表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/56

第54話 「人族領と魔族領」

異世界転生者としては先輩になるムラサキから、人族と魔族との話しを聞いた。

人族には人族の得意なものがあり、魔族には魔族の得意なものがある。



 ・⋯━☞宿屋海賊船フックの部屋☜━⋯・



「では、今後ともよろしく! トロさん」


「ああ、こちらこそ、よろしく!

『トロ』でいい 俺も、『ムラサキ』って呼ぶからさ

 それに、無理に敬語とか丁寧語はやめてくれ

 もっと気さくに接してくれ! 俺達は同郷って事で仲間なんだからさ!」


「わかったよトロ! 皆んなも、よろしく!」


「「「「よろしく」」」」



 ムラサキのこれまでの過去の経緯を聞いて、どうやらこの世界へ転移転生するには、勇者召喚以外にも方法があるようだと分かった。

 だが、『この世界の神様的な存在の大いなる力?』がなせる力だろうと、無理やり結論付けるしかなかったが。

 この世界にとって異世界者のムラサキは、チートなのは間違いなく、これも『異世界転生もの』の『お約束』だと、無理やり納得するしかない。

 つまるところ、なぜムラサキがこの世界へ転生したのか・・・

 正直なところ、『解らない』が、本当のところだ。

 本当なら事故で死んでいたところを、気が付いたらこの世界に転移していた? 転移されていた?

 だがそのお陰で命を救われた。

 その理由が、当の本人さえ解らないのだから仕方ない。

 

『成るように成る』しかない・・・だな。


 気になるところと言えば、ムラサキの職業だ。

『キキティの使徒』と、なっていたのだ。

『キキティ』とは、何者なのだろうか?

 まさかとは思うが、この世界の神様的な存在なのか、それとも創造神?なんて事も考えたが、今は何も分からなかった。

 トロの場合は、メルセンベルグ国王によって召喚され、転移した。

 結果、この現実世界で生きているのだから『転生』と呼んでもいいのかも知れない。

 何にしても、転移転生するのに、そのキッカケは、神だろうが、国王だろうが、自分では選べないと言う訳だ。



「さて、これからどうしようかな?」


「この街へ来た理由は、確か『トゥナの刺身』が目当てだったんだよな?」


「ああ でも、結局は刺身に当たるどころか、かすりもしなかったけどな」


「まあ、そうだろうな・・・」


「あん? そうだろうなって、どういう事だ?」


「そりゃあだって、刺身なんて王族やお貴族様にしか回らないのに、俺達みたいな平民なんかに回ってなんか来ないさ」


「「「「「ええっ?!」」」」」



 なんだと!!

 聞いた話しとは、違うじゃないか!

 釣り大会の後なら、誰にだって刺身が食えるってニュアンスの話しだった気がするが・・・



「ちょっと待て! 俺達は高ランク冒険者だぜ?

 貴族階級で言うなら、公爵位同等の・・・」


「いやいや! ここは『魔族領』だよ?」


「へ? それは、どういう・・・???」


「高ランク冒険者を貴族同等の扱いをしてくれるのは、人族領の1部だけだよ!」


「「「「「はあっ?!」」」」」



 驚きのあまりに、開いた口が塞がらないとはこの事だ。

 トロ達は、ムラサキを見ながら口をパクパクしていた。


 言われてみれば確かに・・・


 イスヤリヤ王国でも、貴族扱いしてくれる時もあれば、そうでない時もあったような・・・???

 と言うか、貴族なのに同等に対応してくれたのは、トスター伯爵くらいだろうか?

 いや、高ランク冒険者のトロではなく、ロンデル達にビビってただけだったり???


 それより、ここは魔族領だ。



『俺達よりもレベルの高い魔族の冒険者達なんて、ゴロゴロワッサワッサ居るに決まっている。』



 トロ達は人族から見れば、確かに超越した冒険者と言えるが、魔族から見ればごく普通の高ランク冒険者ってところだろう。

 だいたい、魔族とは身体の作りが違う。身長2m越えなんてごく普通。いや、まだ小さい方だ。

 そりゃあ、あのデカイ魚のトゥナをウインチ無しで、腕の力だけで上げる奴が居ると言われているんだから。



『俺程度のサファイア級冒険者なんて、魔族領ではその他大勢のごく普通の、そこら辺の何処にでも転がっている小石な様な普通の1冒険者だ

 井の中の蛙大海を知らず・・・だったな

 なんだか、今までのこの世界の認識についての『my認識』を考え直さなければならないかも知れない

 ってか、貴族同等の・・・なんて当然のように今まで振舞っていた自分が恥ずかしい(汗)』

 


「・・・参ったな(汗)」


「トロさん・・・いや、トロだって、これから魔族領で活動を続けたら、俺くらいのレベルにならすぐになれるさ!」


「・・・そうかな?」


「ああ、きっとなれるさ!

