第53話 「異世界転生者」
元日本人の転生者現る?!
・⋯━☞宿屋海賊船食堂☜━⋯・
「あの・・・初めて会って唐突なんですが、私を貴女のパーティーに入れてくれませんか!」
「「はあい?!」」
「「「・・・」」」
なんだ?! 初顔合わせでいきなりパーティーに入れてくれだと?!
ワイサとクレオとエヴァは、どうやら粗方自分達のパーティーについての話しはしていたようだが、おおよそこうなる事を予測していたのだろう。
まったく動じる事なく話しを聞いていた。
だが、トロとナディーはさっぱりだ。
「ちょっと待ってくれ!
いきなり俺達のパーティーに入れてくれと言われても、はいそうですかって入れる訳にはいかない!
先ず俺達は、君の事を何も知らない
とにかく、君の話しを聞かせてくれないか?」
「はい・・・実は私は・・・元日本人です」
「ぶあはっ!! なんだってえ?!」
「それと、本当の私は、男性です」
「「「「?!・・・」」」」
なんだと?! 元日本人だってえ?!
しかも! 男性だって?!
いやいやいや、そんな話し、今ここではできないぞ!
トロ達はとにかく、早々に食事を済ませて、トロの部屋に集まる事にしたのだった。
••✼••数十分後••✼••
・⋯━☞宿屋海賊船フックの部屋☜━⋯・
ガガッ!・・・ガコッ!
「・・・まあ、この椅子に座って」
「はい・・・」
ストン!
彼女は、トロに促され、用意された椅子に座る。
ナディー達は、隣のベッドに腰掛ける。
ムラサキと名乗る彼女は、顔は日本人の血も混ざっているっぽいが、全体的に見た目は日本人というより、紫色の髪に黒目なので、髪を染めたロシア系と日本のハーフ、またはクオーターっぽくトロには見えた。
とにかく、ムラサキの話しを聞いてみる。
「では、話してくれますか?」
「はい・・・ええと、どこから話せば良いやら・・・
俺がこの世界へ来たのは、もう2年も前になります」
「2年前!! マジで!?」
「あ、はい」
『俺っ娘』なんだ・・・とは思いつつも、今は気にする所はそこじゃないと気持ちを切り替える。
2年前?! 俺がこの世界へ来たのは、俺の日にち感覚が正しければ、まだ1年には届かず10ヶ月くらいのはず。
いや、もしかしたらもう1年くらい経っているかも知れない。
だが、ムラサキがこの世界へ来たのが2年前だと言うのなら、ムラサキは、勇者召喚された勇者達や俺なんかよりも、センパイだと言う事になる。
だとしたなら、俺なんかよりもこの世界について詳しいはずである。
マジか・・・
「でも、なんで俺達のパーティーなんですか?
ここ魔族領なら俺達なんかよりも、もっと強いパーティーが、幾らでも見付かるでしょう?」
「そうでもありませんよ!
ああ、いえ、もちろん上には上が居ますが、魔族のパーティーにはなかなか入れませんよ(汗)」
「やっぱり、人族では不当な扱いとか・・・」
「いえいえ! その逆と言いますか、気を使われちゃうんですよね」
「はあ・・・」
「それに、魔族の冒険者パーティーともなると、大型勢がほとんどですからね!」
「大型勢・・・ですか?」
『大型勢』とは、魔族の中で身体が大きく力のとても強い者達の事を言う。
逆に『小型勢』と呼ばれる魔族達も居て、人族とほぼ同じくらいか又はもっと小さな身体の種族で、そんな小型勢となら、人族の混ざったパーティーなら、ちょくちょく見るらしい。
なので大型勢達は、身体の小さな人族達とパーティー組むと、気を使って受けられるはずの依頼も受け難くなる場合もあるとか・・・
また、その逆も然りだ。
なるほど・・・なかなか難しいものだな。
「それと、貴女達のような高レベルの人族なんて、魔族領にはそうそう居ませんよ
もちろん、大型勢ともなると話は別ですが・・・」
「そ・・・そうですか」
「それに!」
「!・・・それに?」
「俺は・・・いえ、私は貴方達を、ずっと見てきました」
「え?!・・・ずっとって、何時から・・・?」
「もう、1年近くになりますかね」
「そんなに?!」
あれ? 急に、言葉のトーンが柔らかになったな・・・
自称『俺』から、『私』に変わったのも妙だ。
なんだろう?・・・
それよりも、1年近くも俺を見ていた?!
