フロンティア第一章8
今回は少し改行を多くして文字を詰め込み過ぎないようにしてみました。
読みづらくなっていましたらコメントにてご指摘お願いいたします。
宇宙歴182年
病室での生活を終えてフェイトは自室へと戻ってきたがフェイトは未だに答えを出せないでいた。
正確に言うならば答えは出ているのだろうがそれを望むことが出来ていなかった。
これまでの時間決して無駄にしてきたわけではないが悩むと言うことが初めてのフェイトにとっては大きな問題となっていた。
フェイトが自室に戻ってからもルーシェが部屋に訪れることはなかった、もちろんフリージアが訪れてくることもなかったためここ最近はユフィーリアとしか会話がないと言っていいだろう。
「フェイト今日はどうするの?」
「今日は少し街に出てみようかと思っている。これまでは宇宙連邦本部で特に問題はなかったので行く機会はなかったが少しいろいろと考えたいから普段と違うところで考えてみたい」
「そう、大丈夫だと思うけど気を付けて」
フェイトの病室を訪れてからユフィーリアのフェイトに対する態度はずいぶんと軟化したように感じられる。
最もそれで二人の関係性が大きく変わったかと聞かれれば大きな変わりはないだろうが少なくともフェイトの精神的な負担はずいぶんと軽くなっているだろう。
たったそれだけと思われるかもしれないが、フェイト達人工生命体は本来感情からくる揺らぎとも言えるような迷いが存在しない、それが無意識の内に自信を追い込むことになっているフェイトには何よりもありがたいことだろう。
最もそれを自覚出来ない状態であるのが今のフェイトなのだが。
「帰りは何時ごろになるの?」
「わからない、すぐに帰るかもしれないし遅くなるかもしれない」
「そう、必要なら連絡して夕飯くらいは作って残しておくわ」
「ありがとう」
かつてでは有り得ないような会話ののちフェイトは部屋を後にした。
宇宙空間に創られた人工島は実に30近くの数にまで増えていた、その中でも一際大きな人工島に宇宙連邦本部は創られている。
人工島の大きさは小さいものでも地球にある日本と言う国の総面積と同じだけの広さがある。
そして最も大きい宇宙連邦本部が創られている人工島はオーストラリア大陸に匹敵するだけの面積がある。
主な移動手段は小型のシャトルで地球で言うバスや電車のような感覚で親しまれている、最も基本的に空中を移動するので地面には歩道しか存在しない。
人工島の主要な施設付近には専用のシャトルが停泊しており主に一般市民が乗るシャトルよりも内装も外装も極めて煌びやかな作りになっている。もちろん機能的にも一般的なシャトルよりも優れており防弾、防音機能などもしっかりと完備されている。
本来ならフェイトは専用シャトルにて移動することが認められているがフェイトは一般のシャトルに乗り込み特にこれと言った目的地も決めずにこれまで見ることのなかった外の街を眺めていた。
フェイトにとってこれまで見ることのなかった人々の生活は非常に新鮮に映った、シャトルから見える景色を見ていると自分一人がどれほど小さい存在であるのかを改めて実感させられる、ここにはたくさんの人々が暮らしており多くの人々が自分たちの新たな母なる星に移住することを夢見ているだろう。
そしてそれを実現させるために日夜多くの人が宇宙連邦本部にて研究に勤しんでいるだろう、自分がこうしている間にフリージアやルーシェ、ユフィーリア達はソリテールとの戦闘に向けてエスポワールの調整や人工知能へのデータのインプット等多くのことに取り組んでいるだろう。
シャトルでの移動は非常に快適だった、揺れもなく移動時の騒音もないため静かな時間を過ごすことが出来たと言えるだろう、最も学生らしきグループが通学のために使っているようで彼らがいる場合は少し騒がしさがあったがそれもフェイトにとっては新鮮に感じられており外に出てよかったとこの時点ではそう思っていた。
フェイトが最初に降りた場所はこの街の図書館だった、それほど大きな建物ではないが基本的にデータにて書物を管理するようになってからは図書館の規模は小さくなる一方だった。
特にこれと言った理由はなかったのだがむしろそれゆえに最初に図書館を訪れていた、ここには基本的に宇宙歴が始まった時からの書籍がすべて保管されており誰でも閲覧が可能となっている。
基本的な事柄はルーシェから聞かされているがすべてを聞いたわけではないため詳しく自身で調べてみようと思っていた。
図書館の中は落ち着いた雰囲気で見た目以上に広い空間が確保されていた、ここではデータの貸し出しなどもしているため係員と思われる女性が二人ほどカウンターで仕事をこなしている。
