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年金より金になる!? 異世界転生した爺婆が最強だった件

作者: よつ葉あき


「……うわ、マジか。来ちゃった……?」


 目を覚ますと、そこは一面の草原だった。

 青空と心地よい風……気持ちいいけど、明らかに現実じゃない。

 まるでRPGの舞台みたいに、やたら作り込まれたファンタジー世界。


 中学二年生の俺──勇人(ゆうと)は、一瞬で悟った。


「ああ、あのトラックに突っ込まれた時点で、もう《これ》しかないよな……」


 さっきまで、じいちゃんが運転する軽自動車に、ばあちゃんと俺の三人で乗ってたんだ。

 のどかなドライブ日和……のはずだった。


 けど突然、猛スピードのトラックが突っ込んできて──そのまま崖から真っ逆さま。


 ──で、気がついたらこの草原だ。


 いくら田舎でも、こんな建物ゼロの大草原なんて、現実にはそうそうない。


 暴走トラック+知らない世界。


 これはもう──


「異世界転生ってやつだろ!?」


 と叫んだ瞬間、目の前がまばゆく光った。


 現れたのは、キラッキラのドレスを着た絶世の美女。

 いかにも「女神です!」って感じの存在。


「ごめんね~! 本当は死ぬ予定じゃなかったのに、うっかり三人とも殺しちゃった☆ てへぺろ♪」


「てへぺろじゃねえよ!!」


 即ツッコミ。だが「うっかりで死ぬ」は異世界転生モノあるあるだ。


 ただ、引っかかるワードがあった。


「……“三人とも”って、まさか……」


「そう! じいちゃんとばあちゃんも一緒に転生済み! 安心してねっ☆」


 いや、安心できるか!


 バチンッとウインクを決めつつ、女神はさらにお約束ムーブを続けてくる。


「うっかりのお詫びとして、スキルをふたつプレゼント! 好きなのを選んでいいわよ♪」


 きた! 異世界転生の醍醐味!


 悩んだ末、俺はこう答えた──


 女神が祈るようなポーズを取ると、光が俺の体に注ぎ込まれる。


「はい、“解析眼アナライズ・アイ”と“生活魔法ライフ・マジック”、確かに付与完了♪

 どちらも工夫次第で超便利よ!」


「ふっふっふ、そうだろ? ありがとな、女神!」


 普通なら剣術とか魔法とか、戦闘系スキルを選ぶんだろうけど、俺は違う。

 俺は異世界転生を知り尽くした、中二病まっさかりの中学2年生だ。


 お決まりの「アイテムボックス」と「異世界語翻訳」がデフォでついてるのも、地味にありがたい。


「じゃ、がんばってね~! じいちゃんとばあちゃんも、たぶん今ごろどこかで無双してるわよ♪」


「……む、無双?」


 また気になる言葉を残して、女神はフェードアウトしていった。


 ──こうして、俺の異世界ライフが始まった。



 * * *



 名を“ユート”と変えた俺は、最初の村にたどり着いた。


 情報収集を始めたものの、じいちゃんとばあちゃんの行方はさっぱりわからない。


 そんなある日、街の掲示板に貼られていた冒険者の目撃情報が目に飛び込んできた。


 > 『黄金の拳を振るう金髪の青年と、希少な回復魔法を操る黒髪の妖艶な美女のペア、山賊のアジトを壊滅。

 本人たちは「年金より金になる」と言い残し、立ち去った模様』




 ……え、もしかして?


“金髪の青年”と“妖艶な美女”って誰だよ、と思いつつ、

“年金”ってワードが俺の心をざわつかせた。


 急いで、そのアジトがあった街を目指した──。



 * * *



 そして数日後。


 ついに、ふたりと再会を果たした。


「よお、ユート! 元気してたか!」


 現れたのは、金髪碧眼で筋骨隆々のイケメンと、黒髪ロングで艶やかな美女。


 ……いや、待て。この話し方、動き方……中身、絶対うちのじいちゃんとばあちゃん!


「いや〜、この世界は腰も痛くないし、老眼もなくて快適だわぁ」


「よくわからんが、ドラゴンはぶん殴ったら吹っ飛んでったぞ」


 絶句。


「え、ドラゴンって魔法しか効かないんじゃないの……?」


「考えるより殴ったほうが早いぞ。おまえも筋トレしなさい」


「時代はフィジカルだ」


「災害級モンスターを素手で倒すとか、聞いたことないんだけど!?」


 そもそもこのふたり、元の世界じゃスマホすらまともに使えなかった。

 ゲームも漫画も知らずに、筋肉と人生経験だけで異世界無双って……なに者だよ!


「……てか、なんで若返ってるの? それにじいちゃん、金髪碧眼って……?」


「女神ちゃんが言ったんだ。“若い体じゃないと異世界じゃ生き残れないでしょ?”ってな。

 で、せっかくだから婆さんの推し俳優に似せてもらった。たしか名前が……レイモンド・デカブリオ?」


「ディカプリオな……」


「ふふふ、ほんとレイ様みたいで素敵よねぇ」


 頭を抱える俺をよそに、幸せそうなばあちゃん。


 ──そして、


「というわけで、三人でパーティ組もうぜ!」


「おやつは三時、夜八時には寝たいわね」


「そこだけ生活スタイル変わらんのかよ!!」


 でも、悪くない。


 じいちゃんとばあちゃんと、異世界で冒険する日々──案外、最高かもしれない。



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