雨の日曜日に
――俺は、雨の降る日曜日が好きだった。
家族との外出が鬱陶しかったわけではない。しかし日中、合法的に家にいられるという事実がわかった時、家族との朝食は俄然、心躍るものとなった。
当時はテレビゲームを自由にさせてもらえなかったし、晴れの日曜日には「外に出なさい」がつきものだったから、尚更その特別感は大きかった。
家族と一緒にテレビゲームをすれば、母親が飽きるまで無制限にゲームができるから。
「……なーんて」
今となっては懐かしい記憶だ。
十年以上も経つのに、その感覚はいまだに残っていて、今でもこうして雨に心躍らせている自分がいる。
外に出ないと嫌な顔をする両親とは離れ、朝食は一人で食べ、ゲームも好き放題できるようになったし、ゲームのハードも変わって解像度は10倍になった。
こうして1日を棒に振る自分を咎める者も、いなくなった。
「懐かしいなぁ」
今では、去年までの”自由”な生活を絶えず懐古している自分だけが残っている。
「……そんなこともないかなぁ」
手慰みに弄っていたスマホが、"6年前のこの日”を教えてくれた。
不器用な笑みと、微妙に残っている寝癖。その隣に立つ、にこやかな笑み。
ふふっ、と口角を上げた直後、メールの通知が降りてきた。送信者の名前にかけた微かな期待は、想定通りに打ち砕かれた。
「……なんだ、お前もだったのか」
なんて返信しようかね、なんて、曇る窓ガラスの外に視線を移した。
窓に張り付いている雨粒は、まるで点滅するようにガラスを叩いている。