だとしたら、俺がこの世界へ来てからずっと!?
驚きだ! なら、俺の事ならある程度を知っていると?
だったら、俺が日本人にしか解らない言葉や単語などを連発していたなら、そりゃあ日本人だとバレバレだな。
まあ、元日本人なら、すぐバレるわなあ、気付くよなあ。
だから、俺に近付いたのか。
当然、勇者召喚の事実も知っているはずだし、俺がその勇者召喚に巻き込まれてこの世界に来たのも知っている?
この世界の世情についても、俺なんかよりもよく知っているはず。
だが、そんなムラサキがなぜ今、俺のパーティーなんかに入りたいと言うのだろうか?
今までソロでやって来れたのだから、これまでの様に1人の方が気楽なのでは?
俺達がたまたま人族がメインのパーティーだったから?
俺が日本人だったから?
ここは魔族領である。
もしかしたら、俺達なんかよりも優れたパーティーが居ても不思議では無い。
もしかしたら、俺達の他にも日本人が居るかも知れない。
勇者パーティーだって居るのに・・・
今の俺は女の子の姿だが、本当の俺の姿を知っているはず。
なのに俺達を選んだのは、俺が日本人で年齢的にも近いからってところか。
それだけか? 勇者パーティーよりも、俺を選ぶ根拠は?
もしかして、『種生成』もバレている?
ヤバくね・・・?
トロは、恐る恐るきいてみた。
「もしかして・・・俺の秘密も知ってる・・・とか?」
「はい! 本当は、中年男性だということも・・・」
「はうわっ?!・・・」
「あと、不思議な種を生み出す、『固有スキル』も!」
「うがぅっ?!・・・ま、マジか・・・(汗)」
「トロ・・・(汗)」
「師匠、大丈夫ですか?」
「あうう・・・」
ガクガクブルブル・・・
トロは、初めて心の底から震えた。
マジヤバいと、ビビった。
ムラサキの手捌き1つで、俺の身柄の振り先も思いのまま。
もし、俺が『勇者召喚に巻き込まれた1人』であると、勇者召喚をした張本人のメルセンベルグ国王にバラされたら、捕まってメルセンベルグ王家のおもちゃにされるか、あるいわ消されるか・・・
コイツは、野放しにはできない!!
ムラサキがその気になれば、俺の足元に火をつける事など、何時でも何処でも可能であり容易いこと。
ムラサキが妙な動きをしないように、身近に置く方が無難か。
「わ、わかった! パーティーに入る事を許可する」
「「「「ええっ?!」」」」
「本当ですか! ありがとうございます!!」
「師匠っ! 正気ですか?!」
「ちょっとトロ! なんで?! この人が、まだどんな人かも分かってないのに!」
「そうですよ! 日本人って、トロさんが以前暮らしていた同じ国の人なのは分かりますが、いくらなんでも軽率すぎますよ!」
「そうですわあ! もっと、慎重になってくださいませ!」
「わかってるよ!」
「「「「!!・・・」」」」
「だがな、これも仕方ない事なんだ
まあ、この際だから、ムラサキさん?⋯にもハッキリ言わせてもらうが、俺はまだアンタを信用した訳じゃない」
「あ、はい もちろんです」
「アンタが元日本人ってのも、まだ完全に信じちゃいないが、俺の正体を知っているのは事実のようだ」
「そうですね」
「「「「・・・・・・」」」」
「だが、アンタを野放しにできないのも事実なんだ」
「・・・はい もちろん、そうでしようね?」
「「「「んんんん・・・・・・」」」」
「・・・アンタの事、身近に置いて監視させてもらうけど、いいよな?」
「はい かまいません!
