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秋の国  作者: digital boy
1/3

出会い そして彼は決意する

春夏秋冬シリーズ、第3弾!!!


舞台は日本、人が帯刀していた時代、今で言うフォッサマグナ(この世界では、中央山脈)を中心に、2つの国に分かれていた。


東の国を馬国(まこく)、西の国を邪国(やこく)と言う。

馬国は軍事力を中心に、行政を行う軍事国家だ。馬国では、滅多に犯罪は起きないらしい。この国の国王は、年に一度行われる武闘会で優勝した者がなる。

邪国は自由貿易、自由商業を掲げる、商業国家だ。

邪国の国王は、代々王家の血筋を引くものが相続する。


二国の勢力を称え、二つの国を邪馬大国(やまたいこく)と呼ぶが、それは完全ではなく、互いに敵国同士であるがため、邪馬大国とは呼べない。

しかし、敵国と言てっも名ばかりで、実際は不干渉なだけだ。

要は、敵国同士であるが、両国共に交戦意思はなく、互いに関係を持たないように努めているのだ。




〜青龍の年、秋〜




僕、秋宮慎太郎(あきみや しんたろう)は馬国民だ。ついこの間まで、母親と僻地で商い(あきない)をしていた。

それが今、馬国の首都、(きょう)に来ている。

なぜか?