 トロは、この世界へ来てまだ1年も経ってないんだろ?」


「お、おう・・・」


「なのに、今のトロのレベルは500超え!

 それは、驚異的な速さの成長なんだよ?」


「はえ? そ、そうかのか?」


「そうだとも! 俺がこの魔族領へ来て知り合った魔族の冒険者達は、初めは俺と変わらない600程のレベルだった

 なのに、あれから7~8ヶ月くらい経ってみると、俺のレベルは1000に迫る勢いで上がっていたんだ」


「?!・・・」


「だから俺は、隠匿・隠蔽でレベルやステータスを隠すようになった

 だって変じゃないか? 7~8ヶ月でレベルが300も400も上がるなんて

 逆に考えてみてくれよ? 同レベルだった奴がバカみたいな早さでどんどんレベルが上がっていきゃあ、そんな奴は脅威以外の何物でもないよ!

 自分自身、気味が悪かったよ・・・(汗)」


「そう・・・なのか?」


「ふむ 解ってないようだけど、ナディーちゃんなら、よく理解しているんじゃないかな?」


「え? ナディーが? 何を?」


「・・・成長・・・単純にレベルが上がる早さの事かしら?」


「そう! まさに、それだよ!」


「ええっ?!」


「「「!!・・・」」」



 そうなのである。

 ナディーなら、よく解っていた。

 なぜならナディーは、13歳から冒険者として活動を始めたのだが、トロと出会った頃は17歳になっていた。

 17歳と言えば、日本人のトロから見れば、まだまだ若い初心者冒険者に見えるが、しかしてナディーは冒険者としてはもう4年目であり『中堅』辺りの冒険者と言える。

 それでも当時のナディーのレベルは、4年目にしてやっともうすぐ100に届くかと言うところで、頭打ちの限界を感じていた。

 しかも、当時の人族はレベルを100を越えられないと言うのが常識だった。

 だが、トロと一緒に活動する事になってから、人が変わったかのようにナディーのレベルは上がった。

 まるで油切れで動きが悪くなった水車の歯車が、油を注いだら急に動きが良くなって勢い良くスイスイ回り出したかように。

 そしてトロから貰った『限界突破を覚える豆』のお陰で、更にレベルの上昇は(とど)まる所を知らないかのようだ。

 それは、トロと共に活動しているのが理由である。

 実はトロには、『隠れ固有スキル』があり、『同行者経験値獲得数倍増!』があるのだ。

 これは、召喚者や転生者に限られた隠れスキルであった。

 つまりは、トロとパーティーを組めば、誰だってレベルがバシバシサクサク上がる訳である。

 なので、トロはもちろん、ナディーや他の仲間達や従魔達であれ、『同行者経験値獲得数倍増!』スキルを持つトロとパーティーを組んだ事により、レベルがバシバシサクサク上がるのだ。

 本来なら1年そこらでレベル500を超えるには、勇者でもなければ有り得ない事である。

 なのに、トロもレベルが上がりやすいのは、やはりトロも『勇者』である事には間違いないのだ。



「・・・という訳だよ」


「つまり、ムラサキの鑑定スキルだと、俺の『同行者経験値獲得数倍増!』スキルが見えていると?」


「そうだね! このスキルは、鑑定レベル10を超えなきゃ見えないのかも知れないね

 俺が自分のこのスキルに気付いたのが、鑑定レベル10を超えた辺りだったからね!」


「んなんと?! はぁあぁあぁ━━━~~~・・・(汗)」


「「「「・・・・・・(汗)」」」」



 もう、人族の頂点に上り詰めた気で居たトロだけに、完全にムラサキには完敗だった。


 こんな奴が居たなんて・・・


 でも、『(バーン)(アウト)症候群(シンドローム)』からは、抜け出せそうだ。

 


「それに、単純に力だけなら同レベルの魔族の冒険者達には負けるかも知れないけど、トロの魔法は凄いものがあるよ!

 俺だってトロと対戦したなら、10回に1回は引き分けになるかも知れない」


「はは・・・10回に1回か・・・

 しかも、勝つ訳じゃなくて、引き分けか・・・あはは(汗)」


「「「「・・・・・・(汗)」」」」



 ムラサキの話し方は、一々トロをイラつかせる。

 そして、知ってか知らずか無意識か、しれっと口撃でダメージを与えてマウントを取ってくる。

 おそらくムラサキ本人は無自覚であり、悪気は無いのだろうけど。

 ムラサキという人物は、なかなかの癖のある奴だと思った。


 だが、もっとトロを驚かせる事をムラサキは言う!