私も、トロさんに信じてもらえるように、たとえ捨て石にされようとも、どんな酷いを扱いをされようとも、覚悟はできております!」
「・・・そんな、没落寸前の貧乏貴族令嬢の政略結婚じゃないんだからさ(汗)
それに、奴隷でもないんだから、そこまで思い詰めなくても良いが・・・」
「「「「ゔゔゔゔ~~~・・・」」」」
なんだか、面倒な事になってきた。
ムラサキと名乗る少女は、見た目はまだ15~6歳の女の子に見えるが、おそらく実年齢はもっと上だろうと思っていたら、やっぱりオジサンだった。
物怖じしないと言うか、不自然な程に妙に落ち着いた様子が、それを物語っている。
ムラサキが、どこまでトロの事を知っているのかは、今はまだ解らないが、とにかく野放しに放ってはおけない。
ムラサキを身近に置いて監視する事が、1番安心できる気がする。
もし、おかしな真似をしようものなら・・・小動物にでも変身させてやろうか。
などと考えてしまうが、どうかそのような事にならない事を願う。
って、我ながら物騒な事を考えてるな(汗)
もし、本当に元日本人なら、できる事なら仲良くなりたいものだ。
「みんな、すまない! だが・・・
ムラサキを身近に置く事は、俺の身一つだけではなく、お前達の身の安全と、俺達パーティーの存続も考慮しての判断なんだ
おいそれとは納得できないだろうが、どうか了承してくれないか?」
「う、うん・・・」
「・・・師匠が、そう言うなら」
「わかりました・・・」
「仕方ありませんわねぇ・・・」
「皆んな、すまない」
「皆さん、ありがとうございます!」
皆んな、渋々ではあるが、ムラサキをパーティーメンバーとして受け入れる事を承諾してくれた。
さて、今度はムラサキがこの世界へ来た訳について、詳しく聞いてみる。
「ええと、ムラサキ?・・・と、呼んでもいいか?」
「はい! そうしてください」
「君は、元日本人と言ったが、どんな経緯でこの世界へ来た・・・いや、来る事になったんだい?」
「それは・・・」
「ああ、いや! 日本での暮らしとかは、今はもう関係ない事だから、無理には話さなくてもいい
ただ、なぜ、どう言う理由で、この世界へ来たのかを知りたい
俺の場合は、勇者召喚に巻き込まれた訳なのだが・・・」
「はい・・・」
ムラサキは、この世界へ来た時の事をを話してくれた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
日本でのムラサキの名前は、『藤沢 清紫』とのこと。
名前の漢字の『紫』から、『ムラサキ』と名乗っているそうだ。
この世界へ来たのは、今から約2年ほど前のことだと言う。
ムラサキは、とある町の町工場で、『電気溶接』をメインとする仕事をしていた。
近年は、溶接も半自動溶接化や、機械での複式自動溶接化も進み、何処の工場も先を見越して複式自動化に転進。
だが、ムラサキの働いていた町工場は業績悪化の為に時代の波に乗れずに半自動止まりで複式自動溶接化には届いていない。
工場自体も存続が危ぶまれ、ムラサキ自身も進退を迫られる時期にきていた。
そんな時、やっと長期的に大きな仕事が入るようになり、給料も上がって、年収500万を超えるくらいになったそうな。
だが、『さあこれからだ!』って時だった。
ムラサキが機械の点検をしている時に、同僚の機械の運転禁止札の確認ミスにより、ムラサキが点検中の機械のスイッチを入れてしまった!
点検中の機械が突然動き出し、ムラサキは利き腕を機械のロールとアームの間に挟まれてしまって大怪我を負い、溶接の仕事ができなくなってしまったと言う。
なにせ、指、手の甲、手首、肘、肩、鎖骨、そして肋骨の数本が、見事にボキボキに折れてしまっていたそうだ。
直ぐに助け出されたので命の危険は無かったそうだが、完全に元の通りには治る見込みはなく、溶接の仕事への復帰は絶望的と言われてしまった。
よく首までいかず命は助かったものだと不幸中の幸いと言われたが、復帰は絶望と言われる程の大怪我だったので当然入院となり、退院できるほどの回復まで4ヶ月も仕事を休んでしまったらしい。
