プロローグ〜週一回の夢〜
【花嫁は狐と幼馴染み】の連載版です。
設定を煮詰めていったら【花嫁は狐と幼馴染み】とは似て非なるモノになってしまいました。
楽しんでもらえたら光栄です。
コレは夢だ。
あと、昔体験したことを追体験してる夢というのもわかってる。
わかるのはそれだけ、他は全く分からない。
ココがドコなのか、コレからなにが起こるのかも分からない。
「おい、人間。小娘が目を醒ましたぞ」
後ろから女の子の声がした。
どこか警戒心のある。
僕は、声の主を確認しようと振りかえようとすると、暗転。
見える景色が一気に変わる。
川べりから屋内に、趣のある和室に変わった。
和室には布団が敷いてあり、ソコには毛の赤い小さな少女が寝ていた。
気持ち少女が薄く透けて見える。
まだ起き上がるコトはできないようだが、精一杯の笑顔を僕に向けている。
その精一杯の笑顔は、本当に嬉しそうだ。
「少し待ってね。今起きるから」
とてもつらそうな声。
無理はして欲しくない。
僕が止めようと口を開こうとした時、ふすまが開き、
「小娘、無理をするな。今は休め。どうせ焦ったとしても、お前たちの世界への道は閉じたままだ」
先ほどの少女だ。
僕は、さっき見るコトのできなかった少女を見るために振り返った。
だがまたしてもここで暗転。
この夢はどうしても僕に少女を見せたく無いのだろか。
だが、そんな考えは次の場面で間違いだと理解した。
次の場面は、公園のような広場。
布団に寝ていた少女も元気になったようで、地元の子たちと遊んでいる。
そして、僕はベンチに座り休んでいる。
隣には、あの姿を見ることのできない少女が座っている。
「お前たちが来て一週間たったが、小娘もあんなに元気になった。よかったな」
少女が話掛けてきた。
今度は難なく少女を見るコトができた。
そして、今までなぜ見るコトができなかったのかがわかった。
僕は、少女の顔を覚えていないようなのだ。
少女の顔は歪み、ぼやけていた。
表情は分からないが、雰囲気で笑って居るのが分かる。
それにしても少女は僕らと一緒に遊ばないのだろうか。
僕も地味に汗をかき、大分整ってきたが息だって切れていた。
少女にその様子が一切ない。
「そんな顔するな。ワラワだって遊びたいさ。だがな、ワラワは、化物だから…皆…とは遊べ…ない」
少女はうつむき、何かを耐えるような声で話す。
気付けば少女を優しくだき、頭をナデていた。
多分、記憶の中の行動だと思う。
ここでまた暗転。
今度の場面は、ふすまの前。
ふすまの向こう、部屋の中からは、あの少女の声がする。
「ワラワはアイツが好きなのだ! だからアイツと一緒にアイツの世界に行く。小娘とも、らいばるだなと話しをしたし、勝負すると約束したのだ。約束を破るなと言ったのはお姉様方だ。だから…」
少女の懇願する声。
多分、少女と話しているのは、この屋敷の主人である双子の美人姉妹。
この少女との関係は……思い出せない。
「わかってるでしょ。神隠しにあった子共をあちらに返す時は、こちらでの記憶を消さなきゃならないこと、力を満足に制御できない者の渡航が禁止されていること。あなた達はまだ11歳。子供なのよ?」
「玉藻、それぐらいにしてあげてわいかが?」
「葛葉!」
「あなただって可愛い孫娘の恋を応援したいでしょ? だったら…」
どうやら美人双子姉妹は密談に入ったようである。
そこでまた、考える間無く暗転。
どうやら次は、神社のようだ。
ココには見覚えがある。
近所の狐禮神社に似ている。
「お急ぎ下さい。もうじき閉じてしまいます」
神主らしき人がせかしてくる。
「おい」
僕が赤毛の少女を連れ、神主さんの所に行こうとした時、あの少女が声を掛けてきた。
「五年だ。五年待っていろ。五年でワラワはそちらに行ける。だから待っていてくれ。必死で勉強するから。女を磨いて行くからな。覚悟しろよ小娘」
「いい加減名前で呼んでよね。たく…待ってるわ。正々堂々と行きましょ。それまで待っててあげる」
ふふふと笑い会う二人。
「「恋敵の一人や二人、倒せないで何が恋か!何が乙女か!ってね」」
すっかり意気投合してたらしい。
「お二方。お急ぎ下さい」
焦る神主さんの声。
「は〜い。またね。待ってるから」
「あぁ待っていろよ。あと――」
少女が改めて僕の方を見る。
「ありがとうな。絶対に行くから…本当にありがとう」
まだ少女の口は動く。
だが僕には聞こえない。
ただ口が動くのを僕は見ているだけ、たぶん僕の名前を言っているのだろう。
そして僕の視界は徐々に暗くなっていった。
夢の終わりなのだろう。
ありがとうございました。
2、3話ぐらいはすぐに載せるコトが出来ると思いますが……後は……
すみませんわかりません。