第16話〜暴走暴力英雄と僕〜
「紅葉、源太、二人を止めなくては」
「うん、止めたいのはやまやまなんだけどね……」
「大豊……完全に火が付いちゃってるからねぇ」
うん、二人の判断は正しいよ。
僕だって静観するからね。
絶対。
「ところで玉葛、強化属性って何ができるの?」
僕もちょっと気になってた。
「ん? 強化属性か? あれはバカ単純でな。ただただ、体を強化するだけ。例えば筋力がアップしたり。拳を固く強化したり出来るのだ。目立った特徴が無い代わりに、少ない神秘の力で大きな力になる。強化属性の奴は、決まって身体能力が化け物だ」
大豊そのままじゃん。
僕は急いで光球を両手に一つずつ作る。
光球って言うのは、閃光球の元になっている光の球。
これまた安直な名前だけどピッタリだと思う。
ソフトボールだいの大きさなのは、そのサイズが一番作り易く、出力も丁度いいのである。
ちなみに、手のひら以外にも、僕の神秘の力が充満している範囲になら、同時に6個まで作り出せる。
って、大豊の動きがない。
まるで、精神統一をしているようだ。
「気を付けろ。奴は神秘の力を洗練して己を強化している」
なるほど。
このまま、素直にやられる訳にもいかないので、アレを使おう。
技の名前は“光線”。
光球に“レーザービームのように敵を撃て”とイメージして出す技だ。
こんな適当なイメージで大丈夫なのかと思うかもしれないが、出来てしまうものは仕方ないのだ。
名前は、さすがにレーザービームじゃ駄目だろうと思って、少しひねってみた。
試しに、大豊を撃ってみる。
出力は肌に焦げ目が付く程度。
それでも、結構痛いと思うけど。
両手の光球を構え、光線を撃つ。
光線が放たれる瞬間、普段白く光る光線が見えなくなる。
そして、音もなく光の線が、まさに光の速さで大豊へと伸びていく。
左肩、右ももにヒット。
だが、大豊は微動だにしない。
うっわヤバ。
効いてはいると思うけど……いっそのこと出力を上げた方が……駄目だ、あれはマジで危険だし……
今日、光球を作れるのは、あと7個。
閃光球も光線も基本、一個の光球で一回きりだが、ラインならちょっと裏技を使えば繰り返し使える。
なら!!
僕は、僕の周りに光球5つを作る。
役割は光線だ。
手に持たない光球に光線の役割を持たせると完成する技“衛星光線”。
配置は、僕の真上に一つ、残りが一定速度で僕の周りを回っている。
いつでも一斉射撃ができる。
来るなら来いや!!
「…………」
あの……大豊?
「晴信、急げ!!」
お、おう。
玉葛の声に押されたまらず一斉射撃。
右腕の付け根に一発、左すねに一発、胸に三発をこれまた微動だにせず受け止める大豊。
止まったか?
念のため、両手に光球を作っておく。
「リフレッシュ」
ん?
大豊?
えぇっと……何ともないんですか?
「それが全力か? 痛くも痒くもないぞ。まぁ、回復したのだから当たり前だがな」
げっ!?
大豊は一瞬で間合いを詰めてきた。
いつも以上に速い!!
そのまま左頬を殴られ、右後方に5m程飛ぶ。
痛って〜。
歯が折れてないのが奇跡だよ。
「思わず手加減をしてしまった……次は全力だ」
ヤダ!!
光線の出力アップ!!
今までのより焼ける程度に!!
この微妙な加減が難しい。
あと、両手光線では、たぶん駄目なので片手を閃光球に変える。
「行くぞ!!」
おう!!
来い!!
「二人とも止まれ!!」
ん?
なに?
源太。
「なんだ? 源太?」
僕ら二人を源太が止める。
どうやら閃光球の効果が消えたようだ。
「大豊。確認する相手、一人忘れてるぞ」
「誰だ?」
「玉葛だよ」
……確かに。
ってか、そっちに確認した方が確実だよ。
「……そう言われてみれば……。玉葛、ホントの事を話してくれ」
「ホントも何も、ワラワは自分の意志でこちらの世界に来ている」
そうだ、その通りだ。
「間違いなのだな。晴信……疑ってすまなかった。俺を殴ってくれ」
あっ……いや……あの……。
僕もだいぶ光線を当ててるから。
お互い様ってことで……
って言葉に出さなきゃ伝わらないよ。
「わかった。ありがとう、晴信。やっぱり、お前は最高の友だ」
伝わったよ。
何で?
声出してないよ?
コレが強化の力?
まぁ、でも、これで一件落着。
良かった。
良かった。
「妾は認めんぞ!!」
良かったにならなかったよ……
セフィリア(以下セ)「妾の出番はどうしたのじゃ」
う〜ん……
セ「誠意が感じられのじゃが?」
う〜ん……
セ「コラ!! 聞いておるのか!?」
う〜ん……
あっ、次回予告よろしく
う〜ん……
セ「うっ、うん。次回予告じゃな。任された。次回、妾が華麗に玉葛を倒すのじゃ! どうじゃ? スゴいだろ」
玉葛(以下玉)「嘘をつくな!! なぜに初めての予告をセフィリアにやらせるのだ!?」
う〜ん……
とりあえず、また、次回にお会いしましょう
玉「あっ! このっ! バカ〜!!!!」