第52話 宿屋海賊船にて
宿屋は海賊船。
中も海賊船だらけ。
・⋯━☞リクツネフ南東部☜━⋯・
トロ達が、桃色珊瑚亭から出て1時間ほど歩いた頃、すっかり暗くなって空にはドロドロした雨雲が空を覆っていた。
雨の匂いがする。これは、一雨きそうな雰囲気。
早いとこ次の宿を見付けなきゃ、ずぶ濡れになって街中を歩く事とになる。
一応傘も種生成で作ってはいるが、傘を使わないこの世界では傘は目立つので、あまり使いたくない。
以前にも、雨の日ではなかったが、傘の使い方を教えるために傘をさして見せたら、ナディーに笑われた事があった。
傘自体が存在しない世界なので、滑稽に見えたのだろう。
この世界では、雨の日には革製のフード付きのマントを羽織るのが常識のようだ。
『雨の日は濡れて当たり前』
・・・の、様である。
外国人でも、そうらしい。
雨の日は傘などささずに、バッグなどを頭に乗せて雨宿りできる場所まで走るのだそうだ。
大切な書類などが入ったバッグだったら濡らしたらヤバいのでは?と思ってしまう。
そもそも日本人とは、何事も対策をねって準備するものであり、学校でもそう習うものである。
雨が降ると予報があれば、傘を準備するのが普通である。
だが、外国人は傘を持ち歩くこと自体が面倒でダサいと考えるのだそうだ。
それに日本人は通常の体温(平熱)が低いので、濡れると簡単に風邪をひくのだが、特に欧米人は体温が高く気候も少し濡れたくらいでは乾きやすい環境なため、濡れることにあまり不快感を感じないらしい。
なので、熱が38℃も出たとしたなら日本人としては絶不調であり学校や仕事を休もうと考えるところだが、もし欧米で日本人が『今日は熱が38℃あるから』などと言っても、『それがどうした?』と思われてしまうんだとか。
日本人としては、あまり受け入れられない常識である。
またこの世界も、人族も魔族も関係ないらしい。
人間として、雨の日は濡れて当たり前だなんて、それってどうなんだ?と思う。
野良犬じゃないんだから、少しくらい濡れない対策しろよと。
常識も考え方も違うのだから、仕方ないのだが・・・
そんな事を考えていたら、一気に雨が降ってきた!
ピチャ!
「あっ! 降ってきたぞ!」
ピチャ! ピチャピチャ! バタバタバタバタバタッ!
ドザァ━━━━━━ッ!!
「「「わぁー!」」」
「「きゃあー!」」
「また走るぞ!!」
「「「「はい!!」」」」
ビチャ!ビチャ!ビチャ!ビチャ!
結局、また走る羽目に。
しかし、なんなんだこの南国の雨季みたいな大雨は?!
あっという間に、足元が水浸しになっていく。
実はこの世界は、あまり雨は降らないのだが、振る時は親の仇みたいに降る!
その代わり、雨が降りそうな場合は、真っ黒な雨雲がハッキリと見えるので、雨が近いとすぐに分かるらしい。
なので、『天気予報』などと気の利いたものは無い。
フードを被って前かがみになりながら走っていると、大きな船のようなシルエットが見えた!
そのシルエットの前に、ちょっとした雨宿りできそうなイートイン・スペースの様な場所があったので、そこへ逃げ込むように入ると、そこが宿屋だった。
門前宿は高級感あって快適だったが、どうにもトロには高級感っつーものが肌に合わない。
根っからの庶民肌なトロである。
なので、もっと庶民的な宿屋は無いかと、探しているのだ。
道行く人達に聞いた話しでは、もうすぐ比較的安価な宿屋があるらしいのだが、確かその名は『海賊船』だったか?
なんとも男としては、ワクワクする名だな?
今の身体は女の子だけど・・・
とうの昔に枯れてしまった童心が蘇るか?
などと思っていたら見えてきたのが、その宿屋の外観を見てガツン!ときた!
「なんだこりゃ?! 海賊船をそのまま宿にしたのか?!」
「ほえぇえぇえぇ~~~(汗)」
「これは、なんと言いますか、入る勇気が要りますわねぇ?」
「ここに入るの?」
「ゔっ・・・ま、まあ、安い宿屋らしいからな
外観はこうだが、中は意外と・・・い、いいかもよ?」
「「「「・・・(汗)」」」」
なんとまあ! 絵に描いた様な海賊船!
