第10話〜玉葛の洋服と暴力英雄(ヒーロー)と僕〜
女性の買い物は長い。
しかも、それが洋服となればより一層長い。
玉葛が着替え終わった後すぐに、狐禮市中心街にあるデパートに来て、まず始めに玉葛の食器やら日用品を買い、洋服を買いに来たという訳だ。
だが、玉葛と紅葉が服を選び始めてかれこれ三時間になる。
ちなみに僕は、近くの休憩コーナーでひたすら待っている。
何でも、紅葉いわく、『玉葛は今日始めて洋服を買うの。だからいきなりハルに選んで貰うなんてズルい。それにある程度自分の好みを確立しといた方がいいの』との事らしい。
だから僕はひたすら待ちぼうけなのである。
ぐうぅぅぅ
お腹すいたなぁ。
まぁお昼過ぎてるから当たり前何だけどね。
「ハル〜。お待たせ」
あれからまた、30分待ってようやく紅葉が戻ってきた。
あれ?
玉葛は?
「ハル聞いてよ」
何?
「玉葛ったら私より背が小さいのに!! こうスタイルがいいんだよ!!!」
紅葉は何やら手を動かしながらぼやき始めた。
って、はぁ?
僕にそんなコト言われても……
「でも……サイズじゃ負けて……無いはず」
……
ノーコメントの方向でお願いします。
ところで玉葛は?
僕は紅葉の顔をのぞき込んだ。
「あぁ玉葛ね。可愛く仕上がったわよ〜。玉葛出てらっしゃい」
…………
………
……
まだ?
「あれ? 玉葛? 何、今更恥ずかしがってるの。ほら、出ておいでってば」
柱の向こうに居るらしく紅葉が引っ張り出そうとしている。
「分かった。分かったから、引っ張らないでくれ」
どうやら決心が付いたようだ。
「笑わないでくれよ」
あぁ笑わない。
玉葛は柱の影からゆっくりと現れた。
デニムのワンピースに茶色ファーの付いた黒のジャケット。
玉葛の黒い艶髪とよく似合っていて可愛い。
……っ!?
黒い!?
髪が黒い!?
左の横髪に一房づつ白髪と金髪が残っているが、全体的に艶のある黒髪になっている。
三時間と30分前には、まだ白髪に金メッシュだったのに。
「あぁ髪の色か? 紅葉が目立つと言ってな。黒くしたのだ。九尾のワラワにしてみればこんなの簡単さ」
た、確かに。
よく似合って居るし問題ないか。
「さっ、ハル、荷物持って。お昼ご飯食べに行こ」
そうだね。
と即、頷きたいが、この荷物を一人で持てと?
僕の目の前、玉葛、紅葉の足元に山のように置かれた買い物袋。
具体的には紙袋18個。
多いよ。
「すまんな、晴信」
玉葛まで!?
……わかりました。
僕が持つのは12個までだからね。
どうせ、いくつかは紅葉のだろうし。
僕は適当に12個の紙袋を持つと歩き始めた。
「おいしかった!!」
「うん。あの“なぽりたん”と言う料理は良いな。今度作り方を教えて欲しい」
「あれ、玉葛って洋食は作れないの?」
「あぁ。葛葉姉様が洋食をあまり知らなくてな。ハンバーグとカレー、シチューぐらいしか作れないのだ」
「へぇ〜。ハルはスゴいよ。本さえあれば大抵の料理作れるからね」
「……ワラワもあれば作れるぞ」
「えっ?」
まぁある程度料理が出来れば当然なわけで。
ちなみに僕らは、喫茶“昼行灯”で昼食を取り、家に向かっているところである。
昼行灯には、これからちょくちょく行くコトになると思うので、玉葛を案内した。
どうやら玉葛も昼行灯が気にいった様なので嬉しいばかりだ。
「きゃっ!!放して下さい」
小さな悲鳴と拒否の声。
目を向けると一人の少女を三人の少年が囲っている。
どの街にも不良はいるものである。
この狐禮市とて例外では無く。
いくつもの不良グループが縄張り争いをしている。
「不謹慎な奴らだ」
ボソッと玉葛の声が聞こえる。
助けに行くようだ。
「玉葛待って。」
そうその通り。
「何故だ。見て見ぬ振りをするきか?」
違う。
違うんだよ、玉葛。
「違うの。今行くと――」
ドンッ!!!
「げふんっ!!!」
「よしき〜!」
「よっちゃん!!」
少女を捕まえていた少年が蛙の潰れる様な悲鳴を上げながら飛んだ……いや、滑って行く。
橘槻大豊を乗せながら。
「てめぇ!!!」
「よっちゃんに何すんだ!? 殺されたいのか?」
一人が滑って行った少年(以下よしき君)の上に乗った大豊に掴みかかる。
。
「――巻き込まれるから……ってアイツ等、新参者なのかな?」
紅葉は、玉葛を止めると、僕の方へたずねてきた。
さぁ?
