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社交パーティー

「ごきげんよう、陛下」

「ごきげんよう、陛下」

「ごきげんよう、陛下」


 以下、47名。挨拶を済ませると、陛下は「仕事がある」と言って帰っていった。本当に顔を出しただけである。私が会わせたかった王都に住む令嬢50名に、どう対応すべきか悩み、困り果てていた。まずは、陛下の良さをさりげなくアピールするか──いや、逆に仲の良さをアピールしていると思われても困るな。


 今回は着席スタイルのパーティーにしたため、私の座る席からは令嬢たちが見渡せた。私が考えに耽っていると、隣にいた令嬢が話を切り出した。


「あのっ、私、クレアトール伯爵家のマリアンヌと申します。この度は、ご招待いただき誠にありがとうございます。その、ぶしつけで失礼ですが、シャルロット様は噂に聞くより随分と可愛らしく──いえ、お綺麗で驚いてしまいました。陛下とは、どのような経緯でご婚約を?」


 私は陛下から聞いていた話をそのまま話した。父の意向で婚約になったため、本意ではなかったこと。宮廷魔術師として護衛をすることになったこと等を説明した。


「まあ、では──出会ってから、お二人は恋に落ちたのですね」


(いや、待って欲しい。どこをどうしたら、そんな話になるのか……)


「いえ、政略結婚みたいなものです。ですので、陛下は今後、気が変わるかもしれません」


「まあ、そんな……」

「そんなことはありませんわ」

「陛下は真面目な方なので、大丈夫ですわ」


 令嬢方は、私を慰めるように声を掛けてくれた。いや、そうではないのだ。陛下の良いところをアピールしなくては。


「陛下は素晴らしい方なのですが、恋愛には興味が無いらしいのです。子供っぽいところもありますが、真面目で一途な性格だと思うのです」


 私が一息にそう言うと、令嬢たちは何故か一瞬にして固まっていた。


「まあまあ、陛下は恋に不器用なのね……」

「シャルロット様には、子供っぽく甘えることもあるんですね」

「陛下は朴念仁?」


 最後の一言は、よく分からなかったが、私が無害そうな人物だと悟ったのか、令嬢たちの私に対する『がんばれエール』は、時間を追うごとに激しさを増していった。


 見た目が14才の16才と、見た目が12才の20才は微笑ましい恋人同士にでも見えるのだろうか……。私は年頃のお姉さまたちに挟まれて、きわどい質問も受けていた。


「陛下の裸をご覧になったことは?」


 私は先日の1件を思い出し、赤面してしまっていた。あれは不可効力である。見たくて見た訳ではない。


「あらあら、まあまあ……」


 幼い子供を見るような視線に、私はいたたまれなくなっていた。顔に熱が集まるのを感じて、俯いてしまう。


「お嬢様方、そろそろお開きのお時間です」


「あら、まあ大変!! もう、こんな時間だわ」


 侯爵邸からヘルプで来ていたセバスが見かねたのか、令嬢たちに帰るよう促してくれていた。私を見て頷いている。


「本日はお招きいただき、ありがとうございました」


「皆さん、今日は来てくださって、ありがとうございます。今後とも、陛下をよろしくお願い致します」


「ありがとうございます」

「楽しかったわ」

「また呼んでくださいね」


 令嬢たちは楽しかったのか、お礼を言いながら帰って行った。見送りから城の中へ戻る途中、セバスがこっそりと私に耳打ちした。


「今日お招きした令嬢たちには、既に婚約者の方がいらっしゃいます。おそらくは王妃派の派閥に(くみ)したい者たちの集まりかと」


 私が驚いていると、セバスは流し目でこちらを見ながらウインクをしていた。


(やられた──アンドレに謀られたのね)


 今日の招待客リストは、アンドレが薦めてくれた人を中心に作っていたのだ。私に友好的な人物が多かったのも、そのせいなのだろう。


(これからどうするべきか、考える必要がありそうね)




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