第34話〜走って走って私を抱えて走ってマイダーリン(お姫様だっこ希望)と僕〜
一身上の都合により第34話が消失……続きを待ってた皆様方、誠に申し訳ございません!!
「怒涛の勢いでルール説明だぁ!!」
と司会の天枝さんが手をあげると、巨大スクリーンが降りてきて映像が映し出された。
スクリーンには『走って走って私を抱えて走ってマイダーリン(お姫様だっこ希望)』と書かれている。
「ルール説明はこのスクリーンで行います。協力は映研部並びにパソ部とアニ部、漫研部です」
と天枝さんの言葉に連動するように画面がかわり『協力、映像究極追究研究部。パソコン連盟活動部。アニメ至上主義同盟部。至高文化漫画研究連合部』の文字が書かれていた。
名前はアレだが、基本やってる事はそんなに変わんないと思う。
……たぶん……。
「ルールはいたって簡単。男が女性をお姫様だっこして、屋上のチェックポイントを通過して此処に戻ってくる速さを競うといったものだ。さっきはちょっとばかり女性が苦労するものだったからね。男性陣よ漢を魅せろよ!!」
スクリーンには簡単だが、手の込んだアニメーションで天枝さんの説明を映像化して説明していた。
来場者もそのアニメーションを見て驚いているようだ。
舞台袖にはその来場者の反応を見て感無量といった感じで涙する人達がいる。
たぶん、協力した部の人達だろう。
「おおっと忘れてた。この種目、カップル達が普通にこの会場を出て行ってしまうワケなんですが……ご安心あれ!! 我ら放送局部――「放送部です。部長」――の精鋭達による命掛けの生中継があります。準備はいいか〜!?」
「「「「「「はっ!! 我ら放送部中継部隊、命と放送魂と誇りを掛け中継いたします」」」」」」
かなり上等のカメラを背負った男達5人と巨大な無線機のようなアンテナの付いた機材を背負った女の人が舞台袖から現れ敬礼をする。
相当訓練されているようだ。
……何となくだけど……。
「ではでは、各カップルは準備してください。あと皆さんも道を空けちゃってくださいね」
各カップル達が恥ずかしがりながらお姫様だっこをしていく中、玉葛不敵に笑い始めた。
「ふふふ、紅葉。残念だがお前は此処でお留守番だ」
「はぁ? なんで?」
どうやら玉葛が抱かれる役をやると言い張るようだ。
ワケが分からないと言わんばかりに紅葉も反論しようとするが、
「当然だろ? 今日のワラワと晴信は手錠で繋がっている」
まだ、付いたままなんです……。
「それにだ……」
ここで玉葛がもの凄く勝ち誇った顔をする。
「ワラワの方が紅葉より500g軽い」
「なっ!!!」
玉葛の後ろにバーンっと言う効果音の付きそうな勢いにガーンと言う効果音が背後に付きそうな反応で返す紅葉……。
そのままゆっくりと肩を落とし落ち込む。
「それにいざという時は、力を使って疲労感や重量感を感じさせなくする事も出来るからな。ワラワ程の適任者はおらんだろ。さっ晴信。お姫様だっことやらを」
なし崩し的だが、玉葛をお姫様だっこをすると、
「なっ! なななんて、は恥ずかしい格好!!」
もの凄く照れる玉葛。
それを見た紅葉が、
「恥ずかしいなら変わるわよ」
と僕の腕に抱きつきながら玉葛に言う。
「いいいいいや、ワラワが抱かれる!」
恥ずかしいさからなのか少し動揺している様だ。
僕らはすでにスタート地点に列んでいるのだが、紅葉が注意されないということは、僕はこの状態で走らなくてはいけないのだろうか……。
「えぇ〜。安森古山九尾カップルはホントムカつくので、その状態で走って下さい」
ちょっマジっすか!?
「文句は受け付けません。よーいドン」
不意打ちと言わんばかりのスタートの合図。
完全に出遅れた!!
順位は五位だ!
うう……地味に走りずらい……。
「晴信、大丈夫か? 力を使うか?」
「ハル、大丈夫?」
心配そうに僕を覗いてくる玉葛と紅葉。
ここはやはり、天枝さんの言うとおり、男を魅せる所なんだろう。
頑張ろう。
と決意を固めたとこで順位が変わった。
ギャル男汚ギャルカップルをぬかせたのだ。
すれ違い様に、
「こんなとこでへばってんじゃねぇよ。ほらぬかされたじゃん!! どうしてくれんのよ」
「うるせぇブス! てめぇがおもてぇんだよ!! ちったぁ痩せろ! 今すぐ痩せろ」
とまた、醜い喧嘩をしていたのだ。
その様子をカメラマンが何とも嫌そうな顔で撮っていたのが印象的だった。
よし!
頑張ろう!
