遠足ラバーズ未定
「一緒に回ろうか!!」
「いえ」
春の行事、遠足。
の前日。近所のスーパーに、遠足で食べるおやつを買いに来た黒区。その店頭で、偶然未来と出会った。
黒区は、既に500円分の駄菓子を買い漁っていた。安いものを大量にブチ込んでいるため、カゴはそこそこゴチャゴチャしていた。
未来は、まだこれからのようだ。
「カゴ持ってあげるよ!!」
「いえ。カラですし」
「一緒の買う?」
「いえ」
「これ美味しいよ。はい!」
「入れないで下さい」
未来はカゴに勝手に紛れ込んだスルメイカを棚に戻しつつ、柿ピーを手に取った。
「渋い!」
「普通です」
「ピーナッツ好き?」
「いえ。このバランスが」
「ひょっとしてマカダミアナッツなんかも、チョコと一緒でないとダメとか」
「はい」
初めて、未来から肯定の返事を受け取った黒区だが。
その思考の大半は、マカダミアチョコを持ってって、差し入れしよう。それだけに費やされていた。
「山だ!!!!」
「すごい声ですね」
遠足当日。やはり近所の山に登山に来た一行。
未来を的確に追跡したおかげで、会話しながらの山登りを可能とした。
「良い景色だね!!」
「何も見えません」
登っている最中だからな。木と林と森しか見えない。
「飲む?」
「いえ」
すごい勢いでブンブンと振り回されながら差し出された炭酸飲料と思しき飲み物に、未来は断る以外の選択肢を持ち合わせていなかった。
「まるでデートみたいだね!!」
「・・・・」
スルーされた。と言うより。
「アメ食べる?」
「・・・・頂きます」
そろそろ、未来の体力が尽きてきた。
最後尾には先生が居てくれるが、先生に追いつかれると何となく恥ずかしい気持ちになるので、気を張ってきた未来だ。
黒区は、そんな未来の気持ちに一切気付かないが。
「良い景色だ!」
「・・・あ。本当」
森の切れ目。ちょっとした崖のような場所。無論、学校の遠足で来るような登山道だ。ちゃんと手すりも設けられているが、そこからは、滝が見えた。
ごうごうと音を立てて流れるのが、数十メートルは離れているここからでもよく見える。
他の生徒達も、めいめいの場所で見入っていたり、よく見てから登山を再開していたりする。
「良し!もっと高いとこから、もっと見よう!!」
「・・はい」
立ち止まり滝を眺めた事により、少々の休憩を取れた。そしてアメのカロリーで体力を回復。更には、精神的なリラックス。
未来は、もうちょっと頑張れるようになった。
「やっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「や、やっほー」
らしくないと思う。こんな、子供みたいな真似をするなんて。
しかし、未来はやっほー、と声を上げた。
隣の黒区が、あんまりにも楽しそうだったから。つい。自分も、楽しくなりたかった。
黒区のようには出来ないけれど。
ちょっと楽しかった。
遠足翌日。振替休日となったその日。
筋肉痛に苦しみながら、そしてやっほーなどと、他の生徒の前でやってしまった過去を思い出しつつ、未来は身悶えるのであった。