ムラサキを機械に巻き込んでしまった同僚は、酷く自分を責めて心を病んでしまう。
他の同僚や社長も引き止めたらしいが、ムラサキが退院するよりも先に工場を辞めてしまう。
同僚の確認ミスとは言え、同僚を自主退職へ追い込んでしまった事すら申し訳なくムラサキは思ったと言う。
ムラサキのする溶接の仕事は、機械の自動化が難しく、職人の技術がものを言う繊細なものである。
腕が使えないのでは、仕事にはならない。
つまり『約立たず』であり、ハッキリ言って工場にとっては、『お荷物』である。
工場の社長も気を使ってくれて、清掃班か安全監視員の仕事を回してくれるように言ってはくれたが、給料は4分の1以下となり、マイホームのローンを払えるほどの収入が無い事と、仕事仲間達からも哀れみの目で見られるのが不甲斐なくて居場所を無くした様で居た堪れなくなり、工場を辞めざるを得なかった。
仕事を辞めてからと言うもの、次の仕事がなかなか見付からなかった。
家族は、『ムラサキのせいではないから』と、庇う様に労わってくれたのだが、世間はそうは見てくれない。
専業主婦だった女房は、パートへと仕事へ出るようになったのに、ちょうど働き盛りと言われる世代の47歳アラフィフ突入男が昼間っから家を頻繁に出入りしていたら、『嫁に働かせて仕事もしないで遊び呆けているクズ夫』と、どこからともなく陰湿な噂を流され、近所では子供達も後指を差される、肩身の狭い思いを強いられていた。
家を頻繁に出入りしているのは、仕事を探して走り回っているからなのに。
噂が噂を呼んで歪んだ尾ひれまで付いて、家の玄関前にゴミを撒き散らされるイタズラをされる事もあった。
こんな時の世間とは、冷たいものだ。
はやく何とか、しなければ・・・
そうは思い気持ちは焦るも、溶接の仕事1本で生きてきた高校中退男に、他の仕事なんてやれる自信もなく、探す職種の枠も狭くなる。
やっと見付けたのが、昼間は配管工の仕事をして、夜は親戚の運送会社の倉庫番の手伝いの仕事。
それでやっと、生活がギリギリ回る程度の収入が得られたのだが、寝る間が3~4時間しか無く、休日出勤も率先して出ていたせいか、そんな生活を1年続けただけで、もう心体共にボロボロになってしまった。
畜生・・・。 あと10歳若ければ・・・。
思い起こせば、絵に描いたような、山あり谷ありな人生だった。
高校に入ってすぐ、父親が不運の事故で呆気なく亡くなり、母子2人の生活に。
専業主婦だった母親はすぐにパートの掛け持ちを始めたが、2年後に働きずくめのせいで身体を壊し、みるみるうちに激痩せして入院。
そこで、運が良いのか悪いのか大腸がんが見付かり、手術後高額な抗がん剤での投薬治療が開始。
仕方なく高校を中退してムラサキが働く事になり、そこで父親と仲が良かった町工場の社長に勧められて溶接工となって、『溶接を極めれば稼げる』と言われて溶接を本格的に修行。
『JIS規格』の溶接の国家資格を次々と取得し、手先が器用だったのかドンドン腕は上がりトントン拍子に出世して、『〇〇町には藤沢あり』とまで言われるほどの凄腕溶接技能所持者へと成長。
そして母親も無事に治療を完了して、パートに出られるくらいに回復した。
母親も術後5年経ったが、がんの再発は認められないので、一安心だった。
この頃に付き合いだした彼女(工場の事務員)と結婚もした。
子供も一姫二太郎の2人生まれて、いよいよ娘が高校へ進学って時に、工場で事故に遭ってしまった。
それでも何とか這いつくばるように頑張って、やっと新しい暮らしも軌道に乗ってきたかと思っていたその時!
夜の倉庫番の仕事終わりに、会社を出て駐車場へと向かう交差点での信号待ちの時だった。
信号が青になり横断歩道を歩き出すと、なぜか自分以外は誰も歩き出さない。
あれ?・・・と思って振り向いたら、ムラサキ以外は誰もいなかった。
そして、高速で近付いてくる自動二輪の爆音に気付きハッと思った瞬間!