前を走るカップルは比較的早く見つかった。
と言うよりずっと視界に入っていたしそんなに差は付いてなかったワケなんですが……。
とりあえず、前を走るカップルは加西設楽さんカップル。
なんかいい感じに盛り上がっている様子だ。
「龍……すみません。私が重いばかりに負担を掛けてしまって……。頑張ってなるべく軽くなりますわ!」
「だ……大丈夫だ。佳織よ。良いから服を脱ぐのを止めたまえ。な、何より力のない私が悪いのだ。愛する者一人抱えて居られない私が悪いのだ。佳織は気にしなくて良い。ただただ、私に笑いかけて居てくれ。それが私の力になる。私のキャラでは無いが……佳織の為、男を魅せるぞ!」
「龍……あぁ!!」
「佳織!!」
あれ……ホントに加西?
設楽さん?
まぁ何にせよ僕らはその横を走って行く。
カメラマンは暑苦しそうな表情をしていたが……まぁスルーって事で。
次のカップルは普通過ぎるカップルこと、鈴木さん石本さんカップル。
ちょうど階段を上るとこだった。
鈴木さんは結構息が上がっていた。
実は僕も軽く息が上がり始めている。
ホント……ツラいです。
校舎は四階建てだから、五階分の階段を上らなくてはならない……気が滅入る。
一段一段ゆっくり上ろう。
安全の為にも……。
ここで僕らと普通過ぎるカップル鈴木さん石本さんカップルとの地味なデッドヒートが始まった。
僕らの一進一退のゆっくりしたデッドヒートでだいたい三階にたどり着きそうになった時だった。
それはドッタン、ドッタンと言う音と共に現れた。
「お先」
「玉葛、妾達の勝ちじゃな!」
大豊セフィリアさんカップルだ。
セフィリアさんの勝利宣言を置き土産と言わんばかりに階段の段差をまとめてすっ飛ばして降りていった。
15段ぐらいある階段を一回のジャンプで降りるってどんだけ化け物だよ。
「私も……できるかもよ? 階段まとめてすっ飛ばし」
紅葉、そんな事言わないで……。
惨めになるから。
少し遅れてだが、カメラマンが駆け降りて来た。
カメラマンの表情はかなり使命感に燃えた表情だった。
感動ものだ……。
「晴信!!」
おっといけない。
感動していたら鈴木さん石本さんカップルにぬかされてしまった。
結構、屋上のチェックポイントまで地味なデッドヒートは続き、やっとのことでたどり着いた。
「お疲れ様です。水分補給は彼女さんが飲ませてあげてくださいね。いっそのこと口移しでブッチューっと行っちゃってください」
「出来るか!!」
玉葛が叫ぶ。
玉葛……恥ずかしいんだね。
顔が真っ赤だよ……でもね……玉葛。
君は一度コーヒーを口移しで僕に飲ませようとした前歴があるんだよ……。
その後、結局スポーツドリンクの入ったストロー付きのボトルで飲ませる事になり、どっちが僕に飲ませるかでもめ始めた。
「ワラワの方が近いからワラワが飲ませる!」
「あんた抱かれてるんだから譲りなさいよ」
終始こんな感じで平行線……。
「あの……」
おずおずと言った感じにカメラマンが声を掛けてきた。
「「なに!」」
「ヒィ!」
2人ともカメラマンを脅さないの!
で、いったいなんですか?
場を和ませるように笑おうとしたが疲れからちょっと無理。
カメラマンもちょっと少しびびりながら、
「あの……2人で飲ませたらいいじゃないですかすみませんすみませんすみません」
猛烈な勢いで頭を下げるカメラマン。
だが、カメラはちゃんと僕らを映している。しかもブレて無い様子だ。
そして2人はと言うと、
「「…………」」
ぽかぁーんとしていた。
「「はっ!? あぁ〜!! はいどうぞ!」」
仲良くボトルを向けてくる。
は、恥ずかしい!
飲むしかないだろ!!
そんなこんなで普通過ぎるカップルの鈴木さん石本さんカップルに置いてけぼりにされる形になってしまったようだが、比較的すぐに追いつけた。
なんつうか……良くも悪くも普通なんですね。
鈴木さん、かなりお疲れの様子です。
かく言う僕もですが……。
またもや起きた地味なデッドヒートのすえ、なんとか二位通過を果たせた僕ら。
無性に自分を褒めてやりたいが……会場からの視線が何だか痛い……特に男性からの……。
ちなみにビリはギャル男汚ギャルカップル。
あの後も喧嘩を続けていたらしく、スタッフにより強制回収。
と言うより失格退場になった。
本当にすみません!!
早い話が操作ミスです。
本当にすみません。
玉葛も紅葉も何か言ってあげて。
玉葛&紅葉「…………」
すみません。まだ照れてるみたいです。
次回はなるたけ早く更新します。