たまたま商いが上手くいって、首都に店を出すことが決まり、父が馬国の武士で、京に転勤になったからだ。

ちなみに、僕の家族は六人家族だ。父、母、兄、僕、妹、妹だ。

兄は、随分前から京の王城専属の行商人として働いていた。

そのため、僕達は楽に引っ越せて来たわけだ。




京に来て一週間が経った。

それなりに京にも慣れて来て、そろそろ土地勘を付けようと、散歩に出た。


僕の家は、商店が並ぶ大通りの一本裏にある。それなりに大きく、五人で暮らしても不自由ない生活が送れる。これも、兄が用意してくれた。


ぼくの家の裏、つまり大通りには僕達の新しい店が出ている。京に来て従業員を雇ったから、しばらくは手伝わなくていいそうだ。


ちなみに馬国は軍事国家だか、兵役の任はない。それに、兵士団があるのは、地方の方で、この京の兵士団は、王家直属の一つだけである。

しかし、商業の発展がされてなく、殆どの商品が言い値で取引されている。


ふと、京の端っこにある山、確か紅葉岳(もみじだけ)と言う山が目に入った。

名前の通り、綺麗な紅葉(こうよう)が見られそうなくらい山は赤かった。

田舎者の血が滾り、僕はやまに向かった。




紅葉岳に着いた。そこには、視界いっぱいに紅葉と銀杏の木々が凛と佇んでいた。

床は赤色や黄色がまだらな絨毯のようだ。

山自体も手入れが行き届いており、獣道なんかは無く、ちゃんと人が歩ける道だった。

流石京だなぁ、とか言いながら山を登ってみた。もともとそんなに互いに山ではなく、頂上までも、一時間とちょっとくらいで登れた。

頂上は、京が一望できる高台と、小さな茶屋が建っていた。


茶屋で買った団子と茶を堪能しながら、高台で京を眺める。なんて贅沢なんだろう。

そんな事を考えながら、茶をすする。心がポカポカして、幸福感に満たされていると、


「ギュルルルルル」


と爆音が鳴り響いた。

隣には、さっきまでいなかったはずの少女がいた。




少女は、しゃがんでお腹を抱えながら、僕の団子を一心不乱に見つめる。

一滴、また一滴と、彼女のよだれが高台に落ちる。

美しい景色と美味しい団子と茶で満たされていた僕は、黙って彼女に団子の皿を差し出した。

「最後の一本あげる」

少女は、はっと顔を上げると

「かたじけないっ!」

と言って、素早く団子を手に取り、口一杯に頬張った。


「ん〜〜〜、美味い!美味なり!!」


少女は目をキラキラ輝かせて言った。そして、

「施しありがとう。明日、お礼を持ってくる。また明日、ここに来てくれんか?」

と心配そうに言ってきた。

恐らく、見返りを求めてるのでは?と不安なのだろう。

「そんなつもりであげたわけじゃないから、気にしなくていいよ」

その言葉は、嘘じゃない。あんなに欲しがっていたら、誰だってあげてしまいそうだし。

それに、よく見たら、彼女は凄く可愛らしい。

服も気立てが良くて、陽の光を反射する髪は、茶色に輝く。

まさに、この景色を絵にする時、この女の子を加えたならば、それは間違いなく国宝級になるだろう。それぐらい、彼女は美しく、可愛い。


そんな彼女は、「え…。でも…。」とモジモジしている。タダで施しを貰ったことを、悩んでいる様だ。

そんな彼女に、

「本当に大丈夫だから、気にしないで」

とだけ言って、僕は山を走って下りた。

降りてから気づいたことだけど、彼女の名前を聞きそびれた。あんな絶世の美女の名を聞きそびれたことに、凄く後悔の念を抱いた。




「さて、どうするかな?」やまを下りてしまってから、特にすることなく、僕は京の中をブラブラ歩き出した。


歩いているうちに、大通りまで戻ってきてしまった。僕の家の店を通り過ぎ、右手の通りを抜けた。

一瞬だけなった暗闇は、通りを抜けた後に待ち構える晴天を強調させる。

大通りの裏にも、それなりに広い道路が広がっていて、沢山の人が、あちこち行き来している。

その中の一角、中々に大きい石造りの門が待ち構える。門を開け、砂利道の上に敷いてある。瓦を踏んで、玄関の手前で止まる。

焼杉の扉を横に開ける。


「ただいま〜」


その声に反応して、家の奥から、廊下を走って、二人の少女が抱き着いてくる。

「「おかえりなさいっ!」」

そう叫んだ二人は、僕の妹、佐喜(さき)佑喜(ゆき)だ。

僕は今年で十五歳、今年成人する。二人は僕の5つ下で、十歳だ。

まったく、十歳になっても甘えたがりの二人を見ると、可愛くて仕方なくなる。

頭をわしわしと撫でて、

「手、洗ったら遊んでやるからな」

そう言って、僕は手を洗いに井戸に向かった。


それから、風呂に入るまで遊んでやったんだが、僕が風呂に入りに行くと、彼女達も入りに来てビックリした。

「もう十歳になるんだから、一人で入れるようになりなさい。」

僕はそう言い放つと、二人が肩を落としながら風呂の外に出るのを確認して、風呂に入った。

「ふぅ」

と息をはく。なんと、この家の風呂は檜風呂なのだ。こんな家を用意してくれた兄に感謝しながら、湯船に浸かる。

ふと、今日会った茶髪美女の顔を思い浮かぶ。

「可愛かったなぁ。」

もくもくと立ち昇る風呂の湯気の形が、彼女のように見えた。

「明日、行ってみるか。」

そして、もう一度「ふぅ」と息をはいて、檜風呂を堪能する事にした。

本当、兄には感謝だな。




昨日とほぼ同じくらいの時間に、彼女は昨日と同じ高台の上にいた。

「おい、金を出せ〜」

明らかに挑発的な口調で彼女の背中に拳を当てた。

「ヒィッ!?」

彼女は凄く驚いて、恐る恐る振り返った。

相手が僕だと分かった瞬間、僕の横腹に強烈な重圧がかかった。彼女の蹴りだ。

「お、お、驚かさないでよね!馬鹿!」

彼女はフンスッと、そっぽを向いた。

(いや、普通に痛いんですけど。何?あなたの足は馬かなんかなの?)

そんな疑問を見透かしたように、彼女はクスリと微笑むと、

(わらわ)をただのか弱い小娘と思うでないぞ?妾は天下を治める国の女王になるのだからな!」

なんか自信満々にウンウンと首を上下に振る。黙ってると、いつまでも首を首振り人形のように振り続けるから面白い。

「へ〜、そりゃすごいっ!ところで君は何て名前なの?僕は秋宮 慎太郎」

僕が、真正面に彼女の将来を受け止めたと思ったのか、彼女は満足げに、ない胸を張って言った。

(わらわ)は、篠宮(しのみや) 紅葉(もみじ)じゃ。名前の通り紅葉が好きで、昔訪れたここの紅葉を観に来たのじゃ。」

彼女は嬉しそうに言う。確かにこの紅葉岳はかなり綺麗だ。おそらく京が、かなりの出費でこの山を手入れしているのだろう。

そのため、そこの茶屋も少し値段が高いように感じる。


僕は茶屋で少し話そうと勧めたが、彼女は手持ちがないため断ってきた。

懐の財布を開いてみる。

(銀貨三枚に、銅銭十三枚か)