信号無視の自動二輪に当てられて、吹っ飛んで倒れた時に後頭部を縁石に強打。
弾みで転倒した自動二輪のライダーは、被害者であるムラサキを助ける事もせずに、慌てて逃げてしまった。
打ちどころが悪かったのか、まったく身体が動かず、星一つ見えない暗い天を見上げたまんま、ただただ呆然。
痛みなどは、まったく感じられなかった。
なので、今自分がどんな状況に居るのかも理解できなかった。
感じられたのは、身動き出来ない身体の冷たさと重さと寒さと眠気だけ。
誰も居ない交差点にムラサキがたった1人だったために、発見が遅れてたのが運命の分かれ道だったそうだ。
1時間後にやっと、ムラサキが倒れている所を通行人に発見されて、その15分後に救急車の音を遠くに微かに聞くが、その時、なんとなく人生の終わりを悟ってしまった。
けっして楽ではなかったし、辛く厳しくも、妻も子もできて自分の家族ができた事に、自分なりに幸せな人生だったと思い出していた。
このまま自分が死んだら、保険の遺族保証がシッカリしているから、なんとかなるだろうと、残した家族には悪いがそう思った。
『俺も親父みたいな人生だったな』と、家族へは思いの外早く先ゆく不幸だけを恨んだものだ。
救急車から救急隊員が駆け寄って来るなか、急に大粒の雨が降ってきて、雨のせいなのか涙のせいなのか、視界がユラユラと揺らめいてきたら気が遠くなってきた。
意識が薄れていくときに、誰かに呼ばれた気がしたが、今となっては何も思い出せない。
そして気が付いたら、この剣と魔法の異世界ムトランティアだった。
最初に見たのは神官の顔であり、話しを聞くと、ここは魔族領のイノセント王国との国境の村チレカの教会のベッドの上だった。
訳が分からずオロオロしていると、神官に言われたのが、『復活手数料として1億Tiaを支払え』との事だった。
もう、何が何だか解らない。
『ここは地球では⋯日本ではないのか?』の質問に、神官が『ムトランティアですよ』と答えた時には、思考回路がしばらくフリーズした。
とにかく、後頭部の大きな怪我が、通常のポーションでは間に合わず、仕方なく復活の際に使った『女装剤』のために身体が女の子に変身してしまっていた。
実際に後頭部の怪我が治り、汚れた身体を教会の少女達が綺麗に清拭してくれたが、その時 身体が女の子に変身していたのを自分で確認した時は、これはまだ夢を見ているんだと思っていた。
その後も何日も何日も夢は覚めず、それよりも復活手数料として1億Tiaを稼がなければならず、1年間教会で聖女として働き、立派な聖女となって1億Tiaの借金を完済した頃には、これは現実だと信じるしかなかった。
それから冒険者として世界を回るようになったと言う。
またそれからしばらく経って、人族領の魔導国家メルセンベルグ王国で『勇者召喚』が行われたとの噂を聞き、調べてみると召喚された者達とは、特徴から推察すると『日本人』だったと知る。
なんでも勇者召喚とは、メルセンベルグ王国の国王が代々代わる度に行われていたらしい。
だが、今代の国王の勇者召喚は失敗してしまい、おバカなイスヤリヤ国王に召喚された勇者達は飛ばされたらしいと知る。
そして、急いで召喚された勇者達の足取りを追うと、どうやら毎回4人だったはずの召喚された勇者は、今代の国王の勝手な判断で5人の勇者の召喚を試したそうだ。
それが召喚失敗の原因と思われた。
だが、実際には4人しか確認されておらず、実は5人目が別に居たのではないかと考え、ムラサキは5人目の勇者の足取りを追った。
そして、トロの存在を知る事となった。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
と、そんな話しを聞かせてくれた。
ちょっと、待て!
本当なら勇者召喚は4人のはずだった?!
なのに今回の召喚には5人を予定していて、それは今代のメルセンベルグ国王の勝手な判断で、4人分の召喚魔力で5人も召喚しようとしたのが失敗の原因だとか?
バカなのか? そりゃあ、どう考えても普通に失敗するだろ!
ムラサキによると、メルセンベルグ国王の召喚魔法はなんとか5人の召喚には成功したが、指定された召喚場所には魔力が足りず失敗した原因の1つなのでは?と言っていた。
他の召喚失敗の原因を調べた結果・・・
①今代のメルセンベルグ国王は、勇者召喚について勉強不足で理解が足りなかった。
②4人分の召喚魔力で5人の召喚を試みた。
③勇者召喚に利用するためコンビニの自動ドアが異世界への転移ゲートとなり、最寄りの適正年齢と性別の検索結果4人の学生が選ばれたが、予定外の5人目に選ばれたのがトロだったのは、たまたま召喚有効範囲内に居たからと思われる。
④召喚するはずの職業は、1人目が勇者、2人目が聖騎士、3人目がプリースト、4人目が大魔道士だったが、5人目は指定していなかったので魔法使いとテイマーとを併せ持つ特殊な職種となり、固有スキルは鑑定スキル+ランダムとなった。
⑤召喚終了間際で、魔力が足りないと判明し、慌てて魔力を補うために魔晶石を大量に魔法陣に投げ込み、魔法陣の定格魔力量を想定以上に超えたために魔法陣が崩壊し、勇者達はイスヤリヤ王国に投げ出されてしまった。
⑥そもそも勇者召喚魔法陣には4人の召喚命令プログラムしか記されていないにも関わらず、5人の勇者を召喚すると詠唱してエラーが発生した。
⑦メルセンベルグ国王は、5人の勇者召喚には失敗して4人しか召喚できなかったと誤認した。
⑧4人の勇者達は、トロは勇者召喚に巻き込まれただけの無関係の人間だとして誰にも話さなかった。
⑨今代のメルセンベルグ国王は真性の大バカである。
︰
⑩
︰
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
と、考えれば考えるほど、失敗した原因と思われる事柄が次々と浮上すると言う。
だがもし、召喚自体に失敗していたなら、最後の5人目となるトロは、時空の狭間で引き裂かれて命を落とすか、別の異世界へ飛ばされていたか、精神か肉体のどちらかだけを召喚されていた可能性もあったと言う。
物騒だな・・・怖っ!
