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この恋に殉ずる(完結版)  作者: 熱湯甲子園
お付き合いちゅ
32/68

これを使うなら……

恋人ごっこ、きっとお前より俺の方が楽しんでるんだろうな…

新垣さんの呟きを反復する。


そうか…無理矢理 付き合わせてると思ってたけど楽しんでくれてたんだ。


「まぁいいや。それよりさ、筑前煮おかわりないの?」

「ありますよ!!」

勢いよく立ち上がる。


美味しかったのかな~、やった~!!


「今日の味付け、ビールに合いそうだな」


ビール!!

ぼそりと呟きしたね?聞き逃しませんでしたよ?


私は、冷蔵庫からよく冷えたビールを差し出す。

「どうぞ」

するとビックリしたのか新垣さんが固まった。


ん?


「お前、これ買ってきたの?」

「いえ、夏樹…友達が新垣さん来るって言ったら持ってきてくれて」

「夏樹?ああ、辰吉さんの彼女か…」

悪そうな…て、声は聞き流しますね。


夏樹は茶髪で派手な顔してるけど真面目なんだよ~。


「お父さんの晩酌用のを くすねて来てくれたんですよ」

「…これ第3のビールじゃないぞ?親父さん泣くな…」


ん?ビールに2や3があるのか?


不思議に思っていると、恭しくプルタブを外しグラスに注いだ。

「プハ~!!やっぱ本物のビールは旨いっ!!」


ん?ビールに偽物や本物があるのか?


いまいち よく分からないけど、新垣さんは上機嫌に缶を開けていく。

そして、残り一本というとこで、

「ああ!!しまった!!」

と叫んだ。


…ビ、ビックリした。


「ど、どうしたんですか?」

がっくし肩を落とす新垣さんに恐る恐る声をかける。

「飲酒運転…」

「ああ!!」

すでに5本飲んでしまっている。

「あれは?あれあれ!!車ごと家に送ってくれるってやつ!!」

「代行運転か?無理、給料前で金がない」


私もないです~(泣)


「あ、歩いて帰ります?」

「車で30分のとこに?」


そ、それは歩きだと何時間かかるんッスか~(泣)


「じゃ、じゃあ…泊まります?」

「…………」


で、ですよね~(泣)

無言の視線が怖いですよ~!!


「お前に怒ってもしゃあないな。俺が迂闊だった」


そそ!!

車で来たの忘れてたんですからね!!


「…とりあえず今度お前の友達とゆっくり話がしたいがな」


ぎゃ~!!

夏樹 逃げて~(泣)


「そ、それより、もう おかわりは?い、いらないなら片つけちゃいますね!?」

カチャカチャと食器を重ねて流しに持っていく。

「あ、ごちそうさん。旨かったよ」

そう言って新垣さんも食器を持って立ち上がる。

「あ、そのままにしといてください。私が片つけますから」

「そういう訳にもいかん。一宿一飯の恩返しに洗わせろ」


一宿一飯…?


「んだよ、その顔。まさか、こんな夜更けに外に放り出す気か?」

「い、いえいえ!!」


わ、わ~(泣)

夏樹の思惑通りにコトが進んでるぞ~(泣)


ドキドキしながら、食器を洗いに近寄ってくる新垣さんを見つめた。

半ば諦めモードの新垣さんの視線がピタリと何かに釘付けになり、固まった。

ん?


コ、コ、コ、コンドーム!!




「神楽!!あの女を今すぐ呼べっ!!」


ぎゃ~!!


「ち、違うんです!!ち、ち、ちょっと置いてあるだけで、そ、そうなんです!!置物なんです!!」

「んな訳あるか~!!」


ぎゃ~!!

ですよね~(泣)


「こっちが中坊の恋愛だって思ってんのに バカ女たちは裏で何やってんだ!!」

「な、夏樹は悪くないです!!わ、私が…」

「ゴムくれって言ったのか?」

「言うかっ!!」


あ…。


しばしの沈黙…。

「こういうのは、ちゃんと好きな人としろ!!こんな騙しうちみたいに する事じゃない」

大きなため息。


落ち着けようと話してくれたんだろうな。

でも…。




「新垣さんの言うことが正しいなら…これを使うのは、やっぱり今日かもしれませんね」

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