第19話〜ペットボトルのセフィリアさんと玉葛と僕〜
「ふざけるな! こんなことが認められるか! ここから出すのじゃ」
「はいはい、素直に負けを認めい。まぁ、どうしても嫌と言うならそこから出てこい。そしたら、ワラワが負けを認めてやろう」
「なに!? それは本当じゃな? よし、やってやろう。えい! どうじゃ! これでもか!」
世にも珍しいしゃべるペットボトルと会話をする白髪金メッシュ少女。
そんな光景が僕の前にあった。
無論、白髪金メッシュ少女とは玉葛のことだし、しゃべるペットボトルはセフィリアさんが入ったペットボトルの事だ。
ペットボトルの中をよく見ると、中の水が三等身にデフォルメされたセフィリアさんになっており、中から必死に水の腕でペットボトルを殴っている。
しばらくして……。
「なぜしゃ! なぜ壊れない! なぜなのじゃ!!」
騒ぎ始めるペットボトル……もといセフィリアさん。
ペットボトルの中で地団太を踏むセフィリアさんは結構可愛く見える。
ちなみに、今、ペットボトルを持っているのは大豊。先ほど、玉葛に説得され、セフィリアさんには反省が必要という結論にたっし、無表情でペットボトルを見ている。
「セフィリア……いい加減あきらめろ」
「嫌じゃ! 絶対に嫌じゃ!!」
セフィリアさん、なかなかの頑固一徹さんです……。
「もう、この際だから言ってしまうが、ワラワの力は、厳密にいうと“幻を見せる”のではなく“認識させる、誤認させる”だ。狐火を例えて言うなら、そこに“熱い火の玉がある”と無理やり認識させるのだ。誤認とは恐ろしいぞ。強く、本当に強くそう誤認してしまうと火傷でも擦過傷まで出来てしまうんだからな。まぁワラワの力ではまだ、色々と制約があるのだかな」
……う〜ん、難しい。
とりあえず、強力ってコトは分かる。
「そしてだ。今、セフィリア、お前には、ワラワの力が最も強力に発動する条件を揃えた上で術をかけてある。その術とは、“このペットボトルを内側から壊すことに絶対な恐怖を感じる”というものだ。だからお前は無意識のうちにペットボトルを壊すコトに恐怖を感じ、躊躇い、力を抜き、壊すコトができないのだ。だから諦めろ」
玉葛の……すげー……。
セフィリアさんもそれを聞いて、絶望したのか騒ぐのをやめた。
「妾は……勝てないのか? 玉葛には勝てないのか? いや、そんな事はない! 神秘の力の総量ではまだ妾を方が勝っている。それは、玉葛が九本尻尾を揃えてもじゃ。よし、今からお稽古を始めて、そして強くなって、次こそ玉葛に勝つのじゃ。そして、連れて帰るのじゃ」
立ち直りはえー。
しかも、結構な熱血ぶりで……。
「よし、そうと決まれば、タイホー。お稽古に付き合ってくれんか?」
「あぁいいぞ」
心なしか、大豊の目が輝いている。
特訓とか好きだもんなぁ……。
「あぁ……ところでセフィリア……」
歩き始めた大豊を止める玉葛。
ところで大豊、セフィリアさん、ペットボトルの中に入りっぱなしだけどいいの?
「気になっていたんだが……ワラワを連れ帰ってしまったら大豊と別れ離れだぞ」
「あっ!? なっなら連れ帰るのは無しじゃ!! でっでも、お稽古はやるぞ!!」
えぇっと……何とコメントをするべきか……
「では、気を付けて帰れよ。セフィリア」
「当然じゃ。まっ妾には、タイホーがおるから大丈夫じゃ」
そして、軽く会釈をして帰る大豊。
って、こんな終わりでいいの?
てか、ペットボトルから出なくていいの?
ねっ!!
「ところで玉葛〜。セフィリアなんとかって人……誰?」
紅葉の質問。
確かに気になる。
チョロッと名前が出ただけで、それらしい自己紹介なして行っちゃったし……。
「あぁ、やつか? やつは……」
言葉の詰まる玉葛。
説明が難しいのだろうか?
