第8話〜ダシ巻き卵と厚焼き卵と僕〜
寝坊しました。
昨日、修検と仮免試験だったので…
と言い訳にもならない言い訳をしている分けですが、皆さんは玉子焼きが好きですか?
僕は朝ご飯を食べている。
ちなみに玉葛は母さん達が行った後直ぐに戻って来て、手料理を披露してくれた。
冷蔵庫の中のあり合わせで作った、油揚げの味噌汁に豚肉と野菜の炒めものだったが味加減が抜群で美味しかった。
今朝のメニューは豆腐の味噌汁に焼きジャケ、玉子焼きとご飯のごく一般的なものだ。
これらも玉葛が作ったのだが……
とってもピリピリしたプレッシャーを感じている。
「「どっちが美味しい?」」
僕の前には、二種類の玉子焼き。
玉葛の作ったかつおダシの風味がたまらないダシ巻き卵と紅葉が唯一美味しく作れる甘い甘い厚焼き卵だ。
この二種類の玉子焼きを前に、僕は二人からピリピリとしたプレッシャーを感じている。
「「どっちが美味しい!?」」
この二人の対決は朝早くから行われていた。
朝、目が覚めて一階に降りるとキッチンから美味しそうな匂いが漂ってきていた。
二人の争う声と共に……
キッチンに近寄り、ケンカの内容を確認してみた。
するとこうだ。
「今朝は和でまとめるのだから、甘い厚焼き卵など合わん!!」
「そんなこと言ったって、厚焼き卵はハルの好物なの」
「そうは、言ったものの、やはり合わん!」
「そんな事は無いもん。ハルなら美味しいって食べてくれる」
「まぁそうだろうよ。……しかし、さっきからずっと厚焼き卵に執着しているな、味噌汁の火の番を頼んだ時の様子からして、もしや紅葉……お前、料理は厚焼き卵しか出来ないのだな」
「ギクッ………そそそそんな事ないよ……」
「目が泳いているぞ」
まぁ紅葉は図星を指されたわけで……
内容としては今日の朝ご飯のメニューにどっちを使うか、と言う事らしいが、僕個人としては両方好きなので、両方あってくれた方がいい訳なんですが。
僕がその事を伝えようかとした時、二人が急にこちらを向き、
「「どっちがいい?」」
と聞いてきた。
僕に気付いていらしたのですね。
いい機会のなので二人に伝えようとした時、またしても二人が僕より先に口を開いた。
「「どっちの玉子焼きが美味しいか食べて確かめて」」
それ、さっきまでの主旨と違いませんか!?
そして今に至ると言う訳なのだ。
まだ一切れづつしか食べていないので、もう一切れづつ食べてみる。
まずは玉葛のダシ巻き卵から。
口に入れ噛んだ瞬間に広がるかつおダシの風味はたまらない、この後や前に食べるだろう、おかずやご飯と良く合いそうだ。
次に紅葉の厚焼き卵。
口に入れた途端に広がる甘さ。
だが、それは甘過ぎず、丁度良い。
この前がしょっぱい焼きジャケや味噌汁だったとしても上手く打ち消しくれる上に、その後にご飯を食べても問題ないだろう。
どちらも上手い。
若干食べ合わせ的にダシ巻き卵の方が良いが、厚焼き卵も負けてはいない……
コレは難しい……
「「どっちが……」」
二人も僕の真剣な表情に、気付き、言葉を止めた。
しばし沈黙。
「どっちも美味しい」
優柔不断だと罵ればいい。
どっちも美味しいのは事実だからこれでいい。
必死で自分の答えを正当化するコトを考えていると二人の様子がおかしい事に気付いた。
「あぁぁぁうぅぅぅ」
「くぅぅにゃぁぁぁ」
椅子から崩れ落ち悶えていた。
「こ、腰が砕けたぁ……」
「立てないよぉ……」
何故!?
どうした!?
「晴信……お前の声は……なんて……」
「わ、私だって、な、何年かぶりだよ……あぁ…」
は?
僕の声?
「「とりあえず、晴信、声出すの禁止!! 体が保たない」」
なんと……
禁止されると結構困るんだけど……
ってそうでもないし。
悲しいことに、普段からあまり声出す機会がない……
だから、あえて増やしたり減らしたりする必要ないね。
あははは!!
あはは……あは……はは……はぁ
僕は……僕は、玉子焼きが大好きだぁぁぁ!!!!!!
ダシ巻き卵のたまらない旨味。
厚焼き卵の広がる甘さ。
好きですねぇ!!!
無論、塩で味付けした玉子焼きも好きですよ。
他にも海苔を巻いたのや、ほうれん草を入れたやつとかも好きですよ。
すみません。
冗談抜きに好物なものでして……
でわ、また、月曜日に