新垣さん目線3
『ラブラブちゅ』と『お仕事ちゅ』の間に差し込むはずだった新垣さんの独り言です。
父親に会いたいだなんて、俺は酷なことをしているな……。
いっそ何も言わず しれっと奪っていく方が あいつにとってもイイんじゃないか?とも思った。
どっちが正解なのか答えなんか出ない。
それでも あいつが後から何か言われて つらい思いをするくらいなら早めに済ませておいた方がイイかと腹をくくった。
何かあったら その時は、あいつの父親だとか そんなこと関係なく叩き潰してやるつもりだ。
変な食事会だな。
いや、俺自身も似たような境遇だから気持ちを分からなくもないが……。
神楽が大人しすぎて不気味だ。
親父さんも俺の胡散臭い笑顔に警戒を解いてないしな。
さて、どうしたものか……。
どちらに転んでも最後の一線は残しておいた方がイイ。
二度と会わないのと、二度と会えないのでは意味が違う。
こいつに選ぶ権利は残してやりたい。
やはり答えは出ず、こいつが何も言わないのをイイことに なんとも後味の悪い終わり方をした。
自分の無力さに嫌気がさすな……。
神楽が話さない。
いや、心が壊れないように必死に繋ぎ止めてるような感じかな。
いい年したオッサンなら乗り越え方も逃がし方も それなりに できる。
やはり酷だったな……。
抱きしめるだけでは きっと元には戻らない。
優しい言葉なんて意味がない。
ならいっそ……。
泣き疲れて眠る悲壮な横顔。
そっと抱きしめた。
後悔が胸をえぐる。
しかし必要なことだったと、やはり思う。
こんな俺を憎むようになるかも知れない。
大嫌いだなんて嘘でも聞きたくない。
やはり やめといた方が良かったかもな。
後悔は後から後から溢れてくる。
泣き顔にキスをする。
その傷ごと抱きしめて癒してやる。
だから、あんな男のために もう泣かないでくれ。