平日の早朝と言うこともあってかその女性二人以外の姿は見えない。
「すまないが宇宙歴の資料が見たいのだがどうすればいいのだろうか?」
とりあえずこういった場所は初めてのためフェイトは説明を聞くことにした。
カウンターにいる二人の女性の内一人は後ろの扉から中に入ってしまったので残されていたどこか緊張しているように見える女性が対応した。
「あ、はい。こちらのご利用は初めてですか?」
女性は出来るだけ自然に笑みを浮かべようとしているがどうやら相当緊張しているらしくどこか引き攣ったような笑みになってしまっている。
「はい、これまでこういった場所で調べ物をしたことがないので出来れば簡単に操作方法などを教えていただけると助かるのですが」
フェイトも初めて街に出て自身の知らない人と自分一人で会話をすると言うことに多少の緊張はあったのだが相手の方が緊張していることもあり少しだけ余裕が出てきている。
「はいわかりました、それでは簡単にご説明させていただきますね。当図書館ではすべてのデータが閲覧可能となっております、ですがデータの貸し出しにつきましては一部貸し出し不能となっているデータもありますのでそちらの方はご了承ください。閲覧方法は非常に簡単でお席にご用意させていただている端末から見たいデータの項目を選択していただければいくつかの区分によって分けられたデータの一覧が出てきます。また検索欄からいくつかのキーワードを入力していただければそのキーワードに当てはまるすべてのデータが一覧として表示されます。もちろん多くのキーワードを入力すればそれだけ絞り込んだ状態でデータが表示されますので閲覧したい項目がはっきりとされている場合は検索されることをお勧めいたします。データの貸し出し期間は基本的に一週間となっておりますが事前に申請いただくことで最長一か月間まで延長することが可能です、また貸し出し期限の過ぎたデータを閲覧されますと罰金の対象となりますの返却期限にはお気を付けください。基本的な説明は以上ですがもっと詳しく知りたいことなどありましたら何なりとお聞きください」
説明をするうちに緊張もほぐれたようで最初は少し自身なさげに話していた彼女だったが終盤は自信に満ち溢れた声で説明していた。
「ありがとうございます、操作していてわからないことがあればまた聞きに来ます」
そう言って離れるフェイトに向けられる笑顔は最初と違って自然に溢れた笑みだろう、それを見たフェイトもつられて笑みを浮かべていた。
実際に使ってみると説明された通り難しい操作は必要なく比較的簡単に目的のデータを探し出すことが出来た。
それ以外にもこれまでの人類史から導き出された結果から理想とされる人類の統治方法や新しい惑星での国の取り決めなどルーシェからは教えてもらっていないことも非常に多く見ることが出来た。
そうして多くのデータに目を通しているといつの間にか時間を忘れてしまったようでふと時計を見てみればすでに12時を過ぎていた。
「そろそろ食事にしたいな」
周りを見てみればいつの間にか人も増えていたようでフェイトの他に凡そ10人程度の人々が静かに作業していた。
図書館を出てみれば朝と比べてずいぶんと人通りも多くなっていた、もちろんお昼時と言うことでこれから昼食を取る人も多くいるだろう。
どこに行けば何があるのかある程度は知っているがこの時間に食事を取るとなるとどこも混み合っているだろう、出来るだけ人の少ないところで食事を済ませたいと思うがそうするためには少し時間をずらさなければならないだろう。
フェイトは仕方なく図書館へと戻ろうとしたところで不意に声を掛けられる。
「あの!」
声をかけて来たのは図書館でいろいろと説明してくれた女性だった、これからお昼ご飯なのだろうかずいぶんと可愛らしいお弁当箱を持っている。
「何か?」
確かに今朝調べ物をするために声をかけて話はしたがそれはあくまで必要なことであり世間話をしていたわけではないのでフェイトはどうしてここで自分に声をかけて来たのか全く分かっていなかった。
「えっと...フェイトさんですよね?あのソリテール殲滅戦で単機で戦いを挑まれてた...」
フェイトはそこまで言われてからようやく理解した、確かにこれまで自分は街に出ることはなかったがこの街だけではなく地球でも他の人工島でもフェイトがソリテールと戦闘を繰り広げていたところは幾度となく放送されていたのだからこうして誰かに気付かれたとしても特に不思議はないのだ。
「ああ、そうだが」
声をかけて来た理由におおよその検討がついたことでフェイトの態度はずいぶんと柔らかいものへと変化していた。
