十年愛
『よっ』
別れた彼氏への第一声が『よっ』て~(泣)
「どうした?」
『あ~うん。プロジェクトが成功した』
「おお、良かったな。おめでとう」
『…ありがとう。あんたに そう言ってもらえて良かったわ』
「俺が言えた義理じゃねぇけどな」
『そうだね』
き、きわどい!!きわどいです~(泣)
『…それだけでは ないんだけどね』
「んん?」
『この前さ……取り乱して…ごめん』
!?
「いや、俺も言い方がキツかった。悪かったな」
『……なんかさ、アタシ達の10年が あんな終り方なのも どうなんだ!?て思ってね』
「…うん」
『楽しかったよ。大事にしてもらってたなって今さらながらに思ってます』
その言葉に新垣さんがチラリと私を見た。
「…俺も、楽しかったよ」
『ふふ。ありがとう』
……並木さんの声が震えてる、と思うのは気のせいじゃない。
『次に出会う人には、あんまりワガママ言わないことにする!!』
やけに元気のいい並木さんの声。
「あ~どうかな。好きな女のワガママを嫌いな男は いないだろ」
『…人によるでしょ』
指先が震えを隠すように握る。
聞こえてこなきゃこないで不安だろうけど、こんなに鮮明に聞こえなくてもイイのに……。
不安すぎて新垣さんの顔が見れない。
『ねぇ』
「ん?」
『…友達として、また会える?』
!!!!!!
『別れちゃったけどさ、たまには飲みに行こうよ』
人のものを取った報いだろうか……。
略奪愛とかで世間を騒がせた芸能人が数年後に寝とられるニュースを見たことがあった。
因果応報……。
泣きそうになりながら白く握りしめた手を見つめる。
ふいに その手に新垣さんの手が重なる。
「友達には ならない。俺は そ~ゆ~のは できないタイプだ。…だから、お前との電話も これが最後だ」
『そっかぁ。残念』
あっけらかんと呟く声が聞こえた。
『でも道端で ばったり会ったときは会釈くらいしてよ?』
「そのくらいは、な」
『…んじゃ切るね。長いこと付き合ってくれて ありがとう。幸せになってね』
「お前も…ちえも幸せになれよ」
『うん。さよなら、征二』
「ああ。さよなら」
「なぁんで お前が泣いてんのかねぇ」
何枚目かのティッシュを差し出しながら新垣さんが笑う。
「あいつが可哀想とか思ってんのか?」
そんなこと思ってない!!
ふるふると首をふる。
「なら俺と別れたいと思ってるのか?」
「そんなこと思ってないよ!!」
「んじゃなんで泣いてんの?」
「わか、わかんないけど、涙、とまんないの……」
この涙は、なんなんだろう。
答えを探しても見つからない。
でも止まることなく流れてゆく。
「まぁイイけどな」
そっと私を抱き締めて背中をさする。
理由の分からない涙は、しばらく止まることは なかった。




