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第56話 「船と妖精の街」

漁師と冒険者、どっちが稼げる?




 ・⋯━☞町外れの公園のベンチ☜━⋯・



 ムラサキも、ごくごく普通の・・・そこら辺に何処にでも転がっている小石のような、ごくごく普通のオジサンだった。



「・・・なんだ 普通のオッサンじゃないか?

 あんなに、可愛かったのに・・・」


「んなっ?! なんだよ、それ?」


「うぅむ・・・確かに、普通のオジサンだよね」


「お前達の普通ってなんだ?!」


「まあ、そうね!」


「ちょっ・・・」


「なんだか・・・」


「・・・おい! もっと、何か言え!」


「がっかりですわあ」


「何がだよ!!」


「・・・さて、行くか」


「「「「はいっ!」」」」


「ゴラァ! お前らあ━━━っ!!

 失礼な奴らだな、まったく!!(怒)」



 ムラサキの正体は、普通のオジサンだった。




 ・⋯━☞リクツネフ造船場☜━⋯・



 露店通を抜けると、造船場が見えた。

 流石は港町である。



「ん? 船・・・」


「ああ、リクツネフ造船場だよ

 この街の造船の受注を、全てここで受けている」


「ほお? でも、監督者よりも作業員の方が少ないんじゃないのか?」


「そうだな その通りだよ

 設計から現場作業指揮者(監督)や作業主任者は人族達が受け持っているが、作業自体は皆んな殆どが大型勢の魔族達なんだよ

 そして、漁師は漁師で、大型勢の魔族達は、一攫千金を狙ってトゥナの漁師になるのを目指してる

 だから、造船業に就こうなんて大型勢の魔族なんて、まあ少ないもんだよ!

 日本でもよく聞く話しだろう?

 皆んな一攫千金を狙って、家が建つほどの借金作って船を買ってまでして、マグロ漁に出る・・・なんて話しをな?」


「まあ、うむ・・・そうだな 俺は、真っ平御免だが」


「でもこの世界では、漁師になるためには、先ずは『漁業ギルド』に加盟しなければならない 」


「へえ・・・」


「もちろん、漁業ギルドに加盟していない野良の漁師も居るには居るが、たとえ、トゥナを釣り上げたとしても、まあ漁業ギルドの奴らからは、ミソカスな扱いをされるらしいな

 漁業ギルドへの加盟は絶対条件ではないが、あまりお勧めはできない

 釣り大会にしても、正当な審査をしてくれないのは確実だろうしな・・・」


「・・・そうか(汗)」


「それと、この世界の漁師には階級があるんだよ」


「はあん? なんだそりゃ?

 漁師にも、冒険者みたいな階級があるのか?」


「そうなんだよ この世界の漁師には冒険者とは少し違った階級があり、1番下っ端から5等漁師~上は1等漁師の5階級だな

 5等漁師と4等漁師とは名ばかりで海にも出られないんだ

 5等漁師っつったら、1番下っ端で雑用係みたいなもんだな

 4等漁師になって魚を捌く事が許される

 そして3等漁師となって初めて海に出る事を許されるが、1人乗りの小舟にしか乗る事を許されない・・・」


「えっ?・・・3等漁師になって、やっと船に乗れるのかよ(汗)」


「そういう事だな・・・

 だから、野良の漁師も出てくる・・・

 次に、2等漁師は3等漁師の乗組員が2人付き、船も中型の3~4人乗りの船に・・・」


「へえ・・・」


「そして、1等漁師になってやっと、トゥナを釣れる大型の船に乗ることが許され、2等~3等漁師の乗組員を4~5人付けられるんだと・・・」


「へ、へえ・・・なら、1等漁師にならなければ、トゥナ漁には出られないと?」


「そういうことだな

 俺も詳しくは知らないが、それなりに試験などもあるらしい

 なにしろ、3等漁師や2等漁師では、雑魚ばかりしか釣れないらしくてな、まあ稀に小さなトゥナを釣り上げる事があるらしいが、まさにそんな奴は幸運だよな!

