二通の招待状
此方は、『みんな欠けている』シリーズでメインの主役を務める鈴木薫視点の物語です。
『欠けている』http://ncode.syosetu.com/n6327p/(15,224文字の内容)を読まれた方が鈴木薫という女性の置かれている状況が理解出来、読みやすいかもしれません。
私は二枚の白い大きい封筒を前に溜息をつく。それは九月の第一週に挙げられる結婚式の招待状。
大切な親友二人からの招待状に溜息をついているのは、それが同じ日だったからでもなく、二人の幸せを嫉んでいるのではない。その結婚式は同じ週だけど片方が水曜日でもう片方は土曜日でどちらにも問題なく出席できるし、私は二人の幸せを何よりも願っている。私が溜息をついているのは二人からそれぞれ招待状が届いた事が示す意味である。
というのは、この二人は恋人同士だった。高校時代の私の横で、今時ドラマでもそこまで見ている人をヤキモキさせないだろうという感じの恋愛を展開していた。それを楽しみつつ、最後には見てられなくて両方の背中を押して言わば自分がキューピットとして盛り上げたカップルだった。
私からみて、お似合い過ぎる、元々セットになるために生まれたとしか思えない二人だったので、二人が別れたという事はかなりの衝撃だった。でも二人が再び顔を合わせさえすれば、すぐに関係を修復して元に戻ってくれると信じていた。
しかし二人は違うパートナーと人生を歩む事を決め歩き出した。私はもうそれを応援するしかない。もう何も言うまい、私が出来る事は二人それぞれの結婚を祝って幸せを祈るだけだ。
私はかなり奮発して二人の結婚式に着ていくドレスを選び、九月の一週目の水曜日、いつもよりも念入りに化粧をしてまずは星野秀明の結婚式に出席するために岩手へと旅発った。