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『第十章 和解』

 ゼブルたちは“エリン”に来ていた。

「なんか大変なことになったみたいですね」

「まったくじゃ」

 ゼブルはトナティウにこれまでの経緯を話していた。

「ここがばれるのも時間の問題ですね」

「いや、やつはこの世界自体を滅ぼそうとしておる。どこに隠れても無駄じゃろう」

「・・・」

 ふたりの間に沈黙が訪れた。

「あのぅ」

 ふたりのもとにルナリアがやってきた。

「どうしたのだ?」

「あの、わたしたちのこと助けていただきありがとうございました」

 ルナリアは深々と頭を下げた。

「気にするでない。困った時はお互い助け合うものじゃ」

「そうですよ」

「でも、わたし・・・」

「あのときのこと気に病むことはない。それに今はもっと大きな問題があるからのう」

「今はともに問題の解決に取り組みましょう」

「はい」


 ルナリアはストレアのもとに来ていた。

「ルーナ?」

「ストレア、わたしどうしたら」

 それは今にも泣き出しそうな声だった。

「私、たくさんの人たちを殺して、いろんな人たちに迷惑かけて、なのにだれもわたしを攻めない」

「ルーナ・・・」

「赦してほしいなんて思ってない。ただ、わたし、は」

 ルナリアはストレアに抱きつき泣き始めた。

「うっ・・・くっ・・・・うぁぁあああああああん!」


 翌日、城内の会議室にみんなが集まっていた。

「身体は大丈夫か?ジブリール」

「平気よ。そんなことより私を縛らなくていいの?」

「妾たちはおぬしたちを赦すことにした」

「はぁ?なに言ってるの?」

「おぬしはナイアにだまされていた。悪いのは全部ナイアじゃ」

「でもやったのは私なのよ!それに、アヴァロンを支配しようとしていたのは事実なの」

「おぬしはアヴァロンの統一、そしてこの世界を救うためにあのようなことをしておったのだろう?」

「なにそれ?いつから私はそんないい人になったわけ?」

「お母さん・・・」

「もしそうだとしても、私のしたことは赦されることではないでしょう?」

「それはこれから先、償い続ければいいことじゃ」

「・・・」

「一緒に戦ってくれるな?」

「はぁ、いいわ手伝ってあげる」

「ありがとう」

「さて、では作戦会議といきましょうか」

「あんた、少しは空気読みなさいよ」

「すみません。ですが、時間がないもので」

「そうね、時間を取らせて悪かったわね」

「いえいえ。では始めましょう」


 作戦会議は夜中まで続いた。

「では作戦開始は一週間後、それまで各々準備をしっかりお願いしますね」

 それを最後にトナティウは退室、皆も解散した。



 アヴァロンに戻って来たルナリアたちはさっそく準備を始めた。

「それにしても一週間後なんて悠長なこと言って大丈夫なの?」

「やつはしばらくはあの場を離れることはできないらしいからの」

「あの島には対邪神用の罠を仕掛けておいたの。あれがなかったらどうなっていたかわからないわ。だから、私に感謝しなさい」

「だれが、そもそもクトゥルーとかいうやつをちゃんと封印してなかったあんたが悪いんじゃない」

「なによ、あんなやつにだまされて片棒担がされたやつに言われたくないわ」

「なんですって!」

「なによ?」

「ふたりともその辺にしておけ。今は争っている場合ではなかろう」

「「「・・・」」」

 ルナリア、ストレア、マリアの三人は完全に蚊帳の外だった。

「どうしよう・・・」

「ほっとけば」

「はぁ」

「なによ騒々しい」

 そこへエグゼリカがやってきた。

「エグゼリカ」

「これ、父さんの剣」

「え?」

「あんたに必要だと思って持ってきたわ」

「ありがとう」

「ところでこれからどうするの?」

「あたしとルーナはこのあとヘリオポリスに行って修行してくる」

「そう、まぁがんばりなさい」

「うん」

「ルーナ、ストレアちょっといいかの?」

「どうしたんですか?」

「ふむ、実はルーナの記憶を戻してやることになっての」

「え?」

「私の記憶?」

「そうよ。あなたの記憶を”全部”、ね」

「全部?」

「うむ、小さい時の記憶も含めての」

「そんなことできるんですか?」

「あなたの記憶を封印したのはこの私よ。戻すことぐらいたやすいわ」

「そのかわり膨大な量の情報を処理せねばならん。おぬし自身どうなるか・・・」

「かまいません」

「ルーナ・・・」

「私は、ずっと自分がなにものなのか知りたかった」

「ほんとにいいの?」

「うん」

「わかったわ」

 そういうとジブリールはルナリアの額にふれた

「いくわよ」

「・・・」

 ルナリアは無言でうなずいた。

「うっ」

「ルーナ!」

 ルナリアはその場に崩れ落ちた。

「ルーナ!どうしたの!」

「大丈夫よ。気を失っているだけ」

「よかった」

 しばらくして、ルナリアの意識が戻った。

「うっ・・・ん・・・」