船が地面埋まってる様な感じだ。
ご丁寧ににも、海賊あるあるのドクロのエンブレムの旗まで!
トロは、『そうだったらいいな』ってな期待を込めて言った言葉だったが、中までまんま海賊船!!
甲板をモチーフしたのか、黒光りした板張りの床に、部屋の中心部にマストをイメージしたのか、ぶっとい円柱の柱が天井に突き抜ける様に立っている。
カウンターの奥の壁には、操舵輪が飾られていた。
その両隣には、海洋地図らしきものと、宝の地図っぽいのも壁に貼られていた。
これは、面白い!!
トロは慌てて、またオッサンの姿へ戻る。
海賊と言えば、やっぱり『海の男』だろう。フフッ♪
思わず、海賊っぽいコスでもしようかと考えたがやめた。
流石に、ちと恥ずかしい。
そしてトロ達は、ずぶ濡れになった身体や服の水分を、タオルで粗方拭き取ると、風と炎魔法を魔力操作で調整して、仲間達も乾かしてあげた。
・⋯━☞宿海賊船店内☜━⋯・
「っほおおお━━━っ!!」
「うっわあ~~~! なかなかいいんじゃない?」
「うわっ! 店員まで海賊っぽいコスしてるし!」
「あははっ! 面白いですわあ!」
「あはは・・・(汗)」
出迎えてくれたのは、海賊の乗組員のようなコスをした受付嬢だった。
そう。見た目は男のような格好だが、女の子だったのだ。
頭には布をぐるぐると巻き、右目に黒いアイパッチを着け、腰の紐には刃の無い短剣を差し、頬には大きな縫い傷のようなメイクまでしていた。
なにせ声が、見た目に反して1オクターブ高い。
まさに血の気の多い海賊! そんな容姿だ。
なのに、声が女の子なので、そこがまた可愛らしい。
女の子が海賊のコスをするのがまたいいもんだ。
だが・・・
「いらっしゃい! 皆さん、お泊まりで?」
「お、お、おう えっと、一般5名と、従魔7名です(汗)」
「へっへっへっ そお~ですかい? へっへっへっ」
「「「「「・・・・・・・・・(汗)」」」」」
なんだか不穏な雰囲気がプンプンするのだが・・・
寝込みを襲われ身ぐるみ剥がされ、簀巻きにされて海に捨てられるのでは?
などと、勘ぐってしまう。
そこまで忠実に海賊を演じなくても良いのでは?
これも演出なのだろうが、あまり行き過ぎるとウザくなる。
などと思いながらも、チェックインをする。
「この宿は、大部屋以外は全ての部屋が1人部屋となってますんで、部屋割りはよく考えてくれよな!」
「え? あ、うん、はい・・・(汗)」
「一人部屋は2階に、大部屋は3階となってるぜ!」
「な、なるほど・・・(汗)
えっと~~~それなら~~~(汗)」
トロとナディーには従魔が居るので、2人は大部屋にし、ワイサとクレオとエヴァは個室に決めた。
そして受け取った部屋の鍵がまた面白かった!
「へぇへぇへぇ これが部屋の鍵ですぜ」
チャラッ・・・
「うほっ! フックだよコレ!」
「私のは、カジよ!」
「操舵輪って呼ぶんだよ」
「ソウダリン? へえ~~~面白いわね!」
「僕のはドクロだよ(汗)」
「ぷわはっ! 俺は、長剣かな?」
「わたくしには、変な形をしたナイフですわあ!」
「「「「うわあ~~~いいなあ~~~!」」」」
「うふふふ♪」
すると受付嬢が、トロ達に渡した鍵の使い方を説明してくれた。
「貴女の鍵はフックとなっておりますので、鍵穴に差し込んで鎖を引っ張ってくださいね!
ガチャン!と鳴ったらカギが開いた合図です!」
「ほほお! それは面白い!」
「そして貴女、貴女の鍵は操舵輪となっておりますので、ドアの鍵の部分に差し込んで、ガチャン!と鳴るまでめいっぱい左へ回してくださいね!」
「うふっ♪ 楽しそう!」
「そして貴女、貴女の鍵はドクロとなっておりますので、ドクロの下顎を外して鍵の型に合わせてはめ込んで、左へ回してくださいね!
鍵が開けば、ケタケタと笑い声が聞こえますから!」
「へえ~~~そんな仕組みなんだ?
