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この恋に殉ずる(完結版)  作者: 熱湯甲子園
お付き合いちゅ
22/68

新垣さんの思惑

〇朝一で『おはよう』のメールを送りあう。

〇お昼は一緒に お弁当を食べる。

〇すれ違う時に手を握る。

〇帰りは可能な限り一緒に帰る。

〇寝る時には『おやすみなさい』のメールを送りあう。

〇お休みの日には……


「却下!!」

読み上げる私の手からレポート用紙を奪うとグシャグシャと丸めてポイっと後部座席に投げ捨てた。

「うわっ!!ひどっ!!」

「ヒドイのはどっちだ!!」


ええ!?

だって新垣さんが考えてこいって言ったんじゃん!!

だから私ほぼ徹夜で想像できる お付き合いなるものを考えてきたのに~!!


「おはようも おやすみも職場で言えばいい。弁当は一緒に食ってるからヨシとしても、なんだ?この手を握るって!?アホだろ!!」

「ひ、ひど…!!」

「俺に彼女がいるのは周知の事実だ。こんなん見られたらヤバイことくらい分かるだろ?」


あ……


「じゃ、じゃあ明日は私が思う愛人についてレポートに書いてきます」

「アホか!!」

ゴツンと頭に拳が降ってきた!!


ほ、本気で痛い~(泣)


「ガキが愛人とか言うな!!」

「だって~(泣)」

もう一発きそうで頭を抱えて目をつむる。

「今まで通りでいい」

「え?」

「お前は今まで通りにしてろ。俺が考える」

「なら、最初から…」

「ああん?」

「な、なんでもありません!!」

昨日の宿題を見に新垣さんが朝早くから来た。

なんの連絡もなかったからビックリしたけど、朝一で会えるのは嬉しかった。

「んじゃ、降りろ」

「ふへ?」

「俺がお前乗せて仕事に来たら皆ビックリするだろ」


た、確かにそうですけど…。


「そのために早く来てやったんだからな。今からなら間に合うだろ?」

車内の時計を見る。

着替えて歯磨きしても間に合う時間だ。

「じゃあ、そういう事で…」

「ちょっと待ってください!!」

「んあ?」

「電話番号を教えてください!!」

恋人同士(仮)とはいえ、連絡先も知らないようでは困る。

「ああ…」

あまり気乗りしない様子の新垣さんが胸ポケットから名刺を一枚取り出した。

「ありがとう、ございます…」

ちょっと手が震えるわぁぁ。

「メールは返事が来るまで待つこと。電話がしたい時は了解を取ること」

「は、はい」

「あと、夜は電源切ってるから返事がなくてもメールを何通も送ってくるなよ?」

「はい」

押し出されるように車を降りると、新垣さんは軽く手を振って車を発進させた。




あれから一週間。

特に何事もなく平和にすぎていく日常。

おはようございますとメールを送れば、おはようと職場で顔を見て返ってくる。

恒例のお弁当タイムも料理の味付けについて歓談するくらいで いつもと一緒。

当然、すれ違いざまに手なんか握らない。

おやすみなさいのメールにいたっては返事などくるはずもなく…。


『体よくあしらわれたな』


や、やはりか!!


『抗議したほうがいいかな?』

『やめとけ。相手は一筋縄ではいかん。へたしたら、それを理由に契約解除もありうるよ?』


契約、解除…。


『それは嫌だな(泣)』

『なら我慢するしかない』

携帯を抱えて、ため息をつく。

こんな騙し討ちするような人じゃないと思うけど、げんに付き合う前と何も変わらないと不安になるな。


て、付き合う(仮)だけどね。

新垣さんは、このまま私が諦めるのを待ってるのかな…。


『それにアタシは人のものに ちょっかい かけるのは好きじゃないから、神楽には悪いけど このまま終わってほしいとも思うよ』

『奪おうとか思ってないんだけとね……』

『それを周りに分かれってのは難しいよ?アタシが彼女の立場なら殺しに行くわ』

『それはアタシもだよ…』

『諦めきれない気持ちも分かるから強くは言わないけど きりのイイとこで やめときなよ?』

『うん……』









昼休憩になり、お弁当を持って廊下を歩く。

目の前を新垣さんが歩いてきた。

「今日は昼一緒むりだわ」


え…?


「金やるから好きなの買ってきて食え」

そう言ってサイフを取り出す。


…なんだこれ。

仕事が仕事だから一緒に食べれないこともある。

現に何度か別々の時もあった。

金やるからって…。


自嘲の笑みが浮かぶ。

「いりません」

「お前、昼食わないつもりか?」


私の手の中にあるお弁当は、あなたのものですか?

人のものだから こんなんダメだって分かってるのに諦めきれなくて頭おかしくなりそうなくらい必死なのに……。


さも当然と言う態度に腹が立った。

「新垣さんがお弁当買って食べればイイでしょ?」

「…何 怒ってんだよ」

「別に」

「感じ悪ぃな」

そう言って私からお弁当を取り上げた。

「レシート残しとけよ。後で払う」

通り過ぎようとする腕を掴む。

「…デートしてください」

「はあ?もう休み合わないだろ?」


…確かにもう重なる休みはないけど。


「仕事終わったらでイイです。車で…」

「お前、自転車じゃん」

『体よくあしらわれたな』

夏樹のメールが頭をよぎった。

「明日!!明日、歩いてくるから どこか連れてってください!!」




そう言って返事も待たずに走り出した。

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