第17話〜セフィなんとかなんとかウンディーネさん対玉葛と僕〜
空気が重いです。
なぜかと言うと。
青い長い髪(よく見るとピンと跳ねたアホ毛がある)と水色のドレスを着た、セフィなんとかなんとかウンディーネさんの一言によって空気が固まってしまったのである。
「セフィ……どうした? 認めないって、どう言うことだ?」
「駄目じゃ。駄目じゃ。この様な結果は駄目じゃ。タイホーが、あの何とも表現のしようのない男に勝って。玉葛が元の世界に戻らねばならんのじゃ。
戻って妾と王の名を競い合わねばならんのじゃ。玉葛無しで得た王の名など要らん」
だだをこね始めるセフィなんとかなんとかウンディーネさん。
呆れる玉葛。
意味が分からず、キョトンとする僕ら4人。
えぇっと……要約すると、ただのワガママ?
「セフィリア……ワラワは、何度も言ったぞ。王の名など要らんと。第一に、純粋に神秘の力ならセフィリアの方が強いだろ。それに今は、こちらでの生活が楽しくてたまらないのだ。すまん。ワラワは帰れない」
玉葛が理性的にだが、自己中心的な説得する。
「ちょっと、玉葛? 話が全く分からないんだけど? 『王の名』ってなに?」
そうだ、そうだ。
置いてけぼりも良いとこだぞ。
「すまん。王の名と言うのは、まんまあの世を治める王の事を指すのだ。あの世じゃ、名前が地位とか権力を表す事も多いからな、名前を継ぐと言うことは、その名前の地位や権力を受け継ぐと言うコトなんだよ。まぁ、あの世を治めるとか言っても、ただの全種族長の象徴みたいな役職だし、興味ないんだよ」
興味ないんだよって……玉葛……。
「と言うコトは、玉葛は次期王様ってコト?」
「あくまでも、“候補だった”だがな。それに、王になるには、72人の代表議員が決めた72のお題をこなさなければならないんだ」
72のお題って……多!!!
でも、それぐらいやらなきゃ王として認めらるないと言うコトなのだろうか。
「妾を……妾を無視するなあ!!!!!!!!」
あっ……忘れてた。
「すまん、忘れてた」
忘れてたって、玉葛……セフィなんとかなんとかウンディーネさんが可哀想だよ。
まぁ、人のこと言えませんが……。
「こうなったら力ずくじゃ!」
セフィなんとかなんとかウンディーネさんは、おもむろに川に手を入れる。
そして、ゆっくりと川から手を上げる。
引き上げられた手には、ぷよぷよとしたサッカーボールだいの水の玉がまとわり付いている。
水玉には、これまたはっきりと神秘の力が充満していて、水の塊と言うより神秘の力の塊と言っても良いぐらいである。
神秘の力の密度が違う。
僕の作る光球が豆腐なら、セフィなんとかなんとかウンディーネさんの作った水玉は鉄ぐらいの密度の違いがあると思う。
「覚悟せい!!」
とセフィなんとかなんとかウンディーネさんが言うと、水玉がはじけるように膨らみ、三本の腕になって玉葛に飛んで行った。
が、玉葛は華麗なステップでその腕達を避けていく。
腕達もうねったり、時間差を入れたり、フェイントを入れたり、同時に攻撃したりするが、玉葛は一向に捕まる気配がない。
てか、玉葛、平気に空中二段ジャンプとかしているんですが……。
「えぇい! 大人しく捕まるのじゃ! ん? あっ」
セフィなんとかなんとかウンディーネさんが何かに気付いたようだ。
水の腕の一本が突然、別方向に向かったかと思うと、残った二本の先っぽが無数に割れ、玉葛を二方向から襲い、玉葛を貫いた。
っ!!??
唖然とする僕らをよそにセフィなんとかなんとかウンディーネさんが口を開けた。
「忘れておったぞ。玉葛を相手にする時は冷静にやらんとならんかったな。そうだろ? 玉葛」
何を言う!!
あれ玉葛がいない……
水の腕に貫かれたはずの玉葛の姿が消えていた。
そのかわりに、僕から見て左前方、セフィなんとかなんとかウンディーネさんから見て右後方に玉葛がいた。
普段とは違う、見慣れない姿で。
八本の白に金メッシュの入った尻尾と、結った髪がまるで一本の尻尾に見える白に金メッシュの入った髪をなびかせて、最近、ずっとくせ毛状態になっていた頭の耳も、ちゃんと耳としての働きを戻したようで、ピクピクとしきりに動いている。
玉葛はセフィなんとかなんとかウンディーネさんの言葉に対してニヤリと不敵に笑う。
水の腕に捕まっているのなんて関係のないかのように。
「セフィリア。自慢気に言うのは良いが、今、お前が捕まえているワラワも偽物だぞ。さぁどれが本物か当ててみろ」
と、だけ言い残すと、水の腕に捕まっていた玉葛の姿が消え、代わりに大量の玉葛の姿が現れた。
えぇっと……1.2.3.4.5……12人の玉葛だね。
多い!!
「「「「避けられる? 本物は12分の1だ。せいぜい頑張って避けろ」」」」
12人の玉葛が一斉に狐火を作り出す。
多分、一人あたり9個の狐火を作っていると思うから、総数は……108個。
やっぱり多い!!
よく見てみれば、周りは、玉葛の神秘の力が充満している。
「ハルどうしたの? ……ん? う〜ん……なっなによ、これ! 殆ど玉葛の力に満たされてるじゃない」
僕の反応に気付いた紅葉が、周りを見て驚く。
こんなにハッキリ見えるのに、紅葉は目にそこまで力を込めないと見えないの?
源太にも見えたらしく、かなり驚いている。
大豊はこれといって驚いている様子はないが、気持ち足が後ろに下がっている。
これが玉葛の本気なのだろうか……
今回の次回予告は……
紅葉!!
紅葉(以下紅)「えっ!! あぁ、予告ね。えぇっと、次回は白熱する二人を後目にハルとラブラブ。この闘いの行方はいかに!!!」
玉葛(以下玉)「だから、何故に嘘をつく!! 何か? 出番が無いことをひがんでおるのか?」
紅「そっそそそんなこと無いよ?」
玉「動揺しまくりだな……」
紅「とっとりあえず次回をお楽しみに!!」