笑い声?! なんだか不気味だな・・・(汗)」
「あはは・・・(汗)」
「そして貴女のは長剣ですね! ドアにサヤがありますので、そのサヤに長剣を納めて、左へクルリと回してくださいね!
鍵が開けば、男の悲鳴が聞こえます!」
「・・・もっと、人道的な反応はないの?」
「「「「クスクス・・・♪」」」」
「そして貴女、貴女の鍵はナイフになっておりますので、ドアの切れ目にナイフを差し込んで、ドアの鍵を開けてくださいね!」
「・・・もしかして、また悲鳴とか(汗)」
「「「「・・・(汗)」」」」
「鍵が空くと、シャキーン!って音がします!」
「!・・・思ってたより反応が普通ですのね(汗)」
「「「「ぷぷぷ・・・♪」」」」
エヴァったら、何を期待していたのか・・・(汗)
トロ達は、受け取った鍵を見てワイワイとはしゃいでいた。
まるで遊園地のアトラクションを前にしてワクワクと興奮している子供のような心境だった。
これは楽しい! 部屋も期待できそうだ!
「お食事は、申し訳ありませんが時間的に簡単な物しか作れませんが・・・」
「ああ、全然構わないよ!
それより、さっきと違って、言葉遣いが普通になってるんだが・・・」
「うふふ♪ 流石にずっと海賊を意識してますと、気分を悪くするお客様も居りますので、控えめにしております
それに、私達も疲れちゃいますからね!」
「あははっ! なるほど!」
「あ、それと!
朝、朝食の準備ができましたら、部屋ベルを鳴らしますので、皆さん降りて来てくださいね?
他にご用がありましたら、直接お部屋へお伺いしますので」
「ん! わかったよ! って、君は女の子だったんだね!」
「うふふ♪ 分かりました?」
「そりゃあ、分かるよお!
海賊に扮した女の子も、なかなか可愛いもんだね」
「やだ! そ、そうかな・・・(照)」
「あっはっは! では、一旦部屋に行くとするよ」
「はい ごゆっくり~~~」
そう言って、トロは2回への階段へと向かう。
ところが・・・
ギュムッ!!
「あいだだだだだっ!! な、なんだよナディー?!」
「ふん!」
「・・・はあ?」
いきなりナディーが、トロのお尻を思い切りツネったのだ。
手加減無しの思い切りだったので、痛いのなんのって・・・(汗)
急に機嫌を悪くして、一体どうしたって言うんだ?
「なんだよ? どうしたんだよナディー?」
「なんでもなぁい!!」
「・・・(汗)」
ナディーにしてみれは、他の女の子と仲良さげに話しをするトロにムカついたのだった。
まるで、他の女の子に話しをするだけで嫉妬する彼女のようだ。
トロも、そんなナディーの気持ちに気付かないほど疎くはない。
「なんだよ 相手は受付じゃないか~
お互いに滞る事のないように、愛想良くしているだけだよ」
「そうかしら? 鼻の下を伸ばしちゃって! ふん!」
「ちょっ! お、おい(汗)」
タッタッタッタッ・・・
「はあ・・・参ったなこりゃ(汗)」
「「「・・・(汗)」」」
そう言って、ナディーは足早に我先と上の階へと階段を駆け上って行った。
完全に、気分を害してしまったようだ。
こんな事は初めてではなかったが、この頃は以前より嫉妬?な態度が強く出ている気もする。
ここまで想われていたとは・・・(汗)
トロは、改めてナディーからの気持ちに考えた。
どうしたものか・・・
歳の差を考えると、どうしても1歩踏み込めない。
それに、仲間に手を出すなんて、倫理的によろしくない。
正直な気持ち、『ナディーさえ良いと言うなら・・・』と、『今まで手に届くようで届かなかった春が来たかー!』などと考えてしまうが、頭をブンブン振ってそんな気持ちをかき消す!
「はあ・・・はてさて、どうしたものか(悩)」
「どうしたんですか師匠?」
「いやいや、なんでもない! なんでもないよ・・・(照)」
「「「ふぅん?」」」
ヤバいヤバい・・・(汗)
やっぱり、いくら中年層とはいえ男の身体では、邪な事を考えしまう。
ここは、女の身体の方がやり過ごせそうか・・・
そう思った瞬間には、またトロの身体は女の子に変身していた。
ポン!
