Episode 5
「ぶっはぁ!ぐっは・・・・・・,んん。く,大丈夫よ,心配,しな,い・・・・・・で?」
ミーナの口から,滲んだ血が溢れ出す。
ミーナは大丈夫,とは言ったが,少し死を覚悟してしまった。
―――――――ピンチのときこそ,本来の力が発揮される。
それは,ミーナにも例外では無かった。また,それが「条件」のうちに入っていたことを彼女自身知らなかった。
ミーナは目をそっと閉じ,その代わりに口を大きく開いた。というよりも,大きな穴となり,その穴から赤黒いモノが勢いよく生まれた。
その,赤黒いモノはまるでスライムのようにドロドロしながらなんとか形を楕円に留めていた。また,ミーナの体のどこからやってきたのかは分からなかった。
「ナ・・・・・!ナンだ!こいツ!!」
そのままそのモノは尾の生えた敵を認識し,モノの口と思われるあたりがパックリ割け,敵を覆うようにして飲み込んでしまったのだ。そして,そのまま,赤黒いモノは,ミーナの穴へと帰って行った。
「出せ!コこからダせ!!ぐぎゃああああああぁぁぁあぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!!」
悪魔の叫びも虚しく,モノは完全に,ミーナの体内へと戻る。
「ミーナ!どうなっているの?目を覚まして!」
今まで唖然とその光景を見ていた,母がハッとして,ミーナに駆け寄った。
だが,その,母を無視して,というより気づかずにミーナは口を閉じ,その代わりに目を思いっきり見開いた。
最後に,何かに取り憑かれたように言い放った。
「最大攻撃魔法,発動」
すると,先ほどの,攻撃魔法のように,ミーナの体が発光し始め,いくつもの光が煌めき始めた。
「ミーナ!ミーナ!!!」
母は,瞬時に悟った。このままいくと,攻撃魔法はミーナの体を目掛けて攻撃してしまうのではないかと。そんなことしたら,ミーナの体はバラバラ,いや,粉々になってしまう。
悟ったとおり,光はミーナの体を目掛けて一直線に走っていった。そのまま,ミーナの体に突き刺さる。が,ミーナの体は粉々にはならず,大きな振動波を起こした。
「ミーナ?どうなってるの・・・・・・?」
その後,まるで何も無かったかのようにミーナは意識を取り戻した。
血も滴り出ているのに全くなんの反応もしなかった。
「アレ?!悪魔は??何処行っちゃったの?」
「ミーナ??大丈夫なの?あなた,そんな魔法,何処で覚えたの?」
母は,治癒魔法を使ってミーナの傷口を癒していった。
「へ?ナンのこと・・・・・・?ってか悪魔逃がしちゃったの?」
ミーナは何も覚えていなかった。
「覚えてないの?無意識のうちに?」
と,母は口を零した。ミーナはそれに疑問を持ったが今は悪魔だ,と周りを警戒した。
「ミーナ,大丈夫。悪魔はもういないわ。」
「え?!!母さんが倒してくれたの?」
「いいえ,う~ん。強いて言うなら・・・・・・,貴女のおなかの中にいるわね。」
「は?!」
ミーナは母に馬鹿にされと思った。
その時だった。
グルルル・・・・・・
ミーナは何故かとても大きい便意を感じた。
「と・・・・・・トイレ!!!!!!」
ミーナは慌てて,部屋を飛び出し,トイレに向かう。
途中,バスタオル一枚の姉とぶつかりそうになるが,もうそんなことはどうでもいい。
「ちょ!ミーナ!あんた大丈夫なの?つーか血!!!出血多量で死んじゃうよ!!」
「いいの!!そんなこと!!それより,う○こーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「あんた,女なら,もっと,こう・・・・・・。」
バタンッ!とトイレのドアが勢いよく閉まる。
ヨームは母のいる,先ほどまでミーナが悪魔と戦っていた部屋に入る。
「母さん?大丈夫だった?」
「ええ,私はね。ヨームは?」
「風呂の戸が開かなくて焦ったよ。悪魔のせいなんでしょ?」
「そうね。悪魔のせい・・・・・・」
「どうしたの?」
「いや,さっきね・・・・・・」
と母は先ほどまで見ていた,ミーナの魔法についてヨームに詳しく話した。
「へぇ~。最大攻撃魔法???」
「もしかしたら,ミーナにはとんでもない魔法が備わっているんじゃないかしらね・・・・・・?」
「分かった。私も調べとく。」
「よろしくね。」
と,ミーナが何か成し遂げたような顔をして部屋に戻ってきた。
「はぁ~。すごかった。」
「ミーナ・・・・・・。あんたねぇ。」
ミーナは今まで戦っていたような感じを一切出さずに,椅子に座った。
「母さん~。なんかね~。トイレし終わって,見てみたらね。」
母は治癒をしながらミーナの話を聞く。
「なんか,いつもの違う,気持ち悪い色だったの。」
母はそれに反応した。
「ミーナ,あんた,今日は寝ていなさい。後で,病院に連れて行くからね。」
「えぇー。なんで,任務あるしー。」
「いいから。ヨーム,城の方に連絡しといて。」
「オッケー」
ミーナは母が急に厳しくなったのを不思議に思ったが,体も少し痛かったので,自分の部屋に戻った。
母は,悪魔が来てからの一連の流れをもう一度考え直していた。