第29話〜文化祭、苛烈な一日目の朝と僕〜
遅れてすみません
「開会セレモニーも終わった。君たちも分かっていると思うが、後、10分程で、生徒会長から開会の合図があるだろう。まず、確認を兼ねて開店前にミーティングを行う。今日の目的は客寄せだ。一芸スタッフは圧勝されない程度に負け。キッチンスタッフはこれぞとばかりに料理の腕をふり。ホールスタッフは出し惜しみ無く愛想を振りまき、ついでにこのサービス券をバラまくのだ!! スタッフ総出でリピーターを増やすように努力するように!! いいか? 我らは、利口な狩人なのだよ。罠を仕掛け、何食わぬ顔で獲物を追い詰め、仕留める狩人なのだ。今日は耐える日なのだ。罠を仕掛け、獲物を探すそんな日なのだよ。チャンスは来る。必ず来る。例え来なくとも私が必ず作ってみせる!! だから今日は耐えてくれ、心血を賭けてくれ! 皆、私に付いて来てくれるか!?」
「「「「「うをぉぉぉ!!! のっぼっる! のっぼっる! のっぼっる! のっぼっる!」」」」」
「龍……」
「佳織、共に頑張ろうではないか」
「はい」
「……」
「バカ、龍。みんなが見てる」
龍の演説に湧き上がる歓声。
その中で手と手を取り合う龍と設楽さん……映画とかで有りそうなシーンである。特に独裁者が出て来るやつに……。
てか、設楽さんキャラ崩れ過ぎじゃありません?
あと、紅葉さん。さっきから『ハルと……ハルと……』ってブツブツ言っていますが、一体僕と何なんですか!?
『ピンポンパンポーン』
放送が鳴りだす。
ついに時間だ。
さっきまで湧き上がっていた龍コールが消え、静まり返る教室。
『えぇっと、先ほどの開会セレモニーの際にも挨拶させてもらえました、生徒会長の楠野春日です。ただいまより、各クラスの開店して下さい。ピンポンパンポーン』
放送が終わる。
「くくく。あぁっはっはっはっは!! さっ生徒会長殿から合図があった! 皆の者よ! 準備はいいか? 一芸茶屋開店だ!!」
「「「「「はい! 店長!!」」」」」
龍のかけ声により、一斉に配置に付くクラスメートたち。
正直に言ってこの一芸茶屋のシフトはおかしい。
午前と正午と午後で区切られているのはいい……だが、僕のように役職に兵器と付く面々にはそれが適用されていない……。
1日中……いや、3日間ずっと一芸茶屋の為に働かされるのだ。
それを、今、つい今さっき教えられたのだ。
無論、そんなバカな事を言っているのは加西なわけであって、僕の隣で放心状態になっているのが『文化祭楽しみだね。私達のシフトどうなってるのかな? ねっハル……い、一緒にまわろ?』と満天の笑顔で今さっきまでハシャいでいた紅葉なわけで……。
ちなみに兵器と役職に名前がつくのは、一芸スタッフほぼ全員と、【対女性客用接客兵器】の僕、【対男性客用接客兵器】の設楽さん、【客呼び込み用接客兵器】の源太、【対退室願い客用接客兵器】の大豊などと言った一部のホールスタッフだ。
キッチンスタッフが羨ましい
「……ゆるさない……ゆるさない……ゆるさない……」
………えぇっと、人間、本当に怒ると静かにゆっくりと、それでいて激しく怒るそうです。
だから……やめてあげよ? 紅葉。
「ふごぉっ!! ……くるし……はるの…ぶ君……たす……けては……く……れまいか……?」
紅葉に首を絞められ、早くも真っ青になり、今にも抜けてはいけないものが抜けそうな加西。
それぐらいにしてあげてよ紅葉。
設楽さんも珍しく慌ててるからさ。
僕は、紅葉の肩をぽんぽんと優しくたたく。
それで我に返った紅葉は加西から手を離し。
「はっハル〜。だって、だってね、あのバカが悪いんだよ? 悪くないよね」
よっぽど頭にきたのだろう。まだ、少し混乱しているみたいだ。
涙目で僕にすがりながら、小さい子のように言い訳をする。
分かってるよ、分かってる。
全面的に加西が悪いから。
そう思いながら、紅葉の頭を撫でていると、紅葉は完全に我に返ったようで顔を赤くして照れているようだった。
「けっけほっ……紅葉君の気持ちはよく分かった……私とてこんな事で死にたく無いので……けほっ……少々もったいないが、君にも休憩時間を割り振ろう……けほっ」
死にかけてもなお偉そうな上に、演技掛かって怪しい。
紅葉も信じられ無いのか、ジト目で睨みながら。
「ホント? ……もちろんハルもだよね?」
「うう……命には代えられまい。。晴信君にも認めようではないか」
命って……どんだけビビってるんだよ。
「嘘だったら、次は本当にもぐから」
もぐって何する気!?
