような居合斬りで、視認することができないことから、一躍有名人になってしまったのだ。
凄く恥ずかしいからやめてほしい…
「馬国の各地で道場破りをしていると聞いたが、まだ続けとるんか?」
彼女が自分で買った団子を食いながら聞いてきた。
「いや、もうやってない。後は武闘会で優勝するだけ。」
僕の真剣な表情の返答に、彼女は頬をより一層赤くして言った。
「そうか、楽しみじゃな!妾もこっそり見に行くから頑張れよ!」
そう言って、彼女は山を下りていった…
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