番外編②
……はぁ。
全く少しも落ち着きがない。
あちらを見たかと思えばすぐ別のものを見る。
それも、殆ど食べ物ばかりだ。
串焼きなど買ってどこで食べようと思っておいでなのやら。
昼食は人の2倍はお食べになられて筈なのだが……。
成長期とはいえ、自分はあれほど食べていなかったはず……。
ああ。
今度は飾り飴に気が付かれたらしい。
どんなに綺麗でも所詮飴……砂糖などの固まりだというのに。
……仕方ない。
後で宿の方で飴を手配するか。
2年前。
毒を服用していた殿下は急に倒れ、もう少しでお亡くなりになる所だった。
皇帝からの連絡を受け駆けつけたときは体を動かすどころか、自分の意思を
表示することもままならないほどだったというのに。
どんな馬鹿が毒なんぞ毎日飲んでいたのかと思っていたら。(なにしろ皇帝が
あいつだからな)
1年間の回復期間にかなりの努力をして、今では殆ど副作用は見られない。
かなりの努力家だ。
それに、僅か12歳になったばかりだというのに積極的に政務に参加しよう
とする姿勢はすばらしい。
やつに爪の垢をせんじて飲めといいたい。
……現在は一部とはいえ、宰相と俺の確認を受けながら、だが、重要な政務を
行うようになってきている。
いくつかの法令やアイデアなどは大人も舌を巻くほどだ。
将来が楽しみだと、若干頬が緩みそうになるが。
次の瞬間殿下の見ている物を見て、再び頭が痛くなった。
―――頼みますから、 一国の皇太子殿下が“ワームリァ(大蛇)の蒲焼”なん
か食べようとしないで下さい。
まったく。
市場にいる間気が抜けない。
早く宿に着かねば……。
思わず歩く速度を進めるのだった。
市場でのジーク視点です。
変なものを食べないように気を張っています。