「分かった。約束しよう」
加西、約束は脂汗流しながらするモノではないと思うよ?
「……まぁ、タダでは休ませはさせんがな……」
おぉい、今、ボソッと怖い事言わなかったか加西!?
「何か言いたい事でも有るのかな? 晴信君。まぁ無いのなら静かに聞いてもらいたいのだが。あぁ〜……。皆よ!! 多少予定を変更しざるえなくなってしまった。だが、安心しろ! 現実とは元来、予定通りに行かないものだ!! 予定とズレてしまったのなら、その度に、予定を変更すればいいのだ! ゆえに、この予定の変更は、ある意味予定通りなのだよ! 君らに少々負担が大きくなるかも知れないが、予定を少々早める事にした。始めから全力疾走をするぞ!! なに、不安に思うことはない。
君らには、それを成し遂げる事のできる力があるのだ。
何度となく言っているだろ? あれは嘘でも虚言でもないのだよ。私は事実しか語らないのだぞ。さぁやるぞ。一年E組の午前スタッフの諸君! 今こそやる時なのだ!! 見返してやるのだ!! そして、逆に見下してやるのだ!! 今、頑張らなくてはその願いは叶わんぞ!!!!! 作戦コードG・Y・M・N・G・Sを発動する!! 皆、準備にかかれ!! そして、尊い犠牲に哀悼の意を……」
「「「「「はい! かしこまりました! 店長!!」」」」」
何だろ……クラスのみんなが涙流しながら気合いに燃えてるよ……
あれ?
今って感動するとこなの!?
クラスメートを感動させた張本人はおもむろに、いつの間にか存在する無線機らしきモノを手に取り。
「あぁあぁ。マイクテスト。マイクテスト。異常なし。文化祭を楽しんでいる生徒諸君。私は一年E組で行っている一芸茶屋の店長。加西龍だ。たった今より、祝! 開店全品90%offを行いたいと思う。サービスとして、【古山紅葉の頭撫でれる券】と【日出川源太に囁かれる券】をお配りしたいと思います。券はなくなり次第ごめんの限定品ですので、こぞっていらしてください」
は?
加西の声が校内中に響く……
てか、【紅葉の頭撫でれる券】ってなに?
「加西!! 私聞いてないわよ!!」
「押さえたまえ」
クラスの男子(体格が無駄にいいやつ)5人がかりでやっとの事で紅葉を押さえ付ける。
「紅葉君、コレは条件だよ。君たちに休憩時間を割り振るためのね。ちなみに時間としては午後の時間丸ごとだ。悪くはないだろ?」
「午後全部!? ホント!?」
なんだろ……嫌な予感がする。
「本当だとも。ただ、後一つ条件があるがいいかね?」
「な、何?」
「校内を移動するときはこの店を適当に宣伝してもらいたいのだよ。簡単だろ?」 とてつもなく嫌な予感がする……。
「それぐらいなら……」
「なら、この件の事も承諾してくれるね? 晴信君と校内を移動するために」
何だろ……。
「いいわ。やってあげようじゃない!!」
「そう言ってくれると私は思っていたよ。さっ、早速お客様がいらした。お出迎えをしろ!」
無性に、加西の笑顔を見ていると悪寒やらなんやらで嫌な予感がする。
考え過ぎならいいけど……
ちなみに、第一号お客様が、言っちゃあ悪いとは思うけど、脂ぎったデブで小声で『もみちゃん……もみちゃん……』とつぶやいていた、ということと、そのお客様に撫でられただけで紅葉が気絶しかけたということは、ここでは伏せておこうと思う。
セフィリア(以下セ)「まだ、妾らの出番がないの」
玉葛(以下玉)「頭の中ハッピーさんにしてやるか?」
あんに脅さないでください。
玉「ほ〜……。自分は鳥だって思ってスカイダイビングすると、自分は魚だって思ってスキューバダイビングするのどっちがいい?」
あぁもう大丈夫だから!
笑顔で死に直結すること言わないでよ。
ちゃんとイチャイチャするから君たちは。
次回予告お願いしますよ〜。
玉「嘘だったら、自分の体は鋼鉄の体とか思い込んだ上でいばらの草藪に入って貰うから」
地味に怖!!
痛いよ? それ、存外に痛いよ!?
セ「とりあえず、予告じゃな………………楽しみにしろじゃ」
なっ!!!
何やってんの!!
真面目にして!!
手抜きみたいじゃん
セ「妾が出ないんじゃ興味無いのじゃ。勝手にしろ」
玉「右に同じ」
この子ら悪魔や
本当に次回をお楽しみに
しくしく