「「「あっ?!」」」
「!・・・(汗)」
「あれれ? なんで?」
「あ、いや・・・(汗)」
「どうしてトロさんは、また女の子に変わっちゃったのです?」
「いやはは・・・な、なん、なんでだろう~なあ~~~
あははぁ~~~(汗)」
「「「・・・・・・???」」」
トロが女の子に変身したのは、無意識な自己規制反応だ。
どんなに理性で性的興奮を抑えようとも、それなりの雰囲気になれば、またナディーの気持ちが一線を越えれば、自分でもその場の気持ちを抑え切れるかどうか分からない。
いや、でも、相手はまだ16歳だ。
とは言え、この世界ではもう立派な成人な訳だ。
ナディーさえ、その気になれば・・・って、いかんいかん!!
こんな事を考えている時点で、自分を抑えられなくなるのは必然!
なんて考えていたら、女の子に変身していた。
でもまあ、女の子の姿で居たなら、不思議と男としての性的興奮度は、かなり低くなるように思う。
仕方ない・・・また、暫くは女の子の姿で活動するとしよう。
「ん・・・まあ、部屋へ行くか?」
「「はい・・・」」
こうしてトロ達も、2階への階段と向かった。
・⋯━☞宿屋海賊船2階☜━⋯・
「きゃはははははっ!!」
「「「?!」」」
ビクッ!
突然、クレオがバカ笑いをする。
思わず皆んな、ビクッ!とした。
「うわっ! なんだ?! びっくりしたあ!
なんだよクレオ どうした急に???」
「だって、本当に海賊船みたいなんだもん!
ってか、海賊船なんて見た事ないけど~~~」
「「あはははははっ! 確かに!」」
「ほら! 見てくださいよトロさん!」
「え? なんだ?」
「ほらほら! ドクロの顎が、本当に鍵になってるんですよ!
おっもしろぉ~~~い! きゃははははははっ!」
「なんだよ、そんな事でバカ笑していたのか?
まったく本当に、まだまだ子供だなあ~~~(笑)
あはははははははっ!」
「だってえ~~~きゃははははははっ!!」
「クスクスクスクスッ(笑)」
クレオのおバカなリアクションに、トロも少し気が晴れてきた。
もしかしたらクレオは、トロとナディーとのこじれを理解していて、わざとボケて笑いを誘ってくれたのかも?
そしてトロ達は大部屋のある3階へ、ワイサ達は2階の各々の1人部屋へと入った。
しかし、この宿屋海賊船とは、本当に面白い造りだ。
・⋯━☞宿屋海賊船3階☜━⋯・
・⋯━☞フックの部屋☜━⋯・
「はあ~~~━━━・・・」
「なんなんですかこの部屋?」
「海賊船の船長のフックの部屋・・・なのでしょうな?」
「おっ! 知ってるなロプロプ?」
「ご主人様の、魔導ネット?で観ましたからな!」
「・・・なるほど」
「よく分からないけど、面白いねえ」
「ガラクタがいっぱいだにゃあ」
「ガラクタ・・・って(汗)」
確かにミケの言うように、ガラクタにまみれた部屋だった。
『フックの部屋』らしいが、特に海賊のフック船長をイメージすれ物は見当たらない。
って言うか、フックに関係なく、ただ海賊船の中をイメージしただけだな。
部屋の隅々には宝箱が幾つか置かれていて、その中の1つが蓋が開いていて、金貨や宝石などがザックザク!
でも、作り物のオブジェらしく、金貨や宝石は取れなかった。
当たり前か・・・これはただの演出であり作り物だ。
なぜか何も入っていない空の鳥籠が置かれており、それはおそらく、ネズミーアニメの『ピーパータン』に登場する『ティンカーペル』が入れられていた物を模してるのだろう。
ふむふむ。この世界にも、『ネズミー』が知られているのだな。
いやいや! この世界を作った奴は、絶対にネズミーアニメを知ってる奴だろ!!
