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この恋に殉ずる(完結版)  作者: 熱湯甲子園
お仕事ちゅ
63/68

鬼軍曹と私

車の免許を取った。

いつも新垣さんに迎えに来てもらうのも申し訳なくて…と言うのが表の理由で、ホントは対等に なりたかったから。

いつまでも高校生の私じゃない。

おんぶに抱っこで彼に守られてばかりじゃ嫌だから……。

新垣さんは日本中の運転手に迷惑をかけるって渋ってたけどね~(泣)


ど~ゆ~意味だ!!


青色の軽自動車を買った。

納車は、なぜか新垣さんちの駐車場だったけど二人で今か今かと待ってる。

「待ってる時間て、ど~してこんなに幸せなんですかね~」

「そうだな。俺も朝から浮き足立ってる」

「そうなんですか?」


なんか嬉しい。


「つうか俺も買い替えるかなぁ」

「えーーーーーーーー!?」

「うるせぇな、なんだよ」

不満げに口を尖らせる私の唇を笑いながら摘まむ。


だって、だって、あの青いスポーツカーには色んな思い出が詰まってる。

そりゃいつかは動かなくなるし、買い替えるかもとは思ってたけど……なんか寂しい。


「今度一緒にディーラー回るか?」

「…うん」

「あれが うちにきて初めての遠出が お前とのランチデートだったなぁ」

「ランチデート?そんなの ありました?」

「んだよ。好き 好き言ってたくせに忘れてんのかよ」


私ら、たいがい夜でしたよね?


「ほら、移動販売カーの味見ツアーだよ」

「…それってデートじゃないです?新垣さんが私をイイように利用してた黒歴史ツアーですよ」

「そうだったか~?」

「……初めて好きな人に誘われて、食べ物シェアして、イイ雰囲気だなぁと思ってた時に、営業してくるとか なんとか言って置いてけぼりにされたんですよ~」


あ、確か真夏なのに あっつい缶コーヒー投げつけられた気がする!!


「あはははは。お前よく覚えてんな」

「あははじゃないですよ!!乙女の純情なんだと思ってるんですか!!」

「悪い悪い。まぁあれだ。まさか こんなオッサンが女子高生に好かれてるとは思わんかったからな」

「てか、よくよく考えると、女子高生と二人でってインコーだかエンコーだかで捕まりますね」

「見つからなくて良かったな」

からからと笑ってらっしゃいます。

「まぁお前も来月には二十歳だし、なんの問題もないわ」

そう、あれから二年の月日がたち、紆余曲折あったけど今も こうやって二人でいる。


ピンポーン


「お?来たかな?ほら早く用意しろ。そのままドライブに行くからな」

「え~!?むりむり!!」

「あほ。運転は慣れだ。先 行ってるぞ」









「おいおい。そんなに肩に力 入れてたら目的地につく頃には四十肩だぞ?」

「だ、黙っててください!!」


初心者に いきなり高速ってホントあんた鬼だな~(泣)


「運転してる お前も怖いかもしれんが、俺も生きた心地しないぞ?」

「な、なら変わってくだいよ~!!」

「それより次おりるからな」

「え?ええ!?」

「出口って書いてあるだろ?ほら早くウインカー出せ」


カチカチカチ


「帰りは運転してやるから頑張れ」


う、うわ~ん(泣)


「あ、そこの駐車場 入れ。バックで停めろよ」

「むりむりむり!!」

「バックだ」


この鬼軍曹!!(泣)


な、なんとか5回の切り返して枠の中に収まった。










車から降りると新緑の霊園があった。

「え、えっと……」

「行くぞ」

いつの間に置いてあったのか後部座席から花束を持って新垣さんが歩き出す。


え?え?


勝手知ったる感じで迷わず歩く後ろ姿。


ここに なんの用があるの?


聞けない疑問符が頭をよぎる。


まさか……まさかね。


ふいに立ち止まった背中に ぶつかる。

「前ちゃんと見ろ」

「すいませ~ん」

ひょいっと脇から顔を出すと、まだ新しい墓石には『新垣』と書いてあった。

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