「しかし、日本では21世紀になったと言うのに、この世界での生活レベルはまだ昭和初期・・・いや、昭和中期がいいところか

 俺達がこの世界へ来たのは平成だぜ?」


「・・・ん? ちょっと待て! 今、なんつった?

 平成? 21世紀になった? ムラサキ今、この世界へ来たのは平成って言ったか?」


「ああ、そうだよ 俺がこの世界へ来たのは、あっちじゃ平成13年だったか・・・

 トロは、1年遅れだから平成14年から来たのかい?」


「はあ?! いやいやいやいやいやっ!!

 俺がこの世界へ来たのは、令和6年だったよ!」


「れいわ?! なんだそりゃ? 聞いたことがないぞ!

 もしかして、年号が違うパラレルワールドなのか?!」


「はあ?! パラレルワールド? 何言ってんだ?

 令和だよ令和!! 令和になったのは2019年だよお!!

 2019年の平成31年に、平成天皇が生前退位して年号が『令和』に変わったんだ!」


「なん、なんだってえ?! 2019年?! れいわ?

 そ、そんな・・・おいおいおい、これは一体・・・(汗)」


「どうなってんだこりゃあ?」


「「「「・・・???」」」」



 トロとムラサキとで、この世界へ来たのは1年の差があったのだが、日本では23年の差があったようだ。

 23年と言えば、ほぼ二周(ふたまわ)りも違うではないか!!



「え? え? え? だとしたなら・・・

 ムラサキの実年齢は・・・ええと・・・70歳?」


「バカなっ!! 俺の実年齢は49歳だぞ!

 47歳の時にコッチへ来て、そして2年経ったんだから!!」


「ちょちょちょ! いやいやいやいや! おかしいだろ!!

 俺がこの世界へ来たのは2024年で、ムラサキがこの世界へ来たのは2001年・・・なんだろ?

 単純計算でも、23年も違うじゃないか?!」


「なん?!・・・そ、それが本当なら、そうなるのだが・・・いやいや、待ってくれ!

 これは、マジでどうなっているんだ?

 もしかして、日本とムトランティアでは、年月の経つ時の差があるって言うのか?!」


「ううむ・・・(汗)」


「「「「・・・?」」」」



 どうやら、日本のある世界と、この異世界ムトランティアでは、時間の流れにズレがあるようである。

 その誤差の理由など理解できないが、トロのように勇者召喚されて転移した場合と、日本で死にかけて異世界へ転移した(転移させられた?)場合とでは、転移した時の使用した扉や条件が違うからとでも言うのか?

 しかし、どんなに考えても答えは出なかった。



「参ったな・・・じゃあ、ムラサキは俺なんかよりも、ずっと歳上だったんだな?」


「やめてくれよ! どう見たって、見た目の年齢はそれほど変わらないじゃないか!

 って言うか、俺はまだ49歳だってば!」


「いや、しかしだなあ・・・(汗)」


「ううむ、まあ、待て! これは、そう簡単に解決できる問題ではなさそうだ・・・

 今は、深く考えないでおこう」


「ううう・・・ああ、その方が良いかも知れないな

 と、言うか、もう考えたくないな・・・(汗)」


「だからこの際、日本での転移年は計算に入れないでくれ

 俺は47歳の時にこの世界に転移したんだ

 それから俺は2年間この世界で暮らした・・・

 だから、俺の今の実年齢は、49歳なんだからさ」


「あ、ああ、分かったよ・・・(汗)」



 ムラサキが言うように、この時間のズレの問題は、今は解決しようもないし、解決したとしても、転移した日本の年は計算に入れずに、この世界での今の自分の年齢で居ないと、どうも頭が混乱して何が何だか解らないから、今は触れないでおこう。

 いや、考えたくない・・・と言うのが本当の心境か。



「ええと、それはそうと! 気晴らしに露店通りに行ってみようよ!」


「そう・・・だな(汗)」



 なんだか、徹底的に打ちのめされた気分だ。

 貴族同等の身分を持つ冒険者だと自負していたがそれは幻だったり、転移した時期に大きな差があったり、転移する条件が違ったりとワケワカメだ。

 だが、考え込んでも仕方がない。

 きっと答えなど出ないのだから、考えるだけ時間の無駄だ。

 トロは、ムラサキの言うように、色々考えてしまう事柄は多いが、それらを一旦忘れるために露店通りへと向かった。



 ・⋯━☞露店通り☜━⋯・



 トロ達は、宿屋海賊船をチェックアウトすると、ムラサキと一緒に露店通りへとやって来た。

 露店では、手作りのアクセサリー、衣服、小道具、食器、武具、錬金術用品、ポーションなどが、シッカリとしたテント造りの露店の中に、所狭しと並らべられ売られていた。

 そして反対側には、B級グルメっぽい露店が並んでいる。

 