って、ツッコミたくかるが置いといて・・・
木製のテーブルには、どこかの海図とコンパスなどが置かれている。
どれもテーブルにくっ付いていて取れないし動かせない。
やはり、雰囲気作りのオブジェのようだ。
そんな中、ベッドが5台並んでいた。
そしてベッドとベッドの間はパーティションで区切られ、小さなテーブルと椅子が設置されている。
大部屋とは言え、最低限のプライバシーは守れそうだ。
ってか、昔の病院の大部屋だなこりゃ・・・(汗)
微かに覚えている子供の頃の記憶に、知り合いの見舞いに行った病院を思い出す。
小学校へ上がる頃には、その病院も鉄筋コンクリートに変わってしまったが。
荷物を仕舞う棚の代わりなのか、空の宝箱があった。
面白いな。一応貴重品も入れられるようにか鍵が付いてある。
そして部屋着は思った通り、海賊の下っ端が着るような服だった。
それは流石にいらねぇ~~~(汗)
ってか、ここはフックの部屋なのだから、用意するならフック船長に因んだ服じゃね?
でも、全員がフックのコスだと、それもおなしくね?みたいな・・・
なんてツッコミたくなったが、服なんて種生成でなんでも思い通りの物が作れるから、正直どうでもいい。
それはそうと!
ナディーは、今何してる?
何となく気になったので、ドアを開けて廊下を覗いてみたが、ナディーの部屋である『操舵輪の部屋』の前は、シーン・・・と静まり返っていた。
声を掛ける勇気は・・・無い(汗)
今はまだ、そっとしておくか・・・
そう思ってトロは、頭を引っ込めようとしたその時!!
突然、後ろへ強く引っ張られた!!
グイッ!!
「きゃあ!!」
バタァン! バタバタバタバタッ・・・ドサッ!!
「きゃふっ!! な、なんだ?!」
突然、後ろ襟首を引っ張られて、ドアが荒々しく閉じられると、身体がフワッと持ち上げられ、ベッドの上に投げられた!
「ふふふふ・・・ご主人様、随分とご無沙汰ですね?」
「そうですぞ!! 随分と、待たせてくれましたな?」
「・・・(汗)」
いきなり何事かと思えば、トロはロンデルとロプロプに抱えられて、ベッドに乗せられ2人に抑えられていた。
そしていつの間にかロンデルとロプロプは、男の姿に変化していた。
本当に久しぶりだったので、冷や汗が流れ、少し恐怖した。
まさか・・・今ここで?
「な、なんだ・・・(汗)」
「なんだって、もう随分とご無沙汰してますが?」
「!・・・な、だ、だから何だよ?」
「それは、ツレないですな! 解ってるくせに!」
「へっ?・・・(汗)」
「ま、そういう訳で・・・」
「何が、そういう訳なんだよ?!」
「では、覚悟してくださいね!」
「わっ! ちょっ! まっ!
しまった! 今の俺、女の子だったあ!
おっおいっ! ロキシー! ミケ! 助けてくれぇ!!」
「「遮音結界!」」
「んなっ?! こっ、こらあ━━━っ!
お前らあ━━━っ!! この薄情者お━━━っ!!」
「先輩の命令には逆らえないのです」
「っはあ?! っておい! 俺はお前達のご主人様だぞ!
先輩達よりも、俺を先に気遣えっ!!」
「「聞こえない~~~聞こえない~~~」」
「ちょっ、おおおいっ!!(汗)」
「「いただいま━━━っす!」」
「ちょちょちょっ! 待って! きゃああああ~~~!!」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
トロは、ロンデルとロプロプに久しぶりに食われました。
••✼••翌朝••✼••
バンバンバン!
《トロ! トロ━━━っ! まだ寝てるの━━━っ?!》
「ゔお”っ?!・・・」
突然、ナディーの大声でトロの名を呼ぶ声に起こされた。
だが、身体中が痛くて動けない。
特に、下半身が・・・腰が・・・股関節が・・・(汗)
久しぶりにロンデルとロプロプに食い散らかされたので、もう身体がボロボロだ。
前も後ろも痛くて堪らない・・・
これだけ食い散らかされて、よく壊れなかったものだ。
まるで磨りガラスを通して見ているように視界も悪く、一晩中食われたせいか目にも来ているようだ。
「ご主人様ぁ~~~ナディー殿がお呼びですぞぉ~~~」
「ゔゔん・・・わかってるけど・・・(震)」
《ねえ! トロってばあ━━━っっ!》
バンバンバンバン!
「あ”あ”あ”もお~~~!!
