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この恋に殉ずる(完結版)  作者: 熱湯甲子園
お付き合いちゅ
35/68

夢物語

思わず目を見開いて新垣さんを見る。

「お?やっと こっち見たか」

そう言ってニヤリと笑った。

「ひどい…」


ひどい…ひどい!!


ポロポロと涙が出た。


この人は言うにことかいて、私に好きだと言った。

本気で好きなんだと言っている私に…。

遊びのような じゃれ合いの振り向かせたいという くだらない理由で…。


「…も、やめる」

「んあ?」

「新垣さんのこと好きなのやめる!!」

「なんでやねん!!」

心底 意味が分からないというように頭をかく。

「新垣さんのバカ!!サイテー!!大っ嫌い!!」

わ~!!と泣き崩れる私に意味は分からなくとも何かを察したらしく新垣さんが背中をさする。

「え、えっと…ゴメン?」


なんで疑問系なんだ!!


「泣くなって。…その、なんで泣いてるのか分からん」


分かんないのか!!この無神経!!


新垣さんから言ってほしくて、でも絶対に言ってもらえないはずだった言葉。

それを いとも簡単に言いやがって!!

しかも心が入ってないんだよ!?


私はブチ切れて、腹ん中の言葉を罵倒しながら吐き出した。

「バカ新垣!!地獄に落ちろ~!!」

涙と鼻水でグショグショになりながら言う。

それでも背中をさする手は暖かく優しい…。

「お前の言う通り、俺はサイテーだな。きっと地獄にも確実に落ちるな…」

独り言のように、でもハッキリと話す。

「まだ、アイツとは別れてない」


ビクッ。


思わず肩が震えた。

「なのに…順番が違うな」

そう言って笑った。

「ちゃんとするから…」

そっと頬に手が触れて、ゆっくり顔をあげられる。

「ちゃんとするから大嫌いなんて言うなよ…」

新垣さんは、そう言うと少し困ったように笑った。


大好き…


大好き、大好き、と何度も言いながら泣いた。

そんな私を抱き締めながら、ずっと穏やかに笑っていた。








「ん…」

目が覚めると私は新垣さんの腕の中で眠っていた。

床にごろんと眠っている新垣さんの上で…。


わ、わ~(泣)

夢じゃないんだ…。


嬉しいはずなのに気持ちがついていかない。

手に入らないと思ってたから、感情が追い付かない。

「おはよう」

いつの間に起きたのか新垣さんが大きなあくびをした。

「お、おはよ、ございます」

「体中バキバキだわ」

「え?あ、床で寝たから…」

「ふかふかって言ってもカーペットじゃクッション機能はないんだな~」

呑気に言う。

「そうですか?私はどこも痛くないですよ?新垣さんが年よ…」

「お前は俺の上でグースカ寝てたからな」

ほれ、ヨダレ。と、服の胸元を引っ張る。


ぎゃ~(泣)


「す、すいません」

「別にいいけどよ、俺 休みだから。でも、お前なんか用事あったろ?」

「あっ!!」

バッと時計を見る。

よ、良かった。まだ昼前だ。

「俺、このまま帰るから気持ち切り替えて用意しろ」

そのまま立ち上がる。

「あ!!ごはん…」

「いいから。自分のことやれよ」

そう言って、ハンガーにかけてある上着を着ると、じゃあと部屋を出ていった。




な、なんか、あっさりしてるな…。

やっぱり夢かな…。

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