 

「おおっ! こんな大きな街にも、こんな取って付けたような小さな店があるんだな!」


「トロ、ここは異世界だよ」


「!・・・そうだった(汗)」


「「「「・・・・・・(汗)」」」」



 しかし、これぞ異世界って感じがする。

 よく、台湾の露店街などに行くと、異世界気分を味わえると言う。

 それに、子供の頃を思い出させる様な、このノスタルジックな光景!

 そうそう! 昭和のあの時代、ガレージを利用した様々な商店が並ぶ光景によく似ている。


 大型専門店やスーパーやデパートなどよりも、トロはこんな質素な雰囲気だ好きだった。

 いかにも異世界を感じさせる。

 日本で住んでいた頃、テレビで観た台湾の露店通りに行ってみたいと憧れたものだ。

 今まさに、そんな光景! 楽しくて仕方がない!

 そして目に付いたのは、人族領ではお目に掛かる事の無い、粗悪で質素な魔導具だった。

 だが、そんなお粗末な品々がまた、トロをノスタルジックな感覚に誘う。

 まるで、昭和の駄菓子屋に来たような、懐かしい感覚。

 失礼な話しだが、無造作に並べられた そんな拙悪な魔導具達が、昭和の駄菓子屋に売られていた玩具に見えてしまうのだった。




 ・⋯━☞魔導具屋☜━⋯・



「~~~♪」


「ふふふ トロは、こんな お店が好きなんだね?」


「え? はは! まあね!

 俺がまだ小学低学年の頃、近所にこんな風景に似た商店が並んでいたんだよ

 当時は、『キャッシャー』なんて物は珍しくてね!

 天井から吊り下げたザルに、お金やソロバンを入れられていたのを思い出すよ

 小銭は、エプロンに入れていたっけなあ?

 今じゃ考えられないね~~~

 そんな店の中に、駄菓子屋があってね!

 質素な玩具とかが所済ましと並べられ積み重ねられ・・・

 それを今、思い出してね 懐かしいなあ~~~」


「そうですか」


「おっ! これは、マジック・ポーチか?」



 マジック・ポーチとは、主に硬貨を入れる為に作られた空間拡張収納魔導具で、時間停止機能は付与されていない。

 なので、時間経過により原型が維持できない物や腐敗や劣化する物を入れる為には使われることは無く、硬貨や魔石などの無機質な物を入れるために使われる事が多い魔導具である。

 鑑定してみたら、宝箱1箱程度入る容量。(約50ℓ未満)

 しかも50万Tiaって、コレで? 高っ!

 鑑定してみたら、適正価格が30万Tiaと出た!

 マジか? ぼったぐり?


 うぅむ・・・ゴミだな。

 

 正直な感想として、まさに『ゴミアイテム』だが、この魔族領では当たり前に使われていているのか・・・

 他にも、小さな様々な魔導具もあるのだが、どれも仕様レベルはそれほど高いものではなかった。

 中には、用途の分からない物もあった。

 言えば、人族領で当たり前に使われている魔導具の『下位互換』的な物ばかりだし、ただ道具としての素材ですら、お粗末な代物ばかりだ。

 こんな質の悪い素材に、この程度の出来栄えでは長持ちは期待できないし、どんなに大事に使っても、持って2、3年て所だろう。

 それに、乱暴に扱うと、その場で壊れてしまいそうな物さえあった。

 その他の品物も、正直言ってコレっぽっちも欲しいなんて思えない。

 見る限りは人族領でならもっと高機能で質の良い物があるのだが、ここ魔族領では魔導具としてのレベルそのものが低いものがほとんどだと感じた。

 マジック・バッグでも、リュックタイプで、容量は獣車(馬車)1台分くらいか。

 それでも値段は破格で、500万Tiaと書かれていた。

 鑑定スキルで適正価格を見たが、本当に500万Tiaと出たので驚きだった。

 ここ魔族領では、これが普通なのか・・・

 だとしたら、もしトロが作ったマジック・バッグの適正価格を見たら、どの様に出るのだろうか?



「へえ~ これは良く売れるのかい?」


「おう! 良く売れますぜ!

