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卒業試験

 その後、真面目に授業を受けながら、これからどうするべきかを、ずっと考えていた。


(一度、国へ帰って両親から、あの時の話を聞いてみたい)


 そう思えるようになったのは、学園を卒業する1ヵ月前になってからだった。卒業試験も間近にな迫ってから、私は両親へ手紙を書いた。


 卒業試験は、自分が今まで習った魔術や魔術具を発表する試験だった。内容は自由で、空にいろんな魔術塊をアートのように描くものもいれば、魔術薬の研究発表など、次々と新しい魔術や魔術具が発表されていった。


 私は空気を圧縮した魔力を込められる小さな船の形をした魔術具を見せて、実際にそれを使って飛んで見せた。先生達からは、「この魔術具は、あなたみたいに膨大な魔力量がないと使えませんね」と批判的だったが、「研究者としての着眼点は素晴らしいです」と褒めてくれた人がいて、無事に試験に合格することが出来た。


「メリー……」


 私はソレイユ村の墓石の前で卒業証書を見せていた。今年の冬にソレイユ村に戻った時は、メリーはすっかりおばあちゃんになっていたが、まだまだ元気だった。しかし、卒業試験が行われる3日前くらい前に、メリーが亡くなっていたことを聞かされた。


 私はメリーに卒業の報告を済ませると、村長に挨拶をして村を出た。両親へ出した手紙の返事が返って来たのだ。ただ本人からではなく、執事からの手紙だった。私の父親であるモルトローズ伯爵は亡くなっていたが、母はまだ生きていた。国外追放の件は、恩赦が出たので一度会いに来てほしいという。


 私は再び迷っていた。学園でガルシア先生の助手をすることに、だいぶ前に心の内で決めていたのだ。ただ、結界の外の時間の流れは早い──私が迷っているうちに、母も失ってしまう可能性は高かった。


 私はガルシア先生の弟子入りを断ると、セスノット国へ向かった。先生は「いつでも待っている」と言っていたが、どうなるか全く見当がつかなかったため「戻ってきます」とも言えなかった。


 私にとっては1年半の学園生活だったが、あれから38年の時が過ぎていた。正直言って、結界の外側がどれくらい変わっているのか、国に帰るのも怖かった。




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