 漁師になりたい奴らは皆な、()()()1等漁師を目指すんだと」


「ほお・・・で、()()()とは?」


「ああ 実は1等漁師の上にも特等漁師ってのが最近になって新しく新設されたんだ

 1人1等漁師を付けられ、更に3等漁師以上の漁師を8人まで付けられ、特等漁師自身は舵取り専門、つまり船頭とか船長って奴だな!

 だが、特等漁師になるには、トゥナ釣り大会で2回以上優勝しなきゃいけないし、リクツネフ伯爵からの『特等漁師の称号』を与えられなければ、漁業ギルドでも認められないんだと

 だが、更に厳しい決まりがあってな、特等漁師となった漁師は、年に3本以上の基準を満たしたトゥナを上げなきゃ、特等漁師の称号は剥奪されてしまうんだと!」


「ほええ~~~(汗) 漁師の道も険しいんだな!」


「だな! この世界の漁師は、雑魚漁なんかやっていても、その日の食い扶持(ぶち)を稼ぐのが、やっとの事らしい

 だから漁師は皆な、トゥナ1本釣れりゃあ1~2ヶ月は遊んで暮らせるほどの稼ぎがある1等漁師や特等漁師になるのを夢見るんだとさ」


「なるほど・・・それでも冒険者よりも厳しそうだな」


「・・・だな? 冒険者やってると、厳しく見えるよな

 だが、冒険者やっていて、このリクツネフ近辺でよく出没する大型モンスターをパーティーでチビチビ飼ってるよりも、漁師やってトゥナを1本上げた方が確実に儲かるのは確かだよ」


「トゥナ1本、一体幾らなんだ?」


「10m越えで、億・・・だとよ!」


「おくう?!」


「でなきゃ、誰が漁師になんかなりたがるってんだよ

 なにせ、トゥナ1本上げたなら、船代なんて取り戻せるってんだから、すげぇよあな?」


「ははは・・・(汗)」


「あと、乗組員への報酬は給料制らしいからな

 冒険者のように、分等に報酬を分ける訳じゃない

 トゥナが釣れようが釣れまいが、漁に出たら乗組員への報酬は必ず支払わなければならないらしい」


「ほほお・・・ま、そうだろうな」


「だが、冒険者達は、そうじゃないだろう?

 成果が無ければ、報酬は発生しない

 その点は、乗組員と言えど漁師には給料として海に出れば必ず報酬は発生するのだから、魅力はあるはずだよな」


「なるほど・・・」


「それに、乗組員としては、そもそも文句は言えないらしい

 なにせ、1等漁師になるにも、条件として乗組員としての定められた期間の経験が必要らしいからな」


「俺達のような、小柄な人族には夢のまた夢だな」


「かもな? だから、よその街や村から、リクツネフで1等漁師や特等漁師になるのを夢見てやって来る奴らが、まず買うのは小舟・・・

 その小舟でさえ、1艘300~500万Tiaほどするらしいからな

 漁師になるには、金がかかるもんなんだよ」


「へえ~~~・・・小型車の新車くらいの値段なんだな」


「そうさ それに、1番生産注文が多いのも小舟らしい

 仮に今 注文しても、数年待ちくらいじゃないかな?」


「げっ! そんなにかよ(汗)」


「そりゃあ、船なんて簡単に作れるもんじゃないだろう?

 プラモデルみたいには、いかないさ!

 ここ最近になって、ドワーフ達も設計や造船に参加してくれたお陰で、船自体の機能性も年々向上しているらしいし、これでも造船のペースは上がった方なんだぜ?

 しかも釣具まで、ここで作ってるんだとよ

 中には、漁師を諦めて、釣具師になる奴も居るとか」


「ふう~ん・・・それでも大変そうだな?」


「うむ それに、大型勢の魔族達なら造船に向いているだろうが、釣具などの細かな作業となると、やはり小型勢の魔族達や人族の仕事となるみたいだな」


「ふぅむ・・・」



 リクツネフでは、トゥナ漁専用の造船が常に大忙しらしく、その訳は豪腕な魔族の漁師ばかりなので、船や釣具なども直ぐに壊れてしまうのだとか。

 なので、次々と注文が入るらしく、造船場では休みが取れないくらいだとか。

 以前、トロも船を種生成で作れないかと試してみたが、数人乗りの小型のボートしか作れなかった。

 できれば、ここリクツネフで、トロも自家用船を作ってもらおうと思っていたが、どうやらそれは難しそうだ。


 

