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この恋に殉ずる(完結版)  作者: 熱湯甲子園
お仕事ちゅ
62/68

十年愛

『よっ』





別れた彼氏への第一声が『よっ』て~(泣)


「どうした?」

『あ~うん。プロジェクトが成功した』

「おお、良かったな。おめでとう」

『…ありがとう。あんたに そう言ってもらえて良かったわ』

「俺が言えた義理じゃねぇけどな」

『そうだね』


き、きわどい!!きわどいです~(泣)


『…それだけでは ないんだけどね』

「んん?」

『この前さ……取り乱して…ごめん』


!?


「いや、俺も言い方がキツかった。悪かったな」

『……なんかさ、アタシ達の10年が あんな終り方なのも どうなんだ!?て思ってね』

「…うん」

『楽しかったよ。大事にしてもらってたなって今さらながらに思ってます』

その言葉に新垣さんがチラリと私を見た。

「…俺も、楽しかったよ」

『ふふ。ありがとう』


……並木さんの声が震えてる、と思うのは気のせいじゃない。


『次に出会う人には、あんまりワガママ言わないことにする!!』

やけに元気のいい並木さんの声。

「あ~どうかな。好きな女のワガママを嫌いな男は いないだろ」

『…人によるでしょ』

指先が震えを隠すように握る。


聞こえてこなきゃこないで不安だろうけど、こんなに鮮明に聞こえなくてもイイのに……。


不安すぎて新垣さんの顔が見れない。

『ねぇ』

「ん?」

『…友達として、また会える?』


!!!!!!


『別れちゃったけどさ、たまには飲みに行こうよ』


人のものを取った報いだろうか……。


略奪愛とかで世間を騒がせた芸能人が数年後に寝とられるニュースを見たことがあった。


因果応報……。


泣きそうになりながら白く握りしめた手を見つめる。




ふいに その手に新垣さんの手が重なる。

「友達には ならない。俺は そ~ゆ~のは できないタイプだ。…だから、お前との電話も これが最後だ」

『そっかぁ。残念』

あっけらかんと呟く声が聞こえた。

『でも道端で ばったり会ったときは会釈くらいしてよ?』

「そのくらいは、な」

『…んじゃ切るね。長いこと付き合ってくれて ありがとう。幸せになってね』

「お前も…ちえも幸せになれよ」

『うん。さよなら、征二』

「ああ。さよなら」








「なぁんで お前が泣いてんのかねぇ」

何枚目かのティッシュを差し出しながら新垣さんが笑う。

「あいつが可哀想とか思ってんのか?」


そんなこと思ってない!!


ふるふると首をふる。

「なら俺と別れたいと思ってるのか?」

「そんなこと思ってないよ!!」

「んじゃなんで泣いてんの?」

「わか、わかんないけど、涙、とまんないの……」


この涙は、なんなんだろう。


答えを探しても見つからない。

でも止まることなく流れてゆく。


「まぁイイけどな」

そっと私を抱き締めて背中をさする。







理由の分からない涙は、しばらく止まることは なかった。

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