「やっぱり!最初に見たときは他人の空似だと思っていたんですけどお話ししたときに本物じゃないかなって思って。すいません突然こんな事迷惑ですよね」
興奮した様子で話していたかと思えば最後の方は一気に元気がなくなり自分のしたことにずいぶんと混乱しているようだ、確かに彼女は余り自分から積極的に行動を起こすタイプには見えないので自分でも困惑しているのだろう。
「いや、別に迷惑ではない。普段あまり街には出ないのでこうして声を掛けられることに慣れていないだけだ」
フェイトは出来るだけ自然に振る舞おうとしていたが自身もこういった状況に慣れていないため自然と緊張してしまっていた。
「ありがとうございます、実は私もあの作戦に参加していたんです。でも私何も出来なくて、ただただ恐怖で動けなくなっていたところでフェイトさんが単機でソリテールに向かって行ってその光景を見て私少しだけ怖くなくなって人工知能からの推奨を受けて退避出来たんです、もしフェイトさんが居なかったら私は今こうしてここには居なかったと思いますから、だからこうして直接お話しすることが出来てよかったです」
そう言うと目の前の女性は優しく微笑んでいた、その光景を見たフェイトは初めて自分のあの時の行動が誰かを確かに救っていたのだと実感することが出来た。
「そうだったのか、私は私の出来ることをしただけだがこうして直接話してもらえるとあの時の自分の行動が間違っていなかったのだとそう思える。ありがとう」
自然とフェイトにも笑みが溢れていた。
その後どうやらお昼休憩だと言う彼女とともに昼食を取ることにしたフェイトは図書館に用意されていた食堂で食事を済ませることになった。
食事を終えた後またしばらく調べ物をしたのちフェイトは図書館を後にした、時刻は16時を少し過ぎたあたりでほんのりと夕闇に包まれつつある。
人工島も出来るだけ地球の環境に寄せてあるため日の出や日の入りの時間はほぼ一緒である。
この時間帯になってくるとまた朝や昼とは違った人々で賑わってくる、学校の帰りに友人たちと買い食いをしている者たちや買い物に出てきた人々もフェイトは初めて見る光景だ、こうして直接人々の生活を見てやはり自分は違うものだとそう感じることも多い。
特にあてどなくふらふらと歩いていたフェイトはいつの間にか少し街から離れた場所にたどり着いた、元々は公園になる予定だったのだろうか砂場や遊具らしきものはちらほら見えるがどういうわけか途中から投げ出されたかのように中途半端なままそこにあった。
「まるで私のようだな」
そんな場所にいる自分も人でも人工生命体でもないような中途半端な存在だと改めてそう思ってしまう。
それでもいずれこの場所も予定通り公園になるかまた別の案で何らかの形をしっかりと持つことになるだろう。
「私はどうなるのだろうな、どうなることで私は必要とされるのだろうか」
これまで幾度となく問いかけては答えが出ることなくずっと埋もれ続けてきた問答は結局今回も答えを得ることが出来なかった。
「答えがほしいかい?」
不意に背後から声がする、この辺りは建物などもなくずいぶんと見晴らしのいい場所である、絶対に不可能とは言わないがこれほど接近されるまで気づかないと言うのは難しいだろう。
だが事実この人物はこれほどの距離まで接近し尚且つ自分から声をかけることでこちらに認識させたのだからずいぶんと優れた人物であることは間違いないだろう。
結局フェイトは後ろを振り向くことなく答える。
「貴方が答えをくれると?」
「君が答えを欲するのであれば私が君に与えよう」
声だけを聴けば20代半ばと言ったところだろうか、振り向いてしまえばより多くの情報が手に入るのだが何故かフェイトは後ろを振り向こうとはしなかった。
「私が納得できるだけの答えを貴方は知っているのか?」
「勘違いしてはいけないな、君は私から与えてもらうのだ君が納得しようがしまいが関係ないさ。どのみち君に残されている道は少ないだろう?私から答えをもらいそれに従うかそれともこのままずっと答えの出ない問答を繰り返し続けるか、君はどちらを選ぶ?」
「自分の納得できない答えをわざわざ他人から与えてもらう必要はない」
「なるほど、では仕方がない君は少しばかり邪魔なんだ少しの間舞台から降りてもらうことにしよう」
そう言った相手はフェイトが反応するよりも早く彼の意識を断ち切っていた。
最近は音楽を聴きながらやっているのですが時折曲の歌詞と入力する文字が混ざって謎の言葉生まれます、きちんと修正していると思いますが見つけたらコメントにてご指摘お願いいたします。