第14話〜玉葛の登校方法と僕〜
ついに……ついに……ついに!!
一万人突破!!
感謝感激、土下座の嵐。
皆さんありがとうございます!!
朝です。
学校です。
階段の陰です。
玉葛付きです。
「晴信、どうした? こんな暗い所に……もしや!!」
僕の手のひらの上で、手のひらサイズの玉葛が人聞きの悪い表現をしている。
「ん? 何をするのだ?」
と、小首を傾げる玉葛。
って、漫画かテレビで聞きかじった表現するから訳が分からなくなるんだよ。
「ん!? 何をする! 紅葉放せ!!」
「うるさい! 朝決めなかったかな? 玉葛は私に着いて行くって!」
紅葉が玉葛をつまみ上げる。
そう、僕らがこんな階段の陰に居るのは、玉葛が、紅葉の所ではなく、僕の所にいたからだ。
ちなみに、さっきは手のひらサイズと表現したが、正確には20cmぐらいである。
「かなり迂闊だった。学校の感想をすぐに言うべきでは無かったな」
「むっ! サッサといくよ!」
と、紅葉は乱雑に胸ポケットへ玉葛を入れる。
ちなみに、僕らの制服は学ランとセーラー服だ。「痛! もっと丁寧に扱え!!」
僕もそう思うけど、玉葛も約束を守らなかったのだから自業自得だと思うよ?
「さっ行くよ。ハル」
一人先に行ってしまう紅葉を僕は慌てて追いかけて行った。
「晴信、紅葉。おはよう」
教室に入ると、眩しい笑顔の源太がいた。
そして、紅葉を見て、ニヤリと笑う。
この笑い方にいやらしさが無いのが凄い。
「紅葉、胸ポケットに玉葛がいるでしょ」
見抜いた。
一発で玉葛が居ることを見抜いた源太を、僕を含め、紅葉、そして、玉葛も僅かに顔を出し驚き顔で見ていた。
「おいおい、そんなに驚くなよ。万里に教えてもらった魔法の初級の基礎を実行したまでだよ。“サーチ”ってやつ。他にも神秘の力を増やす“チャージ”を習ったよ」
まだ、二つだけだけどと、付け足しながら、これまた、眩しい笑顔を作る源太。
「こいつ……天才か……」
玉葛の呟きが聞こえた。
「もしもの事を考えて、並みの者では、見ることが出来ないように、自分に術を掛けていたし、漏れ出す神秘にも気を配っていたのに……」
見破られたのがショックだったようだ。
源太には、どうやら魔法使いとしての才能が有るみたいだ。
親友としては嬉しいばかりだ。
「……私達もサーチ使えるけど、何か違うの? そっちは魔法なんでしょ?」
どうやら紅葉は、魔法と僕らの術……仮に超能力として、それらの違いに興味が有る様子。
「う〜ん……俺もそこまでは聞かなかったからなぁ……玉葛、分かります?」
「とりあえず、ワラワが分かるのは、紅葉やワラワの使うサーチは“探知”で、源太の使うサーチは“探査”と、漢字にすると違うと言うことだげ、後は、ワラワより万里の方が詳しいから後で聞いたらどうだ?」
“探査”と“探知”の違いがいまいちピンとこないが、字が違うぐらいだからそれなりの違いは有るのだろう。
どうでも良いが、僕は玉藻さんに『晴信の探知能力は玉葛にも引けを取らないわ。鍛えれば、玉葛より高くなるかもよ』と評価されており、紅葉は『無いよりマシなレベルね』と評価されている。
本当に僕らの使う超能力は個人差が強いと思う。
キーンコーンカーン
「HR始めるぞ〜。古山、日出川、あと安森。そこにいたら先生が入れないだろ。サッサと席に付け」
チャイムが鳴り、突如、僕らの後ろに現れた、僕らの担任、小松大先生。
突如と言ったが、僕らが登校してきた時間や立ち話をしていた位置、要するに始業時間間際に来たコトや教室の入り口に居たコトを考えると驚くことでも無い。
僕は窓側の一番後ろの席、源太はその右斜め前の席、紅葉は真ん中の最前列にある席に着く。
「出欠席を取るぞぉ」
出欠席を取り始めた、担任、小松大先生。
別に小松先生が先生の仕事をするのに疑問が有るわけでは無いが、いつ見ても小松先生を見ていると納得が行かない。
小松先生は、角刈りで逆三角形の体型と、見るからに体育会系の先生なのだが、これでも美術の担当教員。
しかも繊細な絵が多く、生徒の中には小松先生の絵のファンだと言う人が居るのだ。
どこか納得が行かない。
「なんだ? 橘槻は居ないのか? 休みの連絡もないし……珍しいな」
大豊が居ない!?
『連絡なき欠席や遅刻は悪、サボりはもっと悪』とか言っている大豊がこんなコトをするだなんて……
「とりあえず、橘槻はやす――」
「遅れてすみません!」
小松先生が欠席と記入しようとした所で大豊が教室に入ってくる。
「おぉ、橘槻、残念だが遅刻な」
「はい、分かりました。すみませんが俺と晴信を早退にしてください。訳は言えませんが、お願いします」
は!?
「…………わかった。橘槻、安森早退と」
ちょっまっ先生!?
「ちょっと大豊!? なっ……」
すかさず立ち上がる紅葉。
だが、大豊のただならぬ雰囲気に、すぐ、押し黙ってしまう紅葉。
「晴信、ついて来い。話がある」
………仕方ないな。
なんか火が付いてしまったようだし、話しをして収まるような奴でもないし、ここは素直に従いますか……
「古山、日出川、お前らも早退にするか?」
小松先生は、じっと小松先生を見ている紅葉といつの間にか立ち上がっていた源太に向けてそう言った。
なんと言うべきか……。
まぁ、良い先生何だろうな。
たぶん。
そして、僕ら三人は大豊の後に続き、教室を後にした。
ななななななんと!!
一万人を突破してしまった。
どうもマジに嬉しい爆弾蛙です。
いや、本当にありがとうございます。
今後とも、王道と王道でない道の間ぐらいを突き進んでいけるように頑張りたいと思います。
感想、評価が力になりますので、どうぞよろしくお願いします。