 大型勢よりも、小型勢がよく買いますなあ!」


「へえ・・・そうなんだ」


「トロ・・・」


「ん?」



 この時に魔族の店の主人が言った『大型勢と小型勢』とは、魔族にもガタイのデカイ奴らばかりではないと言うこと。

 ムラサキから聞いた話しによると、身長2.5mを超える者達は『大型勢』と呼ばれ、それ以下は『小型勢』と呼ばれるのが一般的だそうだ。

 身長2.5m超えの奴らが多いが、最近は人族と変わらない身体の小さな魔族の冒険者達も増えたようだ。

 これも、人族との交流が増えたからだろうとのこと。

 身長2.5mってもう、めちゃくちゃデカいけどね。

 

 そしてこの時、ムラサキがトロにこんな事を言ってきた。



「魔族は、人族ほど魔導具作りに入れ込む奴は居ないからな」


「やっぱり、そうか・・・」


「うん?」


「そんな気がしたからさ

 魔族達は、人族ほど魔導具に関心が無いようだな

 人族のように、複雑で面倒な依頼や、細々な作業を何日もかけて続けるような繊細な仕事は、魔族達には向いてないんだろうなってな

 大きな魔物の討伐だったり、大金の絡む依頼だったりと、なんでも力任せな感じがする・・・

 身体も大きければ、する事も大きいよな」


「ま、そういうところだろう」


「だから、魔導具さえ『使い捨て』な感覚なんだよきっと」


「・・・だろうな」


「「「「・・・・・・」」」」



 そんな気がした。

 魔族には体格(ガタイ)の大きな奴らが多い。

 でも最近は、人族にそっくりな小さな冒険者や生産職の魔族達も増えたと聞く。

 日本人としては、良い物を末永く使いたいと考えるもので、質がよく丈夫でデザインの良い物が欲しいと思う。

 でも、魔族としては、使えたら良いと考えるのかも。

 壊れたら、また買えば良いみたいな。

 高度成長期?一昔前の日本人っぽい考え方だな。

 だから、こんな質の悪い魔道具も売れるのだろう。


 魔族も全ての人々が巨体で剛腕な連中ばかりではなく、小柄であまり戦闘に向かない者達も居るのは居るらしい。

 そんな小柄な魔族の冒険者達、所謂小型勢は、やはり人族の冒険者達と同じで、雑用な依頼を受けざるを得ない冒険者も増えているのだそうだ。

 稼ぎも大型勢ほど稼げない分、より良い物を末永く使いたいと考えるのかも知れない。

 魔族達にも厳しい現実があるんだなと思ったのだ。

 それはやはり、人族と関わる事が増えた事も関係しているらしい。

 人族領に住む魔族達は、小柄な小型勢と呼ばれる者達が多い。

 魔族でも、巨体で剛腕な者達ともなると、人族領では暮らしにくいのかも知れない。

 居ない訳ではないが、圧倒的に少ないのは確かだ。


 何時かは、人族と魔族との変愛もあればなと。


 人族は人種によって、顔付き、身体付き、肌の色などの違いこそあれど決定的な種族的な違いはない。

 あるとすれば、『偏見』である。


 でも魔族は身体付きも能力も種々雑多である。

 決定的に人族と違うのは寿命の長さだろう。

 この世界の人族は大往生と言われても、せいぜい70~80歳代が精一杯。

 でも魔族だと、短命な種族でも最低150年はかるく生きる。

 最も長寿と言えば、竜人族で平均寿命は1万年だ。

 次にハイ・エルフの数千年・・・だろうか。

 人族と魔族とで愛し合って結婚したとしても、どうしても人族の方が先に死別して居なくなる。

 魔族が残される側となるのは確実な訳で、辛い人生になりそう。

 だからこそ、たとえ人族と魔族が恋仲になったとしても、結局はお互いに辛い未来が約束されていると言える。

 今まで、人族と魔族との恋愛が無かった訳では無い。

 だがしかし、実ならない恋が多いのだとか。

 ムラサキは、そんな色んな話しを聞かせてくれた。

 

 これは、話しを聞く方でも辛いな・・・


 互いに理解し合い完全に打ち解け合うには、まだまだ時間がかかりそうだ。

 でもトロには、『種生成固有スキル』がある。

 長年人族とは、レベル100を越えられないという常識を、『種生成』で作り出した『限界突破スキル』で(くつがえ)したように、きっと、この固有スキルで、人族と魔族との隔たりを完全に取っ払う事ができる日が来ると信じている。

