『第六章 記憶』
その日もふたりは会う約束をしていた。ところがストレアがいくら待ってもルナリアは来なかった。
「どうしたんだろう?」
そこへひとりの天使がやって来た。
「ルナリア様から伝言を預かってきました」
「伝言?」
「はい。“母さん見つかったからもう会えない。”だそうです」
「そんな」
ストレアは渋々引き返した。
一方、ルナリアはジブリールに問いつめられていた。
「なぜあの娘と会っていたの!」
「ごめんなさい」
「ごめんなさいじゃなくて!何で会っていたのか聞いているの!」
「・・・」
「はぁ、もういいわ。戻りなさい」
ルナリアは自室へと戻った。
「まったく」
「お疲れ様です」
そう言ってジブリールの部下が紅茶を持ってきた。
「ありがとう。でも、紅茶じゃなくてコーヒーが良かったわ」
「失礼しました!今すぐお持ちします!」
「いいわ」
ジブリールはカップを持ち、口に運んだ。
「この紅茶おいしいわね」
「ありがとうございます」
ルナリア自室。
「ごめんね、ストレア」
ルナリアは膝を抱えて泣いていた。
「ルナリア様、ただいま戻りました」
「アルマ」
「ストレア様に伝言を伝えてきました」
「ありがとう」
「いえ」
アルマと呼ばれた天使は、そのまま姿を消した。
「もしかして、あの場所なら」
ルナリアは部屋を飛び出した。
旧ヴァルハラ城の地下にルナリアは来ていた。
「ここ、見覚えがある」
わずかな記憶をたよりにここまで来たルナリアだが、どうしからいいのか悩んでいた。
「お姉、ちゃん?」
「だれ?」
振り返ると、そこには見覚えのある人物がいた。
「マリア?」
「やっぱりお姉ちゃんなのね」
そう言うとマリアはルナリアに抱きついた。
「お姉ちゃぁぁぁぁん!」
「ま、マリア?」
「心配してたんだよ。いったいなにがあったの?」
「それは・・・」
「ここでなにをしているの?」
いつの間にかジブリールがそこにいた。
「ジブリール様」
「・・・」
「ここは立ち入り禁止のはずよ」
「ジブリール様、彼女から奪った記憶を返してください」
「何の話?私は記憶なんて奪ってないわ」
「だったらなんで、記憶喪失になんてなるんですか」
「はぁ、私は記憶を奪ったんじゃなくて”封印”したのよ」
「封印?」
「そう、でも封印が解け始めているみたいだけど」
「・・・」
「また、封印しないと」
そう言うとジブリールはルナリアに近づいていった。
「させない!」
マリアが方陣を展開した。
「お姉ちゃん、逃げて!」
「はぁ、邪魔をしないで」
ジブリールはランスを出現させた。
「さようなら」
「だめぇぇぇぇ!」
次の瞬間三人は光に包まれた。