だから、イスヤリヤ王国へ飛ばされたのか!
だが一応は、5人の召喚には成功したお陰なのか、トロは死なずに済んだが、勇者共々本来呼び出されるはずの場所とはかけ離れたイスヤリヤ王国の何にも無い野っ原な場所へ飛ばされてしまった。
でも、そのエラーのお陰で、トロには完全チートな固有スキル『種生成』が付与された。
いやいやいや! 俺の事など今はどうでもいい!
名前が、『藤沢 清紫』だと? 既婚者?! 父親だって?!
ムラサキって、本当に男だったのか!!
ってか、孫が居ても不思議じゃない歳じゃないか!
「待って! 待て待て待て!」
「はい?」
「ムラサキは、俺が5人目の召喚された勇者だと気付いたまでは良しとしよう
だが、ムラサキよ!
アンタ、本当に男だったのか?!」
「はい そうですよ? 47歳既婚2人の子持ちでした」
「こもちぃ~~~?! がああああああ━━━ん!!!」
「「「「へえっ?!」」」」
「な、なによ?! ど、どうしたのよトロ!!」
「し、師匠お?!」
「トロさん? トロさあ━━━ん!」
「瞳孔が開いてますわあ!」
「え? えええええっ?! 大丈夫ですか?」
トロは、その場にヘナヘナと崩れ落ちた・・・
トロは、崖っぷちから突き落とされた気分だった。
ムラサキも元は日本人だったのは良いが、実はオッサンだったとは!
しかも、既婚者2人の子持ちだとお?!
俺は、結婚なんてクズファミリーのせいで幻想と言うかミラクルだった。(?)
なのにムラサキは2人の子持ちで、そんなオッサンが今は女の子に?
俺が言うのもなんだけど、本当にオッサンだったの?!
こんなに可愛いのに?
元は男だった頃の容姿は分からないが、自分よりも可愛い女の子なのが許せぬ!!(なんのこっちゃ)
「マジでオッサンだったのか!!」
「はい! こう見えても子持ちのオッサンです」
「こんなに可愛いのに?!」
「トロの気にするところはソコ?!」
「し、師匠?」
「トロさん、壊れた?」
「ご愁傷さまですわあ」
「うるせぇーよ!!」
「落ち着いてください!」
「と、とにかく、ムラサキさんのステータスを見せてもらいますね?」
「はい どうぞ 隠蔽と隠匿を解除・・・」
ブォン・・・
「んあっ?!」
なんと! ムラサキのステータスを見て驚愕した!!