 なぜなら、トロが『種生成』で作り出したスキルや魔法などは、どういう訳か必ずこの世界で定着し自然に生み出されるようになっている。

 なのでトロが『種生成』で作り出した『種』は、この世界の『種』として、後の世にも当たり前のように、この世界の人々が自ら栽培して広げてくれる。

 つまり、『種生成』で作り出して栽培した『豆』は、この世界を変えるのだ。


 だがトロは、『種生成』スキルによって、自分が欲しい物を、自分が食べたい物を、ただ作って自己満足しているだけ。

 それに関して誰かに認めて貰いたいとも思ってもいないし、称えて貰いたいとも思ってもいない。

 ただただ、自分のやりたい事をしているだけだ。

 でも、それがこの世界に大きな影響を与えている自覚はある。

 不思議と、自分的にも倫理的にダメだと思われる物は種生成では作れなかった。

 種生成では、この世界に存在しても問題が無い物なら作れるとトロは解釈していてる。

 ならば、問題なければ、問題ない。それだけである。




「ところで、店主さん!

 この、魔導具らは、やはり魔族の錬金術師が作ってるのかい?」


「おう、そうだよ!

 聞いた話しじゃあ、魔導具開発なら人族の方が長けてるってんで、魔導具開発者を目指す奴らは、皆な人族領に修行に出るんだってよ!」


「ほお・・・」


「なんせ人族領には、ここ魔族領には無い高レベルな魔導具がどっさりあるって聞く!

 それは単純に、人族の方が魔導具を作る技術が上ってんだろ?

 だったら、魔導具作るってんなら、人族に聞け!ってもんだわ!」


「ふむふむ」


「だから、人族領から修行が開けて戻って来た奴らが作った魔導具は、みんな質もレベルもかなり高いらしいぜ!

 その代わり、値段もかなり高くなるらしくてな・・・

 だが1度でいいから、高レベルな魔導具ってモンを見てみてぇよな!」



 なるほど・・・

 魔導具屋の店主によると、まだまだここリクツネフには、高レベルの魔導具はお目に掛かる事は少ないらしい。

 ならば!・・・



「おっ! なんなら、俺が今持ってるマジック・バッグを見せてやろうか?」


「はあ?! アンタ、高レベルのマジック・バッグを持ってんのかい?

 あ、なるほど! アンタは人族だもんな!

 もしかしてアンタ、人族の行商か何かかい?」


「まあ、そんなところだ モノの出処は話せないが・・・」


「へえ~そうかい? そりゃそうだわな!

 商人にとっちゃ物流ルートも財産だ!

 おいそれと、話せる筈がないわな! はっは!

 じゃあ是非、ソイツを見せておくれよ!」


「ああ、いいよ! んっと・・・」


 ゴソゴソ・・・



 魔族の魔導具屋の店主と話していたら、こんな話しになってしまった。

 だがトロは、嬉しい子のように、マジック・バッグから、トロが『作り置き』していた例のマジック・バッグを取り出す。

 それは、暇な時に面白半分で大量に作った・・・いや、作ってしまった物。

 まだ『所有者設定』を施していない物で、もちろん『種生成』で作って、更に付与魔法を幾つか施した物の1つだ。



「これが、そうだよ!」


「ほお? どれ、ちょいと手に取って見せてもらっても?」


「いいよ! ほら」


「ううむ・・・」


「「「「「・・・・・・」」」」」



 魔導具屋の店主は、トロから手渡されたマジック・バッグをマジマジと見ている。

 トロが魔導具屋の店主に手渡したマジック・バッグは、元々自分で使うつもりはなく、売り物として作った量産型でレベルは低いもの。

 だがここ魔族領では、滅多にお目にかかれない高レベルな物となる。


 トロの手渡したマジック・バッグとは、腰ベルトに装着するタイプのウエストポーチ・サイズ。

 見た目は、たばこケースを倍に大きくした程度の物。

 でも収納容量は80㎥あり、水だけなら80トン入る仕様。

 最大級のコンテナー1個分の収納量だ。

 そして、後から追加で幾つかの付与魔法を施してある。

 もちろん、『時間停止機能付き』である。

 しかも、『所有者設定付き』なので、所有者と製作者以外が使おうとすれば、ただの小物入れとなり、マジック・バッグとしては使えない仕様で、『リターン』の合言葉(じゅもん)で手元に転移する機能も施してあるので、窃盗や置き忘れなどの心配もなし。

 所有者は、製作者を含め最大3人まで設定できる仕様。

 素材も、本体はアース・ドラゴンの皮、縫う糸はフォレスト・ビック・スパイダーの硬糸(こうし)で、金具は赤野菜から作った魔導鋼(まどうこう)を使用してあるのでとても頑丈である。

 しかも更に更に!『防破魔法Lv5』に、『防汚魔法Lv5』に、『防炎Lv5』に、『防水Lv5』を施してある。

 なので、ダンプカーに踏まれた程度じゃ壊れないし汚れない。

 焚き火の中に放り込んでも燃えないし、水深50mくらいに沈めても濡れずのバック内に水が入らない優れモノ!


