『第一章 出会』
“天使の少女”は空を飛んでいた。
ふと視線を下へ向けた。
「・・・っ!」
眼下の光景を目にし、“天使の少女”は唖然とした。そこは血の海が広がり、死体の山がいくつもあった。火薬のにおいとともに血のにおいもする。
「間に合わなかった・・・」
「やっときたのか、待ちくたびれたよ」
すると、ひとりの“悪魔の少女”が死体の合間を縫うようにして近づいてきた。
「誰?」
“天使の少女”は問う。
「他人に名前を聞く時はまず自分が名乗るもんでしょ」
「悪魔に名乗る名前なんてないわ」
「あっそう。じゃあいいや」
そう言うと踵を返し歩き始めた。
「なっ、待ちなさい!」
言いながら方陣を展開、スピアを出現させ“悪魔の少女”に向かって投げた。すると“悪魔の少女”は振り向きもせず瞬時に方陣を展開し、大剣を出現させそれをはじいた。
そして“悪魔の少女”は振り向き、ため息とともに言った。
「はぁ、あたしは礼儀も知らないようなやつと戦う気はないよ」
そう言うと”悪魔の少女”はその場から消えた。
「・・・」
「よろしいのですか?」
“天使の少女”は何も言わず飛び去った。
翌日、“天使の少女”はひとりで昨日と同じ場所へ来ていた。
「来ると思った」
声のした方に目を向けると“悪魔の少女”が立っていた。
「・・・私は、アストレイア騎士団団長ルーナ・エルフィン。あなたと戦いに来ました」
「あたしはストレア。ストレア・フェルナンドよろしく」
ふたりはしばらくの間見つめ合い、そして武器を構えた。
「・・・」
「・・・」
静寂が訪れた。最初に動いたのはストレアだった。
「はぁぁぁぁぁぁぁ」
一気に距離をつめ、剣を振るう。ルーナはそれをはじき返し反撃する。
「やぁぁぁぁぁ」
ふたりの戦いは夜明けまで続いた。
気づいたらふたりは地面に仰向けになっていた。
「はぁ、はぁ」
「はぁ、はぁ」
静寂の中、ふたりの息づかいだけが聞こえる。
「なかなかやるじゃないの」
「そっちこそ」
ふたりは自然と笑みをこぼしていた。
「なぁ、あたしたち友達にならないか」
「友達?」
「嫌か?」
ルーナは首を横に振った。
「じゃあ決まりだ」
ふたりは固く握手を交わした。
遠くでふたりを眺める影が三つあった。
「ときが来たわ」
「いよいよですな」
「・・・」
「さぁ、始めましょう」
その一言を合図に三人は消えた。