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長期戦

 2週間経っても、魔物の数は減らなかった。それどころか、食料調達が間に合わなくて食料が尽きかけていた。


「先生、精霊達が……」


「これだけ森が燃えたんだ。力を貸したくなくなるかもね」


 魔物を倒す際に炎を使っていたせいか、森の半分が焼けていた。森が焼けることに対して不満があるのか分からないが、精霊達の助力は借りることが出来ず、精霊達への祈りも無効な状態が続いていた。


「森が──森が燃えなければいいんですよね?!」


「シャルロット?!」


「やってみます……。木よ森よ、我らの祈りは汝の祈り、我らの願いは汝の願い──ウォールバリケード!!」


 魔物の軍勢が向かってくる最中、木々が呼応して森の入り口に巨大なバリケードが出来上がった。背の高い柵が張り巡らされた形になり、魔物の集団はこちら側へ来られない様である。


「ふっ──シャルロット、やり過ぎだ」


 ガルシア先生は笑いながら、私の後ろを見ていた。後ろを振り返ると、青筋を立てたギルド長がそこには立っていた。


「嬢ちゃん、そう言うのは俺に、ひと言相談してからにしてくれるか?」


「ひっ──すみません!!」


 私達の様子に気がついた若い冒険者が1人、こちらへ駆けてきた。


「ギルド長!! 俺は東の川付近へ行ってきます。誰か西方面へ向かわせてください」


「ああ、すまない」


「ギルマス、これは案外いけるかもしれませんよ? あんまり怒らないであげてくださいね」


 冒険者は、私達にウインクすると走り去っていった。


「おい、西へ!! 西へ誰か向かえ!!」


 魔物は柵に体当たりしていたが、どうやら左右に分散して、策の途切れる右端と左端から、こちら側へ向かってくるようになったようだ。


「ギルマス、良かったじゃないですか。これで少しは休めますよ」


「まあ、結果的には──だがな。嬢ちゃん、さっきも言ったが、これからはこういうことをする前に、相談するように」


 ギルド長は、私を横目で睨むと頭に手を置き、私の髪をクシャクシャになるまで撫でていた。


「す、すみません。あの──皆さんは左右に別れて、戦っているのですか?」


「ああ。東側の柵の切れ目の先には、太い川が流れているから、右からの魔物は柵に阻まれて少しずつしか入って来れない。対する西側にも、崖があって同じように少しずつしか、魔物がこちらへやって来られないようになった──と思う」


「で、私達は休める訳」


「いや、長期戦覚悟でいこう。少ししたら真ん中にも穴を空ける……。嬢ちゃん、出来るか」


「大丈夫です」


「まだ続けるか~正直、私は魔力がスッカラカンになりそうなんだ。応援は来ないのか?」


「分からん。もうそろそろ来ても、いい頃なんだが──ほらよっ」


「えっ?!」


 ギルド長がガルシア先生へ向けて、何か小瓶のような物を投げていた。ガルシア先生は瓶のラベルを見て、『信じられない』という顔をしている。


「ハイポーション?? ギルド長が飲むつもりだったの? 魔術、使えたんだね」


「少しだけだ。何があるか分からなかったからな。一応、持ってきたんだ」


「ありがとう。これであと2週間は戦える」


「そりゃ、良かった」


「ギルド長!! フォース国から応援が来ました。食料支援もあるようです」


 駆けつけた冒険者から報告があったのは、自国からの応援兵士ではなく、他国兵士の到着であった。




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