「ルーナ!」

「ストレア・・・?」

「大丈夫?ルーナ」

「うん」

「ルーナ?」

「全部思い出したよ。そっか、私は”ルナ”なんだ」

「・・・」

「安心して私はこれからも“ルーナ”だよ」

「うん!」

 ふたりは初めて出会ったときのように固く握手を交わした。



 翌日、ルーナとストレアはヘリオポリスで修行を開始した。

「はぁ、はぁ、はぁ」

「はぁ、はぁ、もう、無理・・・」

「なにを言っているのですか。この程度で根を上げていてはあの怪物には勝てませんよ」

「そんなこと、言ったって」

「さすがに、きついです」

「仕方ないですね。一度休憩にしましょう」

「「はい」」


「ふたりの調子はどうじゃ?」

「初日にしては上々ですね。ふたりともすでに十分な訓練は受けていますし。ただ・・・」

「ただ、なんじゃ」

「はい、短期間でふたりの潜在能力を引き出すのは難しいかと」

「ふむ、しかし時間操作ができるものはおらんしのう」

「どうしますか?」

「困ってるみたいだな」

「ダグダ、いたのですか」

「おう。ところでさっきの話なんだが、うちのところに適役がいるぜ」

「本当か!」

「ああ。必要かと思って連れてきたんだ」

 ダグダの後ろに控えていた女性が前に出て来た。

「初めまして、アリアンロッドと言います」

「こいつは時を司る神なんだ」

「協力してくれるのか?」

「はい。この事態を放っては置けませんから」

「感謝する。では、さっそくじゃがふたりのこと頼めるか?」

「はい」

「すまぬな」

「では、ではふたりのところに行ってきます」

 そう言ってアリアンロッドはふたりの方に歩きだした。


 ルーナとストレアは木陰で休んでいた。

「はぁ、初日であれはきつすぎだって」

「でも、あれぐらいやらないとあいつには勝てない」

「確かにそうかもしれない」

「そんなあなたたちに朗報です」

 いつの間にかふたりの後ろに見知らぬ女性がいた。

「初めまして、アリアンロッドです。あなたたちの修行のお手伝いにきました」

「どういうこと?」

「私は時を操ることができます。この力ならあなたたちの修行時間を延ばすことができます」

「本当ですか!」

「ええ。では休憩が終わりましたら声をおかけください」

「いえ、今すぐお願いします」

「あたしたちもっと強くなりたいんです」

「そうですか。わかりましたではさっそく」

 そう言ってアリアンロッドは魔法陣を展開した。

「私の塔へご案内します」

 アリアンロッドが指を鳴らすと三人は一瞬でその場から消えた。


 三人は“エリン”のある場所に転移して来た。

「ここは?」

「私の管理する塔、“カイル・アリアンロッド”です」

「ここで修行するんですか?」

「はい」

「師匠たちは来ないんですか?」

「来ますよ。ただ今日はこの方達が相手になります」

「「「初めまして!」」」

「モリガンです」

「マッハです」

「バズゥです」

「「「我ら戦女神ボドヴ!!」」」

 三人が各々違うポーズをとる。

「「・・・」」

「あ、あれ?」

「ちょっと、ふたりとも引いてるじゃない」

「おかしいなぁ」

「おかしいのはあんたの頭よ!」

「なんだよ、マッハだってノリノリだったじゃん!」

「ふたりとも喧嘩は・・・」

「「モリガンは黙ってて!」」

「うう・・・」

「いい加減にしなさい」

 アリアンロッドがふたりの頭を叩いた。

「「痛!」」

「まったく時間がないと言ったでしょう」

「「ごめんなさい・・・」」

「モリガンもちゃんとふたりの面倒を見ないとだめですよ」

「ごめんなさい」

 三人はいそいそと準備を始めた。

「申し訳ありません。なにせここに誰かが訪れるのは久々でして」

「そうなんですか?」

「はい。昔は“下界”の住人もよく訪れたのですが・・・」

 向こうからモリガンが走って来た。

「お話中失礼します」

「準備はできましたか?」

「はい。いつでも開始出来ます」

「わかりました。では、ふたりともこちらへ」

「「はい」」


 ルーナとストレアの目の前には武装した”ボドヴ”の三人がいた。

「いまからこの空間の時間の流れを速めます」

「速める?」

「そうです。今回は二十四分の一、つまりここでの一日は外では一時間になります」

「つまりここでは、えーと」

「一六八日、だいたい五ヶ月ぐらい」

「すごっ!やっぱルーナはすごいや」

「そ、そんなこと・・・」

「いちゃいちゃしてないで早く始めるよ」

「べ、べつにいちゃいちゃなんてしてません!」

「ルーナ、なんでそんなに顔赤いの?」

「な、なんでもない」

「そう?」

「もうよろしいですか?」

「あ、はい。大丈夫です」

「いつでもいけます!」

「では、はじめましょう」

「「はい!」」

 こうしてふたりの新しい修行が始まった。


 作戦開始まで残り六日

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