第3話〜謎の少女と僕〜
状況を確認しようと思う。
まず、僕の名前は安森晴信。
晴れの“晴”に信じるの“信”と書くのに“はるのぶ”と不思議な読み方をするのは、ただ親が出生届の時だかに間違えたからだそうだ。
で今の現状だが……
1.少女が僕に体当たりをかましてくれた上に、馬乗りになって僕の上に乗っている。
2.少女はニコニコ笑っており、どいてくれそうな気配はない……
4.少女は、何故か僕の名前を知っており。また、玉葛と名乗っている。
5.紅葉が居る辺りから何とも言えない……
「ちょっ……君!! なんなの!?」
怒鳴りだす紅葉。
そうとう怒ってます……
だが、僕の上の少女、玉葛ちゃんはの表情はどこ吹く風の余裕な様子。
むしろ、分かってる分かってるといった表情だ。
「紅葉……そうだったな。消えているんだったな。うんうん。でわ――」名前も知ってるし。
何者だよ。
てか、そろそろどいて欲しい。
「――思い出させようじゃないか」
咳払いをして立ち上がる玉葛ちゃん。
やっとどいてくれた。
腹の上だから苦しいかったんだよ。
玉葛ちゃんは、パット見、紅葉と体格的には大差ない……
年齢は年下に見えるが、案外同い年かも知れない。
髪……と言うよりは髪型がかなり変わっている。
艶やかな白髪の中に金髪のメッシュが入っており、首の後ろ辺りで一つに結っている。
結われたその垂れる髪は、まるで狐の尻尾の様な形にまとまっていて、なんかとてもふかふかしていそうなのである。
癖毛なのか頭には獣の耳の様に髪が立ち上がっている。
「目醒めよ! 我が名は玉葛。目醒めよ。古山紅葉!!」
立ち上がった玉葛ちゃんは、紅葉と向き合うと呪文の様な言葉を発した。
「あっ……」
紅葉は衝撃を受けたのか、目を丸くして呆けている。
かと思えば、あっと閃いた様な表情に変わり、徐々に驚いている様な表情に変わる。
そして、
「あぁ〜!!!!」
叫んだ。
「玉葛!!! 久しぶり。ホント五年ぶり。ちゃんと玉葛が来るまで約束は守ったわよ」
へっ?
紅葉知り合い!?
へっ?
「おぉ。思い出したか。そうさな、わ、私も約束を守ったぞ」
二人手を取り喜ぶ。
玉葛ちゃんは背をこちらに向けて居るので顔が見えないが反応を見れば明らかだろう。紅葉はめっちゃ笑顔。
なんか僕……置いてけぼり?
美人双子姉妹の方々も暖かい目で見てくるし……
神主さんにいたっては泣いてるよ!
ここ感動的場面なの?
「ハル、まだ思い出さないの?」
「無理もない。玉藻姉様の一時的記憶消去だ。そう簡単に解けんよ」
心配そうに覗き込んでくる紅葉。
自慢気に語る玉葛ちゃん。でも顔は未だ、紅葉に隠れて上手く見えない。
「玉葛、一時的消去じゃなくて封印よ。消したら戻らないわよ」
玉藻さんが玉葛ちゃんの言葉を訂正する。
って、だから、僕が置いてけぼりなんだよ。
「晴信、そう怖い顔をするな今、思い出させてやるから」
玉葛ちゃんが紅葉を押しのけ前に出てくる。
初めてちゃんと見れた玉葛ちゃんの顔は可愛いと思ってしまった。
狐目が印象的だか、全体的にまとまっており、美少女と言っても差し支えがない。
髪も綺麗に切りそろえられているし……ってあの癖毛……耳?本物の耳?
今ピクッて動いた。
しかし、玉葛ちゃんは慌てている僕をしり目にあの呪文の様な言葉を言い始めた。
「目醒めよ!! 我が名は玉葛。目醒めよ!! 安森晴信!!」
………………
えぇっと……何ともありませんが?
………………
しばらくキョトンとしていると玉葛ちゃんが心配そうに見つめてきた。
「思い出さないか?」
と言われてもピンと来ないし……
「あれ? おっかしいなぁ……そんなはずは……」
記憶を封印したという玉藻さんもどこか慌てた様子である。
紅葉もかなり心配そうである。
神主さんも……ってこの人も一枚噛んでいるな……まぁ別に良いけど。
ただ一人、この空気の中ただ一人だけ葛葉さんだけが明るい笑顔で近づいてきた。
そして、
「邪魔ね」
パシッと左肩をはたいた。
するとスッと肩が軽くなり、あの禍々しい黒い影が姿を消した。
「玉葛さん。もう一度」「はい!」
優しく厳しい、そんな感じのする葛葉さんの言葉に玉葛が返事を返し、またあの呪文を言い始めた。
「目醒めよ!! 我が名は玉葛。目醒めよ!! 安森晴信!!」
真っ白だ。
そして、一気に溢れ出してくる情景。
……コレは……五年前のモノだ。
神隠しにあった五年前の空白の二週間だ。
その時の記憶……
思い出した。
玉葛ちゃん、いや、玉葛のコトを思い出した。あと、葛葉さんに玉藻さんのコトも。
僕は全部思い出したぁ!!!
どうも爆弾蛙です。
次回、晴信の回想です。
でもかなり短縮されたものです。
ちなみに木曜日に更新出来ます。