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この恋に殉ずる(完結版)  作者: 熱湯甲子園
おまけちゅ
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新垣さん目線2

『お付き合いちゅ』と『ラブラブちゅ』の間に差し込むはずだった新垣さんの独り言です。





恋人ごっこ……承諾した瞬間に後悔した。

なし崩しに既成事実~なんてことは、あの頭じゃ考えついてもいないだろうが、どんな形にせよ二股とか俺の辞書にない。


……まぁ一夜限りのアバンチュールは何回かあったけどな。


高校からの付き合いだ。そのくらいの余所見は許してほしい。

なんてことを思いながら、さて どうやって諦めてもらおうかなと思案する。

能天気だしストーカー気質ではないだろうが こんな ちから技で迫ってくるんだから もしかしたら?も ありえる。

さらに言えばショックで自殺、なんてのも洒落にならん。

本来なら こんな しち面倒くさいことは やらない。

興味ない、好みじゃないと瞬殺で振るタイプだ。


だから職場恋愛てのは厄介なんだよ。

まぁ恋愛でもないがな……。




古株のパートは皆それぞれに毒が強い。

新参者は なかなか定着しない。

そんな中で若くて客からも可愛がられてる人間を こんな理由で切るのも どうかと思う。


少し付き合ってやるか。


テキトーに それっぽいことして、傷つけない程度に距離を取って、向こうから離れてもらおう。

どうせ卒業するまでの付き合いだ。







ああ、失敗した。


鈍行列車の話なんて アイツにだって言ったことないのに身の上を聞いて情に ほだされちまったのか?


バカだしガキだし うるせ~し、全然 好みじゃない。

なのにドンピシャにツボをつく味付けとか、全身で大好きだって迫ってくる純粋さとか。

居心地が良くて手放せなくなってる自分がいる。


それでも これは恋じゃない。

いい年したオッサンが感傷にひたって若い芽を摘む訳にはいかない。

あいつには、そ~ゆ~のは向かない。

夏休みの宿題を完璧に やりとげたら、それで終わりにしよう。

お互い、これ以上は良くない。








て、思ってたのに大丈夫か俺!!

あいつが本当に旨そうに食うから、なんか無性に嬉しくて楽しくて………。

何気なく比べた手のひらが想像以上に小さくて、動揺した。

不安に揺らぐ瞳に 込み上げてくるものがあって、思わずキスしそうになった。


いや寸前で戻れたがヤバかった。なんで アイツは目を閉じたんだ!!

でもまぁ財布を渡して、ちゃんと終わりにできた。

あとは誘われても行かなければいい。









「お祝いでもするか?明日休みだから、いいとこ連れてってやるぞ?」


な、なに言ってんだ俺!!


ここは、良かったなで終わりだろ!!自分から誘ってどうする!!

いやしかし、アイツが和食のフルコースを作ってくれてるし無駄にしたら可哀想だ。

ああ、あれだ!!毎晩 宿題みてた時間が暇すぎて寝つけずに酒をあおりすぎて寝不足だったから脳ミソが機能してなかったんだな……。





て、おいおい。

なんだその格好!!可愛すぎるだろ!!

裸なのか?いや違う。当たり前だ、ちゃんと着てる。


くそ!!こんな子供だましに引っかかる俺ではない!!


でもなんだろうなぁ、こいつといると忘れてたもんを取り戻してるような気がする。


あ~そうか。


「お前といるとさ…。中坊ん時の恋愛 思い出すわ。まぁあん時は好奇心のが先にたってて、もっとギラギラしてたけどな。なんか、通りすぎて見落とした大事なもんを取り戻してるのかな?って思う」

元々 女に不自由してなかったから大人の階段も苦もなく登ってきたし、こんな純愛なんて したことなかったもんな。

「恋人ごっこ…きっと、お前より俺の方が楽しんでるんだろうな」









て、今時のガキは何 考えてんだ!!

そりゃ車で来てるの忘れてビールを5本も飲んじまった俺も俺だが(いやでも久々の本物だったし)

裸エプロンからのコンドー…ごほごほ!!

これは罠か!?ハニートラップなのか!?








「こういうのは、ちゃんと好きな人としろ!!こんな騙しうちみたいに する事じゃない」


いやぁ俺いいこと言うなぁ。さすが俺。


「新垣さんの言うことが正しいなら…これを使うのは、やっぱり今日かもしれませんね」

「はっ!?何言ってるんだ?」


いやそこ私が悪うございました、ごめんなさいだろ!?


「新垣さんは今だに私が本気で好きだって分かってくれてないみたいですもんね」

「そ、そんな事はない、ぞ?」


なんで こいつがキレてんの?


「これ…使っちゃいましょうか?」

「なっ!?」

「ああ、でも使わなくてもイイかも…」

「お、落ち着け!!びょ、病気になるかも知れないから、ちゃんと避妊はしなさい!!」

「新垣さん病気もちなんですか?」

「んで、俺が病気もちなんだ!!」

「違うなら…イイじゃないですか」

「ま、ま、待て!!お前は酔っぱらってるんだ!!」

「ビール飲んだのは新垣さんだけですよ?」

「あ。そ、そうか…」


そうかじゃねぇ!!あれ?これ俺ヤラれちゃう?


と一抹の不安を感じていると神楽の動きが止まる。

「ぎゃ~!!変態!!」

叫び声をあげながらベットから滑り落ちた。

「そんな気まったくありませんて顔してたのに~」

「直接的な刺激には反応すんだよ!!」


しゃあねぇだろ!!ビールも飲んでるし、俺は健全な男なんだからな!!


「こんなんでビビってて どうすんだよ!!やる気あんのか!!」

「や、やる気はメッチッチャあります」

「これが こうなってなきゃヤれね~だろ!!」

思わず指差す。

「ぎゃ~!!」


そんな汚いもんにでも遭遇したみたいに騒がれたら……。


「て、てめ~。いい加減にしないと」


さすがに傷つく。









酔いは完璧に吹っ飛んだし、体力も げっそり落ちた。

とりあえず服を着替えさせ正座させる。

こいつが着替えてる間、俺も真剣に考えた。

この先どうするものかと……悩んで悩んで、ふと気づいた。

即決できないほど俺の中にいることを。

そして、こいつと過ごすうちに あいつのことを考えることが なくなっていたことを……。


こいつといると居心地がいい。

予期せぬ事態に胃がキリキリしたりもするが、それも楽しいと思ってる自分がいる。

なんだかんだと離せなかったのは そういう意味じゃないのか?

そう いきついて心が決まった。


本気なのかと聞けば、はいとだけ返ってきた。

なら俺の答えも一つだ。






「好きだよ……」

俺を本気にさせたんだから覚悟しとけよ。

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