表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

短編のお部屋

夕暮れ時に5円玉を握りしめて

「夕暮れ時に5円玉をあの公衆電話に入れると神様と話ができるらしい。」


最近よく聞く噂だが、私は嘘だなと思った。


公衆電話は10円玉か100円玉、またはテレホンカードしか入らない。

5円玉では電話はできない。

それに神様って誰なの?


私は噂を信じなかった。

そもそも、あの公衆電話ってどこの公衆電話なのかわからないし。


時間が経つと噂は少し変わっていた。

「夕方5時に5円をあの公衆電話に入れて、5のボタンを押すと死者と話ができるらしい。」


やたら5が多いな。


人にかかわる数字としては、確かに5が最適なのかもしれない。


人間の感覚は五感。

人間の味覚は五味。

人間の身体を表す言葉にも5は使われていて、五臓とか五体とか。

手の指も片手なら5本。

足の指も片足なら5本。


5について暫く考え、少しだけこの噂考えた人面白いなと思った。


そして、私は面白半分で夏休みに入る前に、友達にこの噂のことを話した。

流行りものが大好きな友達は噂の公衆電話に行ってみたいと言っていた。


本当に行ったのかはわからない。


ただ夏休みが終わったら、友達は学校からいなくなっていた。

出席確認で先生は友達の名前を呼ばなかった。

そして、そこにあるはずの友達の机と椅子がなかった。

まるでもともと存在していなかったように。


私は記憶を辿った。

友達に最後に会ったのは夏休み前。


友達と愛犬ココの散歩をしたことを思い出した。

夕方なのにとても暑くて公園で休憩し、あの噂の話をした…


急に心臓の音がうるさくなる。


夏休みの終わり頃、散歩中に脱走したココが車に轢かれ亡くなったと友達から電話がきた。

泣きながらずっと喋っていて、聞き取りづらかったがココに会いたい、公衆電話に行くと言っていた気がする。


あの噂を信じたの?

ココの声を聞きに行ったの?


学校が終わり、私は無意識に友達の家に来ていた。

身体中、汗が止まらない。


あれ?

何かおかしい。

少しずつ違和感は広がる。


玄関の呼び鈴を鳴らす。

大丈夫、友達が出てきてくれる。きっと。

心臓のドキドキが止まらない。


「あなた誰?」と出てきたのは友達のお母さんだった。

「私は…〇〇ちゃんの友達で、あれ?えっと、ワンちゃん、ココ…」


どうしてだろう、友達の名前が思い出せない。

あれ?私はなぜここにいるのだろう。


何をしにきたのか自分でもわからなくなってしまい、私はその場を逃げるように走って去った。


犬のココのことは思い出せるのに、何か大切なことが思い出せない気がするのだ。


そして、無性に気になることがある。

あの公衆電話。

どうしてもそこに行きたい。

いや、行かなくちゃいけない。


誰かが私を呼んでいる。


その日私は、夕暮れ時に5円玉を握りしめて、犬のココと来たことがある公園に行った。

公園の端には目立たないようにひっそりと佇む公衆電話があった。


私はその公衆電話に向かった。




その後、噂はまた少し変わったらしい。

「黄昏時に5円玉を握りしめ、あの公衆電話に行くとこの世から消えるらしい。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