そうなんじゃないの?
ご苦労なこった。
わざわざ殴られに来るなんてね。
「ぶわっ!!!」
「た、たっちゃん」
大豊に掴みかかった少年(以下たっちゃん)は囲まれていた少女と三人のうち最後の一人の上を悠々と飛んでいった。
「あわわわ…」
かなり焦っている様だ。
「ぶぎょっ!」
まだよしき君の上乗っていた大豊がやっと動き出した。
よしき君からまた蛙の潰れた様な悲鳴がでる。
大豊は一瞬で残った少年の懐に入り、腹、顔、胸の順に拳、膝、蹴りと入れ、最後の少年を沈める。
「悪、即、滅」
大豊はやりきった顔で決めゼリフをいう。
お前だけだよ。
そんな言葉が似合うのは……
「誰だ、あいつは……」
「あれ? あれは私達の幼馴染み……てか一応、ハル親友。でもってこの街の暴力英雄」
そう、大豊は僕の幼馴染みで親友だ。
ちなみに暴力英雄と書いてヒーローと呼ばれたり、そのまま暴力英雄と呼ばれたりする。
「暴力英雄? 一応正義の味方ってやつか?」
分からないよね。
まぁ間違いではないが正確には、大豊の“善”の定義の味方、大豊の“悪”の定義の敵と言う独善者なんだよね。
「微妙な表情だな……それで間違いで無いと言うことなのか? ならいい。挨拶した方がいいかな?」
玉葛が挨拶すべきか悩んでいると、大豊がこちらに気付いた。
「晴信。なにしてんだ? ……ん? 誰だ? この子?」
「ワラ、私は玉葛という者だ。昨日から晴信の家に家事手伝いということで居候をしている」
「ふ〜…ん」
見つめ二人。
「まぁいいや。玉葛だな。わかった。覚えとく。晴信、犯罪だけには走るな。友を殴るのは嫌だだからな」
縁起でも無いこと言うな。
「じゃ、次の悪党探しにいくわ。さいなら」
そう言い残すと大豊は立ち去っていった。
趣味に忙しい奴だからな。
どうせなら今度、玉葛を源太に会わせてあげなきゃ。
たぶん、双方気にいるだろう。
いつがいいかなぁ……
僕らそのまま帰路についた。
どうも爆弾蛙です。
質問がとどきました。
“ハル君はどうやって普段コミュニケーションを取っているのですか?”
です。
キャラ指定が無かったので僕の方で勝手に決めさせてもらいました。
玉葛、紅葉、晴信で〜す。
玉葛(以下玉)「どうも、玉葛だ」
紅葉(以下紅)「紅葉で〜す」
晴信(以下晴)「 」
玉、紅「「しゃべるな」」
紅「ハルのコミュニケーション能力についての質問だね。確かにハルは、しゃべらないよね」
玉「うむ、極端に無口。コレが晴信だな」
紅「昔っから滅多なコトじゃしゃべらないんだよね」
玉「そうそう、五年前のあの二週間のあいだずっとしゃべらずにいたしな。まぁ玉藻姉様とかは会話してたらしいけど……」
紅「恥ずかしいとかそう言うわけでもってないのに何でだろ。長い付き合いだけど分からないんだ」
玉「そうか……でもまぁ、質問はそこじゃ無く、晴信の普段のコミュニケーションだ」
紅「そうね。ハルは顔に考えてるコトがスッゴくでるの」
玉「そうだな。表情豊で分かり易いな」
紅「私ぐらいになるとかなり細かい所まで分かる時があるよ」
玉「……」
紅「なによ。その目は……」
玉「別に」
紅「まぁ結論を言うと」
玉「そうだな」
玉、紅「「考えて居ることが凄く顔に出る」」
紅「やったぁ。ハモったハモった」
玉「そうだな!そうだな!」
紅「じゃっ帰ろっか」
玉「そうだな」
晴信君。
という事ですがよろしいですか?
晴「うんまぁ……でもあまり気にして無かったからなぁ」
さようで……
晴「そもそもだ。そもそも、みんな、僕がしゃべる前に話しを進めていくからしゃべる機会が無いんだよ」
確かに……
しかも発声禁止もされたしね。
晴「まぁあまり普段と変わらないから気にならないけどね。いざとなったら筆談とかあるし」
そ、そうだね。
晴 「じゃあ僕も帰ります」
さよなら。
皆さん分かっていただけたでしょうか?
要するに、晴信の周りに晴信の意見を聞こうとする人が少ないから会話する必要が少ないという訳でした。
てか長!!!
質問にはもう少し短く答えるようにしますので、どんどん質問をください。
でわまた次の機会に