なんでこんなピチピチな若い身体で、アラフィフおっさんみたいな疲れが残るんだ~~~(汗)
お前達! 暴れすぎだ! もっと労わってくれ!!」
「久しぶりだったので、つい・・・(汗)」
「とても美味かったですぞ! 満足ですな!」
「こいつら・・・(汗) とにかく・・・ヒール!!」
シュワアン!・・・
トロは、仕方なく自分にヒールをかけて、ドアへと向かう。
身体中が、ギクシャクする。
まるで、全身の関節が油切れのロボットの様な心境だ。
トロは、年寄りみたいに中腰のまんま、ドアへと向かう。
ペタペタペタ・・・ガチャ! キィイィイィ~~~
「ちょおっとお! どれだけ呼び続けたと思ってんの?!」
「ああ、すまん・・・なんか疲れが溜まってて(汗)」
「ふん 昨夜はちゃんと寝たの?
なんだか、ロンデルとロプロプとが騒いでいたようだけど」
「ひゃあ?!・・・あっ! ああ、いや、そのぉ・・・
ちょっと、ロンデルとロプロプのスキルについて話し合っていたら熱が入っちゃってな!」
「・・・ふぅん そう?」
「・・・(汗)」
ナディーは、訝しげにトロとロンデル達を交互に睨む。
もしかしてナディーは、トロと、ロンデルとロプロプとの間に何かある事に気付いているのでは?とヒヤリとして、思わず生唾をゴクリと飲んだ。
だが、純粋無垢なナディーである。
どうやら、トロ達のナニには気付いてなさげだった。
「なんでもいいけど、部屋ベルが鳴っていたの気付かなかったの?」
「部屋ベル? えっ? いや、知らない 気付かなかった
疲れていたので、爆睡していたのかな・・・はは(汗)」
「あれ? そうなの? ロンデル達も?」
「そういえば、何か鳴ってましたね?」
「「はあい?!」」
「すむ 鳴ってましたな!」
「言えよ!!
って、ロキシーとミケはまだ寝てるし!」
「はあ・・・はやく下へ降りましょう?
部屋ベルが鳴ったら朝食の準備ができた事だったはずでしょ?
なのに、部屋ベルを何度も鳴らしても降りて来ないからって、再々言われてるんだから!
ワイサ君達も私達を呼びに来ていたけど、もう先に下に降りてるわよ!」
「あ、はいはい! すぐに出ますから(汗)」
そう言って、慌てて服を着替えるトロ。
それより、ナディーは昨夜とはまるで態度が違う。
と言うか、何も気にしていない様子。
トロには、それが逆に気になってしまう。
だが、後腐れのない、サッパリした性格だ。
いい女だな! 惚れてまうやろー!
しかし昨夜は、寝る前に宿の中を探検したかったのに、一晩中ロンデルとロプロプに食われ続け、まったくそれどころじゃなかった。
まったく、そんなスタミナがどこから湧いてくるんだ?
人には無い、野生の・・・かな?
なんて思っていたら、突然アレがきた。
きゅう~~~っと、下っ腹が痛くなり、頭まで痛くなる。
女性の身体とは、性行為の後は体内の女性ホルモン濃度が2~3日高くなるって言うから、それも関係しているのか?
ロンデル達に食われるようになってから、急激に胸が大きくなった気がするが、それも関係ありなのか?
だったら、いや、どうせならもっと胸を大きくしたいから、もっとロンデル達に・・・
いやいや、何を考えてんだ俺!!
でももし、何かの病気だったらどうしよう?
ネットでたまたま観た記事だったが、ホルモンバランスの崩れによって、不正月経が起こる場合もあるらしい。
それだったら、嫌だな・・・
魔法や魔法薬で簡単に治せるけど。
なら今回のは、回復魔法をかけても治らないんだから、やっぱり生理なのは間違いないよな。
だいたい、魔獣と性行為したからって、妊娠はしないし。
どれだけやっても、問題はなしで・・・
だから、もっと胸を大きくしたいから・・・っておい!
なんて、またバカなことを考えてるじゃないか?!
どうしてしまったんだ俺えっ!!??
あっ!⋯とっ! 今は、それどころじゃなかった!