 実は、ムラサキの発言の中で、『プラモデルみたいには、いかない』とあったのだが、それだ!と思った。

 種生成で大きな船を作れないのなら、プラモデルな様に部品の組み立て式や合体式にすれば良いのでは?と考えた。

 


「そうか! プラモデル! なるほど!!」


「「「「?!・・・」」」」


「ん?! プラモデルが、どうかしたか?」


「そうだよ! 俺の固有スキルの『種生成』では、大きな船は作れないが、プラモデルの様に組み立て式にすれば良いのでは?」


「!・・・なるほど できない事もないかも知れない」


「だろ? ウインチなんかも設置して、魚影探知機なんかも必要だな!

 後は・・・」


「いや、でも、ちょっと待て!」


「え? なんだよ?」


「トロは、もしかしてトゥナ釣りをする気なのか?」


「!・・・ううむ・・・特にトゥナを釣りたい訳じゃないが?」


「なら、仲間達が十分に乗れるくらいの大きさの舟で、いいんじゃないのか?

 トゥナを釣る気がないんだったら、魚影探知機やウインチなんて必要ないだろう?」


「!・・・ああ~~~まあ、そうかな?(汗)」


「下手に地球の技術を模した魔導具を搭載した船なんかを作ったら、それこそ王侯貴族に目を付けられてしまうぞ?」


「・・・それも、そうだな・・・(汗)」



 トロの企みは、あっさり一蹴された。

 ムラサキってば、ナディーみたいな事を言う。

 まあ、普通に考えたら、それもそうか。

 仕方なく、船を作るなら、釣りを目的としない大きな船を作ると決めた。

 だが、それは今じゃない。

 こんな、船作り盛んなリクツネフなんかで船などを作ったりしたら、それこそ王侯貴族に徴発されるかも知れない。

 また、船を量産しろなんて命令されても面倒だ。

 命令なんかに、従うつもりなどないがな。



「あぁ~~~あっ! トゥナの刺身が食えないってんなら、もうリクツネフには用は無いな!」


「「「「ええええ~~~?!」」」」


「ええ~~~って、だってしょうがないだろう?

 ムラサキからも聞いたろう!

 トゥナの刺身は、王侯貴族にしか回らないって」


「うんもお! 貴族、貴族って、まったくもお!!

 こんな時ほと、貴族を憎らしく思う時はないわね!」


「同感ですわぁ~~~」


「何言ってんだよ? エヴァだって貴族だったくせに

 それに、そう言うナディーだって、貴族に戻りたいんだろ?」


「そうだけどお~~~(怒)」


「複雑ですわあ・・・」


「まあまあ、刺身ばかりが美味い料理じゃないんだよ?

 俺が思うには、刺身なんかよりも、もっと美味い料理はトロが1番よく知ってるんじゃないのかい?」


「「「「おおおおっ!!」」」」


「おいおい、俺は独身男料理を少し(かじ)った程度のチンケなアラフィフのオッサンだぞ?

 あまり、ハードルを上げないでくれ・・・(汗)」


「大丈夫っす! 師匠の料理はマジ美味いっす!!」


「そ・・・そうか?(照)」


「まあね! それは、認めてげるわ!」


「さ、さいですか・・・(照)(照)」


「また、トロさんの美味しい手料理が食べたいです!」


「お! 嬉しい言い方してくれるねえ・・・(照)(照)(照)」


「そうですわあ! 私の屋敷の料理人よりも美味しい料理でしたもの!」


「うっはっ! たまらん! ありがとうよ!(照)(照)(照)(照)」


「それより俺達・・・ずっと空気でしたね?」


「我らもでしたな!」


「そうだぜ、ご主人様!」


「忘れてない?」


「にゃあご!! ぷんぷん!」


「「「「・・・」」」」


「それは、この『豆は世界を変えます!』小説モドキを書いてる作者に言ってくれ」


「「「「・・・・・・・・・」」」」


「「あはは・・・(汗)」」



嬉々ゆう:

『それは、すまなんだ!

 別に、(ないがし)ろにしているのではないぞ?

