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ユグドラ学園

 次の日の朝早くに、メリーは私を連れて、ソレイユ村の端にある魔術養成学校『ユグドラ学園』に到着した。メリーは一礼すると、「シャルロットお嬢様、頑張ってください」と一言だけ言って、自分の家へ帰って行った。


(え? ここが───最果ての地?)


 目の前には大きな学校が建っており、門の手前には大きな木が門の半分を隠すようにそびえ立っていた。そう言えば、メリーはこの木の事を『精霊樹』と呼んでいたっけ。


 突っ立っていても仕方がないと思い、私は学園の中へ入ろうとした。けれど、10歩も歩かないうちに『見えない壁』に阻まれてしまう。


(ん? 何これ? 中に入れないの?)


 立ち止まって学校を見上げていると、隣にある『精霊樹』が光り、空中に小さな光の粒が舞い始めた。


『見ない顔ね──名前は?』


 どこからともなく聞こえて来た声は、頭の中に響くように聞こえていた。


「シャルロット──シャルロット・モルトローズよ」


『ああ、入学希望の。私が出した手紙の返事は、まだ来てなかったハズだけど……』


「いろいろと事情があって、返事を書く前に家を出なければならなかったのです。あの、直接会って話を聞いてもらうことは出来ませんか?」


『分かったわ、結界を一時的に解除するから、入って来なさい』


 声が途絶えると、光は消えて元の状態に戻っていた。その時になって唐突に思い出していた。前世の記憶──自分が、日本という国で『山本いずみ』として生きていた記憶を。


「うっ……」


 急に思い出したせいか、頭痛がして目の前がグルグル回って見えていた。意識を保とうとして、朝だというのに周囲を暗くしている曇り空を、必死に見つめていた。


(何で、こんな時に思い出すのよ……)


 前世では、大手商社に勤めるOLだった私は、好きな漫画を読むことだけが生きがいだった。好きな漫画の発売日に本屋へ自転車で向かって、その途中でトラックに撥ねられてしまった──そこからの記憶がないから、おそらくは『山本いずみ』としての人生は、そこまでだったのだろう。


 後ろから急に強い風が吹いてきて、思わず半歩踏み出してしまう。


(さっきの人の仕業なのかしら?)


 私は学園の重い鉄扉を押すと、中へ入って校舎までの長い道のりを歩いていったのだった。




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