番外編③
その方に御逢いしたのは一年前だった。
白銀色の髪。
深緑色の瞳。
その肌は透けるように白く。
その唇は赤く。
愛らしい顔立ちは、宛らブランシュネージュのようで。
「あなたが毒を作り出してくれた人?」
……一年前。
孫を囚われ、否応なしに手伝わされた。
それが殿下の命を奪うものとは知らずに。
―――いや。
知っていても作っていただろう。
可愛い孫を取り返すために。
陰謀は明らかになり私は捉えられた。
警備隊が到着したとき孫はすでに死んでいたと、知らされた。
もう、何も考えたくはなかった。
「何か言うことはあるか」
殿下の傍らにいるのはブリーゼ卿……。
私の作り出した恐ろしいものを無毒化させたという。
この方がいるのならば大丈夫だろう。
「いいえ。いまは、ただ、死を賜りますことを願っております」
これが最後の願い。
「い・や」
は?
私は緊張しているに違いない。
だからありえもしない幻聴が聞こえてくるわけで。
「い・や」
「好きにしていいって言ったよね?」
「……御意」
「じゃあ、この人、僕のにする」
「は?」
「僕のそばでお仕事してもらう」
「……殿下?」
「ん~。ぼくの、忠実な下僕という事にする♪」
微かに「殿下、それは…」や「法務省が……」などが聞こえてくる。
聞こえては、くるが。
最終的に。
殿下はカーティス・エセルギア・D・ファレルを如何するのか押し通された。
そして。
ハロルド・K・ウィラウス・ヴァイセェスリヒト皇太子殿下は忠実な下僕を
一人手に入れました。
カート視点の出会い編。
この後ジークと意気投合します(主に薬学方面で)