 忘れていた訳でも無いんだが・・・(汗)』



「そ、そう言えば! このリクツネフ領地には、ダンジョンってなモノはないのか?」



 トロは、苦し紛れに無理やり話題を変えた。

 仕方ないのだ。

 この小説モドキは、まったくストーリー性が無く、昭和の一発ギャグ漫画みたいな、思い付きで書かれているのだから・・・



「ん? ああ、あるぞ!

 リクツネフの北詰を出て、岬をグルリと回るように進めば、『リクツネフ・ダンジョン』がある」


「ほお?」


「「「「おおお~~~!」」」」


「俺も1、2度ほど行った事があるが、昔は海の底だったんだろうな

 貝や海洋生物などの化石がボコボコ出るところだよ

 水系の魔石も、よく出るって聞くな!」


「へえ~ 面白そうじゃないか?」


「「「「おおお~~~!」」」」


「だが、中は狭い空間が多くてな

 大型勢には入れない空間が多々あって、小型勢や人族達がよく入るダンジョンだったような?」


「じゃあ、そのダンジョンは、まだクリアされていないんだな?」


「まあな! 今のところ、4階層までしか到達した話しは聞かないかな

 まだまだ深層部には、手の付けられていない掘り出し物とか見付かるかも知れないぞ?」


「4階層? なんだ、まだそんなにクリアされていないんじゃないか?」


「そうなんだが、4階層のボスが厄介でな!」


「ほお? どんな奴か知ってるのか?」


「「「「!!・・・」」」」


「ああ、俺も1度やり合ったが、相手が悪い・・・」


「はあ?! ムラサキにも、勝てない奴かのか?」


「ううむ、そうだな・・・

 俺は今までソロだったからな

 だが今回からはパーティーだから、もしかしたらクリアできるかも知れない」


「ほおおっ! 行ってみようじゃないか?」


「「「「おぉおぉおぉおぉ!」」」」


「だがなあ・・・」


「なんだよ? 何か、面倒な事でもあるのか?」


「いや、そうじゃない

 正直に言えば、4階層のボスを倒したとて、その先への魅力が感じられないと言うか・・・」


「はあ? なんだそりゃ?」


「なにしろ、宝箱も、モンスターが落とす物も、全てが化石ばかりなんだよ」


「「「「ええええ~~~!!」」」」


「いやいや、さっきムラサキが言ったじゃないか!

 水系の魔石も、よく出るって・・・」


「そうなんだが、水系の魔石なんて、露店で腐るほど売ってるんだよ?」


「へっ・・・マジ?」


「おう、マジで・・・」


「「「「・・・」」」」



 そう言えば確かに、米粒大からビー玉大の大きさの水系の魔石が、クーラーボックス大の木箱にドッサリ入れられていたのが、どの露店にも置いていたっけ?

 しかも、1つタダみたいな値で売られていたような。

 なにしろ、産出されるのは『リクツネフ鉱山』と、『リクツネフ・ダンジョン』。

 そして採取されるのは、『水溶性モンスター』と、『水の妖精の泉』である。

 特に『水の妖精の泉』からは、膨大な数の水系の魔石がわんさか採れる。

 それは、水の妖精の泉からは、水の魔力が溶け込んだ水が(とど)まる事無く湧き出ているからだ。

 採れると言うより、採らなければ『水の妖精』が際限なくポンポン生まれて、水の妖精によってリクツネフが支配されそうだと・・・

 このリクツネフが、『水の妖精の街』と異名を持つ理由である。


 つまり、この世界では、いや少なくともリクツネフでは水系の魔石は、あまりにも数が多く、何処にでもあり過ぎて価値が低いと認識されている事が理解できる。

 確かに、ただの水属性の魔石だと、水系の魔導具の電池的な素材としてよく使われるが、使用目的は主に水の生成と流動である。

 ここリクツネフでは、水道の水として使われる事が大半である。

 無くては困る物ではあるが、あり過ぎても困る物だった。



「・・・そういう事ね」


「・・・そういう事だね」


「「「「・・・(汗)」」」」



 トロ達は、リクツネフ・ダンジョンに入る事を躊躇った。



リクツネフとは、釣りの盛んな街でもあり、水の妖精の街でもあった。

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