■===========■
・⋯━☞STATUS☜━⋯・
■===========■
名前 ムラサキ
性別 女
年齢 49
種族 人族
職業 Kikitey's Apostle(キキティの使徒)
・⋯━━☆★☆━━⋯・
状態
【健康】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
LV 1002
HP 1017
MP 1506
STR 1004
ATK 1257
DEF 830
DEX 1031
INT 1757
MAT 905
SPD 630
LUK 442
EXP 39899344
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得魔法
【ストレージ∞】【ヒールLv12】【ハイ・ヒールLv10】
【パーフェクト・ヒールLv10】【リバイバルLv5】
【ファイヤー・ボールLv13】【ウォーター・ボールLv12】
【エアー・カッターLv9】【アース・ニードルLv9】
【アース・ウォールLv9】【テレポーテーションLv14】
【ワープLv15】【ブラックホールLv13】【コメットLv5】
【エクスプローションLv9】【シールド・バリアLv12】
【全ステータス強化魔法Lv11】【全ステータス弱化魔法Lv12】
【ライト・セイバーLv15】【フラッシュLv10】
【状態異常回復魔法Lv8】【ピュリフィケーションLv12】
【付与魔法Lv15】【誘導ファイヤー・ボールLv9】
【奴隷/呪い解除魔法Lv4】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得スキル
【ステータス∞】【鑑定Lv∞】【異空間収納∞】【剣術Lv14】
【熱耐性Lv12】【冷耐性Lv12】【物理耐性Lv11】
【魔法耐性Lv10】【索敵Lv12】【恐怖耐性Lv10】
【麻痺耐性Lv10】【呪い耐性Lv10】【魅了耐性Lv15】
【混乱耐性Lv12】【隷属耐性Lv13】【石化耐性Lv10】
【即死耐性Lv14】【幻覚耐性Lv15】【洗脳耐性Lv15】
【毒耐性Lv12】【限界突破Lv12】【隠匿Lv9】【隠密Lv8】
【遠視Lv9】【索敵Lv12】【眠り耐性Lv15】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
称号
【ムトランティア創造神気まぐれ召喚異世界人】
【ヘビーモス・スレイヤー】【デーモン・スレイヤー】
【ドラゴン・スレイヤー】【総合エンジニア】
【頑張るお父さん】【嫁さんラブ】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
資格
【普通自動車(MT)】【大型自動車一種、二種】【牽引】
【2t以上クレーン】【2t以上ウインチ】【玉掛け】
【危険物】【〇〇工場作業主任者】【アーク溶接各種】
【アルゴン溶接】【ガス溶接】【半自動溶接】
【ダイヤモンド級冒険者(隠蔽・隠匿サファイヤ級)】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
■===========■
「なななななっ!・・・なんだこりゃあ?!」
「えっ?! なになになに?!」
「どうしたんですか師匠?!」
「え? なんですか?」
「はへっ?! なんですの???」
「すっ・・・ステータスだよ!
ムラサキのステータスってば、規格外にも程がある!!」
「「「「えっ?!」」」」
トロの驚きの言葉に、ナディー達もムラサキのステータスをみてみた。
そして驚いた!!
トロもそうだが、ナディー達も、絶賛混乱中~~~
なにせ、ステータスのレベルは、最高で10でカンストだと思っていたのに、10を超える数値が多かったのだ。
しかし、たった2年でここまで成長できるものなのか?!
しかも、冒険者としては最高クラスの『ダイヤモンド級』である。
こんな奴が居たなんて・・・(焦)
「ムラサキ! なんだよそのステータスは?!」
「ああ、はい ただただ、我武者羅に生きてきただけなんですが、こうなっちゃいました」
「っはあっ?! 我武者羅って・・・
言われてみれば、俺は自由勝手なって感じだったな・・・(汗)
でもよくそれ程の実力を持っていても、国に取り込まれたりしなかったな?」
「はい? それは、どういう事ですか?」
「いや、だから、ほら!
高ランク冒険者ともなると、『英雄』とか勝手に称号を与えて国や騎士団に仕えろとか命令されたりしない?」
「いえ! 俺はそんな面倒な事は大嫌いなので、レベルは隠匿してますよ
戦争などに使われるなんて、絶対に嫌ですからね」
「!・・・なるほど」
あれれ? また自称が『俺』に戻ってる。 まあいいか。
ムラサキも、国や騎士団に使い潰されるのは嫌なようだ。
そりゃそうだ。
大半の冒険者達は、自由を求めて生きている。
国や騎士団に仕えると安定した収入が得られるのは約束されるが、自由はきっと無くなる。
戦争になれば、真っ先に使わなければ損と言わんばかりに、『使い捨てのコマ』の様に利用されるに違いない。
『英雄』なんて称号を与えられ国に取り込まれでもしたら、それこそ自由なんて無いに等しく拒否も出来なければ逃げられるはずがない。
そんなのは、真っ平御免だ。
その点は、気が合うようだ。
だが、ムラサキのレベルを知った時点で、トロにはムラサキを好敵手に認定!
トロは密かに、ムラサキへのライバル心を燃やすのだった。
だが、トロにとってムラサキは、敵ではないと確信できたのだった。
元日本人の転生者のムラサキは、元47歳の既婚者で2人の子持ちだった。
しかも、トロよりも可愛い女の子になっていた!(トロ的主観)




