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解呪薬以外の解呪法

 気がつくと、私は王都の裏路地へ立っていた。城へ戻ろうと思って、裏道を歩いていると、目の前にある建物からローブを着た少年が出てきた──陛下に、よく似ている。


「……陛下?」


「おまっ──何で、ここに?」


 思わず声を掛けてしまったが、その少年は陛下本人だった。慌てている様子に違和感を覚えながらも、私は陛下に近づいた。


「陛下こそ、朝から何コソコソやってるんですか? 娼館ですよね、ここ」


「こんなところで、陛下って呼ぶな!!」


「では、なんとお呼びすれば?」


「私の事は『ジーク』と呼んでくれ」


「ジーク様?」


「何だ?」


「娼館で、何をしていたのですか?」


「城に勤めている者が、娼館で不自然な亡くなり方をしてな。調べていたんだ」


「こんな時間に?」


「こんな時間じゃなきゃ、聞けない」


(もしかして、本当は気になる子に会いに来てたりして?!)


「分かりました。このことは他言無用ですね」


 私が感情を抑えながら言うと、何故か陛下は焦っていた。


「いや、だから、こんな姿なんだから誰も相手なんか、しないだろう?」


「ジーク様。お言葉ですが、世の中には──いろんな人が、いるんですよ」


「そうだな──って、違う!! そうじゃない!! 私は心の通った、普通の付き合いをしたいと思っている」


「そうですよね。言い過ぎでした。すみません」


「いや、いい。それより、こんなところに居たら危険だ。この先にアンドレが待っている。急いで合流しよう」


 陛下は私の手を掴むと、裏路地を走って行った。陛下に連れられて走っていたが、私には魔術があるのだ。『暴虐の魔女』と呼ばれるだけの魔術が──女性扱いされていることにむず痒さを感じながらも、アンドレと合流すると、一緒に城へ戻ったのだった。



*****



 城へ戻ると、陛下は婚約破棄についての誓約書を書いてくれた。短期間での婚約破棄について不思議に思いながらも、話は森に住む東の魔術師へと移っていた。


「それで? 東の魔術師には会えたのか?」


「はい。魔術学園の先生でした」


「はぁ?」


「いや、だから先生──師匠です」


「意味は分かる。シャルロット、お前が私に呪いを掛けるよう、先生に頼んだのか?」


「まさか?! それなら、わざわざ会いに行く必要もありません。先生は、私の話の内容を少し誤解していて、陛下に呪いを掛けたようです。月の光を浴びることによって、身体が元の姿に戻るのは、月の光苔に解呪薬の成分が含まれていて、解呪薬を飲んだ状態に近づくから──だそうです」


 ガルシア先生は私の話について、1ミリも誤解していなかったと思うが、生徒の事を思って復讐したのであれば、やり過ぎという気もしていた。そのことを上手く説明できずに、私は曖昧に微笑んだ。


「それで、解呪薬の作り方は……」


「今は材料自体が無いらしく、作れないらしいんです」


「はぁ??」


「でも、解呪する方法は他にもあるそうで……」


「どんな方法なんだ?」


「それが……」


「もう、これ以上、何があっても驚かない。正直に言ってくれ」


「その、本当に好きな相手──真実の愛が見つかれば、呪いは解けるそうです」


「何なんだ、その呪いは?」


 陛下は驚きを通り越して呆れたのか、天を仰いでいた。




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