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番外編①

 その男を始めて見た時。

 大きく振り回した耳と尻尾が見えました。

 ……いえ。

 幻ですけれども。


 そうして。

 あっけに取られている間に思いっきり抱きしめられてしまって。

 すでに四半刻は過ぎたと思う。

 「可哀想に、ハル。あんな奴に預けるしかなかった俺を恨んでいるか??」

 ぎゅむぎゅむぎゅむ……。

 苦しい。

 だけど力を緩めることはなく。

 「早くいつもの宮で過ごしたいだろ?今用意させるからな?」

 ぎゅー……。

 ……暑い。

 痛い。

 苦しい。

 この馬鹿力はどうにかならないものか。

 「此処にこなかったから起こっているのか?だが、あいつ等が駄目だと言い

 張って……あぁ、こんなことならもっと早く来るべきだった」

 ……。

 「……何をしている」

 低い……地を這うような重低音の声。

 今は天使に見えるよ、ジークフリート。

 「ハルに会いにきたに決まっている」

 ぎゅぎゅぎゅ~……。

 さらに抱きしめられ……。

 もう少しでお花畑が見えそうです。

 一度もあったことはないおとーさんとおかーさんが手を振っているような気

 がします。

 「私は、何をしているのか、と聞いているんだ。阿呆」

 ……こんなジークフリートは見たことなかった。

 眉間に皺がこれでもかと寄っている。

 隙があれば相手を殺すかのような激しい、視線。

 「何だと?大体、お前がハルをこんな眼に……」

 「馬鹿だ、馬鹿だ、とは思っていたが……。お前は私の言ったことが全く頭

 に入っていないらしいな?」

 「……はん!誰がお前の言うことに耳を貸すかっ」

 「……ほぅ?私があれほど言ったことがまだ判らないのか?いや、馬鹿だか

 ら分からなくても仕方ないのかもしれないがな?もう一度言っておくが、ハ

 ル様が飲まされておいでだった毒は複雑なもので、その解毒には時間がかか

 るといったはずだ。安静が必要なことも」

 「……ぐっ」

 「解毒薬も一歩間違えれば猛毒になるほど強力なもので、特に光は厳禁だと

 も言ったな?」

 「……ぅぅ……」

 あ、犬耳と尻尾がしな垂れてきましたよ。

 「一時的に体に麻痺の症状が出るが、完全に解毒できるまでは飲み続けなけ

 ればいけないことも、だ」

 「……」

 「言ったな?」

 「……ぁぁ」

 「犯人が見つかるまでは安全のために離宮で過ごしていただくことも、犯人

 を油断させるために敢えて接触できるのは最低人数にすることも……。何か

 あればすぐに知らせるから大人しく囮として政務をしっかりこなせとも言っ

 たはずだ!」

 「……ぁぁ」

 抱き抱える男の尻尾が見る間に垂れ下がっていく。

 「……」

 「だいたい、きちんと政敵を把握し切れなかったお前がそもそもの原因だろ

 うが!違うか、シリル皇帝陛下」

 あ。

 あは。

 あははははははっ。

 やっぱりおじさんでしたか。

 非常識振りがよく分かりました。

 ……でも、まぁ。

 そろそろ助け舟を出さないとね。

 「……ぃー」

 「……如何なさいました?我が君」

 「…ぅ…ぁれた……(疲れた)」

 ジークが振り返って。

 「……少しお休みなさいますか?」

 苦しそうにしていたから。

 うろたえたんだろうね?

 多分。

 シリル叔父さんは……思いっきり私を抱きしめてくれたのだった。

 「だ、だ、だ、大丈夫か、ハル」

 「ぅー」

 「……いい加減、放せ。殿下が苦しがっている」

 「……ぁ……」

 半刻近く抱きしめられたままだった私は。

 最後に加わった力に耐えられず、再び意識を手放すことになったのだった。


 【教訓】何事も程々がいいという事。



シリル皇帝陛下の属性は犬です(笑)

本編に入れると話がいつまでも始まらない(序章が長くなって)ので

こちらにいれました。

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