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この恋に殉ずる(完結版)  作者: 熱湯甲子園
お仕事ちゅ
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幹事

「飛山さん、ちょっとイイかな?」

お昼の休憩に入ったころ神谷さんから呼び止められた。

「今週末、佳世の送別会やるんだけど幹事お願いしていいかな?」


え、え~!? (泣)


「わ、私、居酒屋とか分かりませんよ~!?」

「あ、大丈夫。智恵子とコンビだから向こうが調べる。幹事は順番で回ってくるもんだから早めに終わらせると思って引き受けてくれると助かるわ」

なんせ佳世、きっついから敵も多いのよ~て苦笑いした。


な、なるほど……。


「出欠 聞いて会費 集めて智恵子に渡すだけでイイから。あとは あいつが やるから大丈夫」

「そ、それなら やります」


ホントは並木さんと一緒にってのが気になったけど、変に避ける方が おかしいもんね。


「でも佳世もイイ時期に産休 入ってくれるわよね」

「え?」

「飛山さんの歓迎会と寮の花見から飲み会なかったから寂しかったのよね~」


て、いやいや!!あなた小グループの飲み会かなりやってますよね!?知ってますよ~(泣)


「飛山さんも早く二十歳になるといいわね。楽しいわよ?大人は」


て、給料いくらあっても足りませ~ん(泣)


「あ、それから恒例行事とはいえ、いちおう佳世にはバレないように進めてね」

「あ、は~い」







「神楽ちゃん、こんばんは」

寮に戻ると並木さんが声をかけてきた。

「こ、こんばんは……」

「幹事になってくれたんだって?ありがとうね」

「あ、いえ」

「あの子、モテモテの工場長の息子と結婚したから敵が多いのよね~」

感慨深げに言う。


そ、それも嫌われる原因なのね~(泣)


「確かにイケメンでしたもんね」

「そそ。でも売られたケンカは片っ端から受けるし、かなりの粘着だから最後は どっちがイジメてる側か分からなくなってたけどね」


ひ、ひええええ(泣)


「さぁて、横道にそれちゃったけど、良かったらアタシの部屋でゴハン食べながら計画 たてない?」

「あ、はい」

言われるがままに連れていかれる。




相変わらず可愛らしいカントリー調でまとめられた部屋が出迎えてくれた。

「テキトーに座ってて」

ガチャガチャとキッチンで用意する並木さん。


……新垣さんは料理なんてしないって言ってたけど。

やっぱり人違いかな。


と思ったらチーン、チーン、チーンと軽妙な音を立ててレンジがフル稼働……。


ま、まじか~(泣)


「最近の冷凍食品て美味しいのよ~。一人暮らしだと食材 余らせたりして逆に もったいないじゃない?」

「そ、そうですね~」

パスタとドリアが並ぶ。

「どっちがいい?好きなほう取っていいよ」

具だくさんスープも2つ。

「これスゴく美味しいから飲んでみてね!!」

「あ、ありがとうございます……美味しい!!」

「でしょ!?」

満面の笑みの並木さん。


こりゃ自分で作ってるのがアホらしくなる味だわ~(泣)


「こっそり お皿に移しかえれば旦那さまにもバレないよね」

「あ、あははは」


返事に困ります~(泣)



「あ、神楽ちゃんは自炊してるの?」

「あ、はい。貧乏なので……」

「あ~まだ新入社員だもんね」

昨今の冷凍食品がいかに安くて美味しいかを力説されながら夕飯時は過ぎていった。









「さぁて、本題に入りますか?と、その前に冷凍食品つながりでデザートも出してみましたぁ」

可愛らしく小首をかしげて並木さんが笑う。


ホント可愛らしい人だな。


「ミルクレープとフォンダンショコラどっちがいい?」

「じゃあミルクレープで」


チーン


「あ、紅茶できたね」


え~!?紅茶もチン!?


熱々の紅茶とワインで乾杯する。

「アタシらは飲めればツマミに そんなに文句はないのよ。でも飲めない人もいるから、そこは神楽ちゃんの意見も聞きたいから どんどん言ってね」

とタブレットを取り出す。

「いちおうピックアップした お店をみてもらって意見くださいな」

「あ、はい」

簡単な操作方法を聞き(憧れの指でスルスル~も経験しつつ)リストを見ていく。

「ここのプチ懐石はツマミにもなるし見た目も可愛いからウケるかな?と思ってるんだけど どうかな?」

「美味しそうですね。でも料理の追加が高いですね。この量で満足してくれたらイイですけど……」

「そうかぁ。確かに飲まない人は食べ終わったら手持ちぶさたね」

「あ、ここは どうですか?飲み放題もついてますし、食べ物が安くて美味しそうです」

「あ~。やっぱり ここになるか~」

「並木さんも ここだと思ってたんですか?」

「一番 妥当かな?とは思ってたけどね」


そうなんだ。


「ただ延長できても三時間なのよね」

「え!?さ、三時間で充分ですよね?」

「ん~飲み足りない人が移動するにしても周りに店がないのが欠点なのよね~」


て、そんなの約2名しかいないと思いをますよ~!?


「神楽ちゃん、顔に出てる出てる」

並木さんは面白そうに私の顔をプニプニしてきた。

「こ~ゆ~素直なとこが神楽ちゃんの彼氏は可愛いと思ってるんだろうなぁ」


どき


「寮に入っちゃったから なかなか会えないんじゃない?」

「そ、そうですね」

「少しでもいいから、なるべく会うようにしなさいよ~」

「あ、はい」

「こっそりなら寮にも連れてきてイイからね。でも、なるべく人目につかないように!!」

「あ、はい」

「そして、彼氏の友達でイイ人がいたらアタシに紹介するように!!」

ニカッと笑う。

「ホ、ホントに別れたんですか?」

「ホントに別れたんですよ~」


なんか言い回しが新垣さんに似てる……。


「も、もう好きじゃないんですか?」

「ん~寂しいっちゃ寂しいかな?でも ここ数年 忙しくて あんまり会ってなかったからね。こうなっちゃったのは必然なのかな?とも思うわ」

ワイングラスの縁を指でクルクルとなぞる。

「神楽ちゃんは、さ。結婚したいと思ったら何が何でも結婚しちゃいなよ?お金が~とか親が~とか思わず飛び込んじゃいなよ?」


それは、飛び込めなかった自分を後悔してるのかな……。


「なんでもそうだけど、やっぱりタイミングて大事なんだなぁって思うわ。まぁプライベートはダメになっちゃったけど仕事のチャンスは きっちり掴んでるから良かったけどね!!」

「それって前に皆さんで話してたプロジェクトの?」

「そそ。やっと日の目を見るわ!!」

「お、おめでとうございます」

「ありがとう!!」

ニコニコとワインを飲む並木さん。


プロジェクトが成功したら一度 会いに行こうとは思ってるよ。

そう言ってた。




私は ひどく苦い紅茶を一口すすった。

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