「にゃぁ!! あたいが教えるにゃぁ!!」
「「万里」」
「万里、どうしてここに? 家で留守番するって言ってたじゃないか」
情報屋猫又一族の猫又万里の登場。
「お昼ご飯聞くの忘れてたにゃ。っで来てみたら面白いコトににゃってたし、それに、あたいの出番ぽかったにゃ」
と胸を張る万里。
まぁ確かにそんな雰囲気ではあったけど……タイミングが良すぎませんか?
「深く気にしちゃダメにゃ。っで本題にゃ」
と手を出す万里。
ん?
「にゃにボケッとしてるにゃ! 情報料にゃ。情報料。情報料も無しに聞こうにゃんて甘いにゃ。あたいは慈善事業じゃにゃいにゃ。情報と釣り合ったものを支払ってもらわにゃきゃ情報を教えられにゃいにゃ」
流石はプロの情報屋。
しっかりしていらっしゃる。こういう態度の人の方が信用できる思う。
「えぇ……何か支払ってまで欲しいとは思わないなぁ」
「にゃっ!! にゃかにゃか期待ハズレにゃ答えにゃ! これじゃ猫まんまの食い上げにゃ」
紅葉が普通に断った。
それが予想外だった万里は慌てる。
てか、猫まんまって……。
「はい、コレで教えてくれるだろ」
と源太が万里に弁当を渡す。
「にゃっ!? OKにゃ! はな……って待つにゃ」
まだ何かあるの?
「源太は、あたいにご飯を用意する約束をしてるにゃ。この情報の情報料としては価値が低いにゃ」
「万里、残念だが君のお昼ご飯は台所に用意されているし、朝出る時にだって言って出ていったはずだよ? 思い出してごらん?」
「……………………言ってたにゃ。ごめんにゃ。朝は弱くてとても眠いにゃ」
この猫又ちゃんはどこまで猫なんだろう……
「じゃっ気を取り直して、セフィリアについてにゃ」
うん。
「本名セフィリア=ウンディーネ。満17歳。現在のあの世の王を父親に持ち、ウンディーネ一族の中でもかなり高貴にゃ出である。かなりのお父さんッコで、父親の一族名である“ニュクス”を名前の中にいれ、名乗ることが多い」
ふ〜ん
「ふ〜ん」
「ふ〜んって反応がイマイチにゃ。軽くショックにゃ」
いや、だって……見たまんまって感じだし……。
「弁当一つじゃここが限界にゃ! むしろサービスしすぎにゃ」
えぇっと……そうなんですか。
ありがとうごさいます。
まぁなんにせよ、一件落着ってことで、そろそろ頬を氷か水で冷やしたいのですが……。
腫れなきゃ良いけどなぁ……
あわわわ
頑張ったよ? 頑張ったよ?
てなワケで次回予告は葛葉さんです。
葛葉(以下葛)「あらあらまあまあ、わたくしでよろしいのかしら? 任された以上頑張りますわ。次回、セフィリアさんとの諍いを終えた玉葛一行は喫茶昼行灯にやって来た。そこで出逢ったのは……ところでわたくし、喫茶店という所には言ったことないんですよ? 一度は行ってみたいですわ。そういえばわたくし、洋食に挑戦し始めましたの。この歳で挑戦者なんてワクワクしてしまいますの。それに学ぶ事があるって良いですわ。作者を含め学生の皆さん、勉学に勤しんで下さいね」
なっ何をいってんだ!?
このオバサン………
ぼっ僕が学生なわ……
葛「なんだか急に蛙の潰れる音が聞きたくなりましたわ。それに少々お話し合いが必要のようですし……」
ちょっ!!
まっ!!
葛葉さん不文律を守って!!
暗黙の了解を守って!!
葛「あらあらまあまあ、意味同じですよ。というより、近くで蛙が歌ってるいますわね。丁度いいですわ」
ぎゃぁぁ!!
葛「でわ、読者の皆さん、不甲斐ない蛙の代わりさようなら。次回をお楽しみにして待っていて下さいね。あと、わたくし葛葉は皆様の応援メッセージを待っていますわ。アナタのたった一行のメッセージでも力になりますわ、そして出番が増えますわ。お願いします。アナタの暖かいメッセージお待ちしてますわ。うふふ」
ぎゃぁぁ