お付き合いします
新垣さんが好きだ。
憧れから遠くで見つめるだけの毎日も 近づけて思いのほか鬼畜なとこも 実は優しくて誠実なとこも……たぶん いつまでも変わらず大好きなままだと思う。
確かに終わりがあるからこそ猪突猛進していたというのも否定はしない。
彼女から奪えるとも思っていなかったし、そんな未来があることも想像してなかった。
だからこそ思いが通じあった後のことは未知の世界すぎて分からないけど、新垣さんと一緒にいたい。
だから答えは もう決まってる。
私は職場まで歩いて行って、仕事をし、新垣さんが終わるのを事務所で待ってた。
「あら?神楽ちゃん帰らないの?」
「あ、はい」
「遅くなる前に帰らないと危ないわよ?」
手持ち無沙汰で座っていた私に不審げに声をかけてくオバチャンズ。
なんて言い訳したらイイのかな
「俺が送っていくので大丈夫ですよ」
少し困っているとオバチャンズの背後から新垣さんが答えた。
「あらそうなの?」
「なら安心……?」
オバチャンズが対処に困るように顔を見合わせる。
しばしの沈黙の後、わらわらと帰り始めるオバチャンズから こそっと耳打ちされた。
「何したか知らないけど涙の一つでも見せて早々に謝っとくのよ?」
わ、わ~(泣)やはりラブな予想はしてくれませんでしたね~(泣)
いやまぁイイんですけどね~(泣)
地味に落ち込んでる私を察してか笑いをこらえて新垣さんが頭をなでた。
無言でドライブして ついたのは初デート?で来た綺麗な夜景を見つめる。
「ここに来たときは まさか 本気で付き合うとは思ってなかったな」
感慨深げに新垣さんが呟く。
「私もですよ~」
「まぁあのままスルーしたらストーカーにでもなりそうな勢いだったからなぁ」
「そんなこと しませんよ!!」
なんてこと言うんだ!!
「この年まで生きてきたけど、あそこまで必死な口説かれ方をしたのは初めてだったわ」
「も、もう忘れてください!!」
「ははは。一生言ってやるよ」
後ろから抱きしめながら暖を取ってる新垣さんが なんでもないように笑う。
一生言ってやるよ……なんて甘美な響きだろう。
ホントに一生 言われ続けたいと思う私も どうかとは思うけど、幸せだなぁ。
「さぁて、とりあえず職場の皆には言うか?どうする?」
先ほどのオバチャンズの微妙な雰囲気を見ての発言かな。
「ん~。たぶん付き合ってるって言ったら死ぬほど心配されそうなので少し様子見ます」
それこそ弱味を握られて奴隷のように扱われてるのかと思われそうだ。
「同感だ」
それは新垣さんも思ったのが苦笑いしていた。
「それに職場恋愛は周りが気を使うから、きちんとした形になるまでは言わない方がイイかもな」
「秘密の恋みたいで楽しそうですね!!」
見上げながら笑うと、つられて新垣さんも笑った。
「分かってんのかねぇ」
「分かってますよ~」
「ならイイけど」
私の頭の上に顎を乗せて くつくつと笑ってる。
きちんとした形、それは そ~ゆ~意味でしょ?
口には出さず噛みしめる。
幸せな未来を……




