『第七章 急変』
旧ヴァルハラ城は跡形もなく消えていた。
「いったいなにが・・・」
その光景を遠くから目撃していたアルマが旧ヴァルハラ城跡の近くに来ていた。
「これはひどい」
かつて城があったその場所には巨大なクレーターができていた。
「なんということじゃ」
「っ!」
アルマが振り返るとゼブルとストレアがいた。
「あなたたちは・・・」
「いったいなにがあったの?」
「わかりません。突然、お城が光に包まれたと思ったらすぐに光が消えまして、このようなことに」
「そうか」
「どうしますか」
「行ってみるとするかの」
ゼブルとストレアは旧ヴァルハラ城跡に向かった。
「なにもないのう」
「ですね」
そこには残骸さえも残っていなかった。
「これは、転移した可能性があるの」
「転移、ですか」
「うむ、“昇華魔術”など使えるものは妾が知る限りふたりしかおらん。しかもそのふたりはアヴァロンにはいない」
「本当に?」
「うむ、昇華魔術を使った術者は消滅しない。じゃが、ここにはだれもいない。つまり、転移した可能性が高い」
「・・・」
「さて、いったいどこへ行ったのやら」
ゼブルは五つの方陣を展開した。
「聞こえるかの?」
「なにか御用ですか?」
方陣のひとつに天照の顔が映った。
「おぬしらのところに城が転移して来なかったと思うての」
「こっちには来ていない」
「私のところも来ていない」
「僕のところもです」
「わたしのところも来ていませんね」
「私もって言おうとしたけど、今さっきそれっぽいのが落ちてきたわ」
「本当か!」
「あんたんとこのかは知らないけどね」
「わかった、いまからそちらに行く」
すると全ての方陣を消して新たな方陣を展開した。
「行くぞ、ストレア」
「はい!」
ふたりは方陣に飛び込んだ。
そこは陸地が円を描いており、その中心には巨大な湖があった。さらに宙に浮かぶ黒い球体が六つの石盤で囲われる形で存在していた。
「ここは」
「いやなところに来てしまったわね」
「ようこそ“ルルイエ”へ」
いつの間にか、目の前には長髪の女性が立っていた。
「久しぶりね、ジブリール」
「相変わらず人を見下した目をするのね“ヨグ・ソトース”」
「それはお互い様でしょう?」
「ルーナ!」
そこへゼブルとストレアがやって来た。
「やっと来たの?遅いじゃない」
「これでも急いだんじゃが」
「ちっ、これはまずいわね」
「さぁ、いい加減観念しなさい。ジブリール」
「だれが!」
ジブリールはランスを構えた。
「戦う気満々ね」
ヨグ・ソトースも戦闘態勢に入った。
「さて、どうしようかのう」
「手出しは無用よ?ゼブル」
「わかった。では、妾たちは見物するとしようかの」
そう言ってゼブルは三人を連れてその場から離れた。
「さぁ、始めましょう。ジブリール」
「もうこの際誰が相手でもかまわないわ」
ジブリールはヨグ・ソトースに攻撃をしかけた。
「あっはは。どうしたの、あなたってその程度だったかしら?」
「ふん。こっちにはブランクがあるのよ」
「そんなの言い訳になんてならないわ」
直後、大きな地震が起こった。
「なに?」
「ナイア!なんのつもり!」
「・・・ナイア?」
すると何もない空間に“穴”が開いた。
「いいかげん傍観するのも飽きてきたんだよ。だからちょっとしたいたずらのつもりだったんだけど。不満かい?」
穴から出てきたのは中性的な顔立ちをした少年だった。
「当然でしょう!せっかく楽しんでいたのに邪魔されたんだから」
「それは悪いことをしたね」
遠くで見物していた四人も突然現れた人物に困惑していた。
「師匠、あれはいったい?」
「あれは“ナイアーラトテップ”。“外なる神”の復活を望むもの。そして妾たちの敵じゃ」
「外なる神」
「それは“オリンポス十二神”のことですか?」
「っ!なぜ“十二神”のことを?」
「私は“その中のひとりの子供”なんですよね?」
「ルーナ?」
「いつからじゃ?そのことに気づいたのは」
「“ルナリアに覚醒したとき”、だよね?」
「「っ!」」
いつの間にかナイアがそこに立っていた。
「正確には“ルナリアじゃない”んだけどね。僕は知ってるよ、“最初から全部”見ていたからね」
するとナイアは六つの球体を出現させた。
「見せてあげるよ。“全部ね”」
次の瞬間、六人の意識は遠のいた。