 どうだあ! すごいだろ?(結構頑張った)


 魔族領で普通に売られているマジック・バッグとは、見た目も素材も機能も雲泥の差がある。

 『鑑定スキル』による『適正価格』を見たら、なんと5億Tiaと表示されたのには、製作者本人のトロでさえビックリして思わず吹き出した!

 もちろんトロは、いくら適正価格とは言え、そんな法外な値で売るつもりなどないが。



「ううむ・・・これは、相当な価値のある・・・」


「ああ、そのマジック・バッグの素材には・・・」



 トロは、魔導具屋の店主に、トロのマジック・バッグの機能を全て話した。

 そして鑑定タブレットも渡して、店主自ら確認させた。



「なんと!! こ、こんな小さなマジック・バッグに、そんな機能が付与されているのかい?!

 しかも素材が、アース・ドラゴンたぁ、驚いた!!

 こ、こんな『ど』が付くような高レベルなマジック・バッグは、口惜しいがウチでは扱えないな・・・

 これは、『国宝級』と言っていい!

 まず、俺なんかのような木っ端な露店の店主程度にゃあ、悔しいが仕入れる金がねぇ・・・(汗)」


「あはは・・・(汗) 国宝級って、それ程かね?」


「ああっ! それ程さあ! 正直、全財産叩いてでも俺自身が欲しい代物だねえ!」



『ですよねえ~~~適正価格が5億Tiaですもんねぇ~~~(汗)』


 トロは、なぜか妙にこの魔導具屋の店主が気に入り、特別出血大サービスをする事にした!



「そうかい?・・・じゃあ、色々教えてくれたお礼に、内緒で1つ100万Tiaで譲ってやってもいいぜ?」


「なんだってえ?!」


 ガタッ!!


「うわっ! ビックリした(汗)」


「「「「「?!・・・(汗)」」」」」



 魔導具屋の店主は、陳列台に身体を覆い被せるように身を乗り出して驚いていた!

 それもそのはず!

 なにせ、トロのマジック・バッグとは、今の魔族領ではトロから以外では絶対に手に入らない超ど級の魔導具と言っても過言ではない代物。

 店主の言うように、魔族領では『国宝級』ともなる代物なのだ。

 もし、領主管轄のダンジョンで出た物なら、領主に無理やり徴発されていただろう。

 そんな物が、100万Tiaなどと言う破格で手に入るとなれば、誰だって借金してでも欲しい代物である。



「鑑定スキルで見た適正価格の正確な数字は言えないが、数億Tiaはする代物だ!」


「んな! な、な、なんと?! すうおくう?!

 そ、それを、ひ、ひゃ、ひゃ、ひゃぃ・・・」


「クスッ♪ 落ち着け! 1つ100万Tiaだ」


「いや、す、すまない! 本当に、数億のモノを100万Tiaで?!

 本当に、本当にいいのかい?!」


「ああ、いいとも!

 俺はアンタが気に入った! だから、1つ100万Tiaで譲るって言ってんだよ?」


「そ、それ、ほ、ほ、本当かね?!

 そ、それで、こ、これは、い、いく、幾つあるんだい?」



 魔導具屋の店主は、手をブルブル震わせて言う。

 話す言葉も、どもってしまって、かなり興奮している。



「ああ、そうだな・・・10個はあったかな?」


「じゅっこお?! 1つ100万Tiaだとしても、1つ数億Tiaもするマジック・バッグが10個で1000万Tia?!」


「あん? もしかして、10個全部買うつもりかい?」


「ああ! も、もし構わないならなっ!」


「いいよ! その代わり、この出処を俺だと絶対に誰にも言わないでおくれよ?」


「あ、ああ! そりゃあ、もちろんだ!

 尻尾を切られたって言うものか!!

 こんな物をポイッ!と出せる人族が居ると知られちゃあ、王侯貴族はこぞって取り込もうとするだろうな!」


「だろうな・・・(汗)」


「下手すりゃ、俺もアンタも命の危機ってなもんだ!

 こりゃあ、ホイホイと表立って売れるもんじゃねえ!

 裏からコッソリ・・・と・・・(汗)」


「ま、そう言う事だ」


「そ、それより、ここで、ちょっと待っててくれ!

