妹なりの励まし方
「ごめん、好きな人ができたの」
木枯らしの吹く日、高校に入ってできた彼女から、そう言われた。
つまり、僕はたった今、フラれたのだ。
彼女が帰った後も、僕は公園で立ち尽くしていた。
それから、どうやって家に帰ったのかは覚えていない。
幸い、僕の高校は今日から秋休み。
学校に行かなくていいのはうれしかったが、それ以上に彼女に会わなくていいことに、僕はほっとしたんだ。
だから、休みの間は、部屋にひきこもっていたよ。
ある日、いつも通り部屋にひきこもっていたら、ドアがノックされた。
「お兄ちゃん、いつまで部屋にいるつもり?」
聞こえたのは、妹の声だった。
返事も面倒くさいから、無視しとこう。
僕が黙っていると、再び話しかけられる。
「ずっと部屋にいたら、体に悪いよ」
「お前には、関係ないだろ」
「……」
言い返したら、返答はなかった。
もしかして、あきらめたのか?
すると、少し間があって、また声が聞こえた。
「お兄ちゃんがいいなら、別にいいけど……見てほしい物があるの」
「じゃぁ、気が向いたら見るよ」
「ダメ、今見てほしいの」
なんだ、今日はやけに頑張るな。
僕はしかたなく、ドアを開けた。
「やっと出てきた」
妹は呆れつつ、一枚の紙を渡してきた。
「部活の課題で描いたから、お兄ちゃんの感想を聞かせて」
「描いたって……僕、絵とかあまりわからないんだけど」
「いいから」
中学生の妹は、美術部に入っている。
だからって、なんで僕に聞くんだよ。
僕はため息をついて、紙を広げた。
「えっ……」
その絵は、色鉛筆で描かれていた。
だけど、僕は描いてる物に驚いたんだよ。
だって、紙に描かれていたのは、僕の絵だったんだ。
しかも、満面の笑顔なんだけど。
そして、端っこに小さく文字が書かれていた。
『負けるな!』
僕は、思わず泣きそうになった。
「それで、感想は?」
「……とても、よく描けてると思う」
「そっか、ありがとう!」
僕は、泣き顔を見られたくなくて、俯いていた。
そしたら、妹はこう言ったよ。
「それ、お兄ちゃんにあげる」
「えっ?」
顔を上げた時には、妹は自分の部屋に行っていた。
もしかしたら、妹なりの励ましだったのかもしれない。
でも、久しぶりにあたたかい気持ちになった。
「僕、あいつの前でこんな顔してたんだ」
僕の口元は、無意識に緩んでいた。
久しぶりに、笑えた気がする。
これも、妹のおかげかな。
「今度、好きな所にでも連れていってやるか」
今から、一緒に出かけるのが、楽しみだ。
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