そんなに手持ちが多くはないので、お茶2つと団子は一皿で我慢してもらった。

寧ろ彼女はかなり遠慮をしていたのだが、有無も言わせぬ僕の態度に折れてくれた。


そこで、ふと疑問に思った。この子の身なりはかなりきちんとしてる。

着物は見るからにたかそうな感じで、簪もおそらく純金でできているだろう。

それに一人称が妾だ。そんな子が従者もなく、ここにいるのはおかしい。

そっと、彼女を刺激しないように聞いてみた。

「今日はここまでどうやって来たの?」

彼女はピクリと眉を上げ、そしてしばらく黙り込む。

どうやら相当頭のきれる子のようだ。

「ま、よい。ここ二日ご馳走になった身だ。特別に教えてやろう…。

妾は邪国の姫である。今は、中央山脈の近くに訪れたので、昔来たここが懐かしくて、数日だけ滞在させてもらったのじゃ。」

気立てがいいとは思ったけど、まさか邪国の姫だったとは…。

直ぐさまひれ伏そうとする僕を、彼女は止めた。どうやらその手のことは嫌いらしい。


僕を座らせ直し、彼女は再び語り始めた。

「ここ数日滞在して思ったよ。

馬国に足りないのは、商業的知識だと。

皆相場が分からないから、値段が店によって大きく変わる。国の金も軍備を揃えるだけで手一杯だ。商業ルートも殆ど確保できてないため、輸送輸入に半年以上かかる。

だから私は、邪国の女王になって、この馬国と合併する!」

そう言って、彼女は拳を固める。とても小さい手の中に収まりきれない、とてもとても大きな夢…


でも、彼女は知らない…

「そうは言うけど、邪国だって、大通りから一本外れればカツアゲと追い剥ぎの大行列だよね?」

これはよく聞くことだ。

邪国は商業国家のため、馬国から行商に行く人もいる。(馬国には内密で…)

しかし、邪国の先々で金品を奪われてしまい、丸裸で帰ってくる者も少なくないらしい。


これらの事は、恐らく両国の闇なのだろう。僕もなんとなく、この国のために何とかしたいと思った瞬間だった。




僕が言ったことを聞いた瞬間、彼女は深刻な顔に陥った。これをどうにかしないと、合併なんてできない。

しかし、彼女は再び笑顔に戻った。

「それこそ馬国の出番じゃ!邪国の軍事力をその方面にも手を当てよう!

そうすれば、互いの弱みを打ち消し、互いの強みを高めることができる!」

彼女は満面の笑みで笑った。その笑顔こそが、世界を照らす太陽のように思えた。


彼女の目的に続けば、この国は変わるかもしれない。

しかし、同時に、自分がその件には関係のない、ただの人間だと言うことを自覚させられる。

そんな僕を察してか、彼女は僕にこんな提案をして来た…。

「妾は王位継承権第一位じゃ。あと三年もせん頃には女王になっているであろう。

そこで、お主、慎太郎だったな。三年以内に武闘会で優勝して国王になれ。

そして、妾と同盟を結ぶのじゃ。」

自分の心に火が灯った気がした。その火はとても大きく、力強い。

今まで特に何も考えず、店の手伝いをしていた僕が変われるかもしれない。

「うん。分かった!」

僕は力強く返事をした。彼女は凄く驚いていた。

「いいのか!?今まで誰にも承認されたことなんて無かったぞ?」

それもそうだろう。周りからすれば、無茶振りもいいところ、何せ相手は武闘王とまでも呼ばれる男なのだ…

「いいんだ。元々何をやってもやる気が持てなかったんだ。

でも、僕はあなたに一目惚れした!!

僕の初恋の相手のお願いを無碍ににする事は出来ない!」

そう強く言い放った僕は、彼女の様子を伺った。

彼女は顔を真っ赤にし、アワアワと手を口の前で震わせ

「わ、わ、わ、妾を好き?一目惚れ?妾をよ、よ、嫁にしたいと申したな?

生まれて一度も好きと堂々と言ってきたのは、お主が初めてじゃ…。」

と顔を手で挟み、ブンブンと頭を振っている。

「君を嫁にできるくらい、俺強くなるよっ!」

僕が言い放つと、彼女の頭からボシュっと煙が出た。どうやらこれはかなり効いたようだ。

「わ、わ、分かった!言ったからには、必ず強くなって、妾を嫁にしてみよ!!」


そう言い放つと、僕らは賢者モードに入ったように、黙ってお茶を啜った。




ふと気がつくと、日が西に傾き始めた。

「と、そろそろ帰らねばならん。

妾は今日ここを発つのでな。慎太郎よ、や、約束を忘れるでないぞ?」

そう言って、赤い顔で小指を差し出してきた。

「うん。もちろん!忘れないよ!必ず成し遂げてみせる!!!」

そう言って、僕も小指をだした。

このまま指切りをしてお別れかと思ったら、彼女は僕の小指に紐を巻きつけて、結んだ。

「それは妾の信頼の証じゃ!外すでないぞ!」

そう言って、彼女は走って山を下りてった。

最後に、また来年と言い残して。




彼女のくれた小指の紐は、いつまでもいつまでも温かく、同時に、僕の武闘会優勝の気持ちを高めていった。


「よしっ」


気合いを入れて、空を見上げる。

ここから、僕の挑戦が始まる。


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