 商業ギルドの銀行から、金を下ろしてくるから!!」


「あ、ああ・・・(汗)」


 バタバタッ! タッタッタッタッタッ・・・


「本気なのかアイツ?」


「本気・・・みたいね・・・(汗)」


「「「・・・・・・(汗)」」」



 そう言って店主は、慌てて見せを飛び出して行った!

 おそらく今の持ち合わせが無かったので、銀行へ金を下ろしに行ったのだろう。


 そして、しばらく待ってて・・・



 タッタッタッタッ・・・


「おっ!」


「はあ⋯はあ⋯はあ⋯ま、待たせたな!」


「い、いや・・・構わないさ 大丈夫かい?」


「ほら! 1000万Tiaだ! 確認してくれ!」


 ジャッ!!


「おう?!・・・お、おお・・・(汗)」



 店主は、金貨と銀貨の混ざったものが入った巾着袋(1000万Tia入っている)をトロに手渡した。

 トロは、中身を確認(鑑定)したら、丁度1000万Tia入っていた。



「うむ! 確かに・・・」


「ありがとうよ! うっしっしっ!

 これは、大儲けできるぜぇ!!」


「「「「「・・・・・・・・・(汗)」」」」」



 大喜びする店主。

 それもそのはずである。

 なにせ、トロから買ったマジック・バッグとは、魔族領では絶対と言っていいほど手に入らない、超高級魔導具である。

 なぜなら、トロが作ったマジック・バッグ同等の物を作れる錬金術師は、人族であっても、この世界には居ないからだ。

 店主にだって、本来の価格は、1億は下らない事くらい解るってほどの代物。

 トロから買ったマジック・バッグで、一財産稼げるかも知れないのだから興奮もする訳だ。

 ソレが、たったの1000万Tiaで手に入ったのだから、そりゃあ大手を広げて喜ぶのは当たり前である。



「しかし・・・こんなスゲェ物が手に入るなんて、俺はなんて運がいいんだ?

 それもそうだが、この鑑定魔導具もスゲェな!」


「ああ、鑑定タブレットの事かい?」


「鑑定たぶれっとお?」


「ああ、そうだ!

 レベル3程度の鑑定結果を表示してくれるぜ!

 それに、そのタブレットを長く使い続けたなら、使用者にも『鑑定スキル』が何時かは開花するはずだ!」



 今トロが店主に持たせた鑑定タブレットは、以前にトロが開発した鑑定タブレットのバージョンアップしたもの。

 鑑定スキルの無い者が1000回使い続ければ、【鑑定スキル】を覚えるように設定したものである。



「本当かい!! たっ、頼むっ!

 言い値で払うっ! だからこの、鑑定たぶれっとおを譲ってくれ!!」

 

「ああ、いいぜ! なんなら、タダでやってもいいぞ?」


「はあ?! 正気かいアンタ!!

 こん、こんな、超優れた鑑定魔導具をかい?!

 これでも、億Tia出さねぇと・・・」



 実はこの『鑑定タブレット』も、トロが鑑定した結果、適正価格は1億5000万Tiaと出たのだ。

 しかしこの店主、鑑定魔導具もスキルも無くても、ある程度の鑑定ができているんじゃないか?

 


「本当にいいのかい?! 後で、やっぱり返せなんて言われてもダメだぞ!!」


「ぷぷっ! そんな子供みたいな事は言わないよ!

 いいさ! まだストックは有るんだ

 また作っ・・・手に入った時には、その鑑定タブレットも卸してやってもいいぜ!」


「本当かい?! いやあ~~~! ありがてえ!!

 絶対だよ! 絶対にまた来ておくれよ?!」


「ああ、また来るかと思うから、その時の状況次第でな!」


「おう! わかったよ! 待ってるからな!」


「あいよ!」



 こうして、魔導具屋の店主と別れた。

 後に魔導具屋の店主は、リクツネフで指折りの大店となったと言う。



「トロ、いいの? あんなのタダであげちゃって」


「いいさ! またその内にもっと良い物を作るから」


「・・・そう?」



 ナディーは、心配だった。

 ナディーにだって、鑑定スキルがあるのだから、ある程度の魔導具の価値は解る。

 なので、トロのマジック・バッグ程の高レベルな魔導具を破格の値で卸し、更に鑑定タブレットまでタダでやってしまったのだから、悪い奴らの目に付かなきゃいいけど・・・と。



トロとムラサキの実年齢は・・・

この世界へ転移した日本の年が、2人にはかなりの誤差があった。

その理由はとは・・・

トロの行動に心配するナディー。

この時のトロの行動が、後に大きな波紋へと・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