「は!・・・あ⋯あ⋯やばっ!」
「ん? どうかしましたか、ご主人様?」
「「「???・・・」」」
「チッ! 忘れていたぜ・・・
この頃、女になったり男に戻ったりなんかを、繰り返していたからか、アレの来る日がズレちまったようだ
ってか、全然考えていなかったな・・・(焦)」
「「!・・・」」
「はあ~~~アレですか?」
「うむ アレですな!」
「「???」」
ロンデルとロプロプは、なにやら納得したかのような顔をして何度も頷く。
でも、ロキシーとミケは理解できていない様子だった。
ロキシーには、アレ・・・つまり『生理』はない。
ゴーレムだからなのか、女の子の姿に変身しても無いのだそうだ。
と言うか、そもそもゴーレムには性別が無いらしい。
ミケは、元々野生の動物である。
自分で処理してしまうので、なんちゃない。
だが、ロンデルとロプロプは、元々雌であり、人の姿に変身しても必ず来るのだとか。
トロにはまったく気付かなかったが、自分で処理していたそうだ。
どうやって???
なら、ナディーやワイサやクレオやエヴァは?
と言うツッコミを入れたいところだが、やめておこう。
だがトロは、人族である。
女の子になれば、女の子の日が来るのは当たり前である。
一応、日本での暮らしで女性達が使っていた生理用品の存在を知っていたので、そんな備品は予め種生成で用意はいている。
ただ、今回のトロは、男に戻ったり女の子になったりと繰り返していたので、周期がズレてしまい、トロ自身も完全に忘れてしまっていたのだった。
「ああ~~~もお~~~こんな時に・・・(汗)」
「まっ! 仕方ありませんな!」
「ご主人様は、女だと自覚が足りませんな!」
「うるせぇーよっ! ほっとけっっ!!
っつーか、俺は元々男なんだよ!!」
「妊娠すれば、アレも無くなるのでは?」
「んなっ?!」
「でもそれは、子供を産むまででしょうな!」
「これなら、少しの間は楽になりますね!」
「バカな事を言うなあ!!」
「産まれたら崖から突き落とすのです!
そして這い上がって生き残った子供だけを、育てれば良いのです!」
「獅子かよ!! 俺は人間だ!!」
「「「「えええええっ?!」」」」
「ええって、なんだその反応はあ!! 人間だってば!!
ってか、そんな獅子の情報どこで知ったあ?!」
「以前に、ご主人様が話していたじゃないですか?」
「え? あ、あれ? そうだった・・・かな・・・(汗)」
「では、私がご主人様のお子様を育てましょう!」
「何言ってんだお前!!」
「あ! 我が育てますぞ!」
「こらこら! 子供を産む前提で話しを進めるな!!」
「僕もだってえ!!」
「待て待てぇ!!」
「6匹くらいなら世話するにゃよ?」
「はあ?! 冗談じゃない! 怖い事言うなよ!!
俺が子供を産む?! 考えたくもない! やめてくれっ!!
何人産ませるつもりだ! ってか、だいたい、誰の子だ!!
か、からかうのも、大概にしてくれ!」
「「「「・・・(笑)」」」」
パタパタ・・・
ロンデル達は、顔を見合せてクスリと笑った。
トロはそんなロンデル達を睨みながら、慌てて処理をした。
この2人の前では、まったく平気なトロだった。
だが、トイレには間に合わそうにないので、異空間収納から以前作った簡易トイレを取り出し、手際よく済ませる。
もう慣れたもので、ササッと終わらせてしまった。
「ゔゔ~~~また毎日コレが続くのかあ~~~
コレが来ると、どういう仕様が解らないけど、男に変身できなくなるんだよなあ~~~(凹)」
「仕方ありませんな!」
「ご主人様なら、アレを止める事もできるのでは?」
「そりゃまあ、できるけど・・・
来る前に施さないと、来てからじゃ意味が無いだろう?
怪我や病気じゃないから、魔法も魔法薬も効果が無いんだよ
はあ~~~今回は迂闊だった(汗)
そんな事より、早くしないと またナディーの機嫌が悪くなるぞ!」
「そうでしたな!」
「うむ!」
「はいはい!」
「にゃあ!!」
トロ達は、部屋を後にした。
・⋯━☞宿屋海賊船1階☜━⋯・
ワイワイガヤガヤ・・・
「うお?!・・・こんなに泊まり客が居たのか・・・(汗)」
「んもお! トロがグズグズしているから!」
「す、すまん・・・(汗) 」
1階へ下りて驚いた!
昨夜は1人として他の泊まり客とは会わなかったのに、1階の食堂には溢れるほどの泊まり客達が座る場所も無いほどにひしめいていた。
海賊のコスをした店員達も、忙しげに動き回っている。
すると・・・
「師匠ー! コッチです━━━!」
「おっ! 流石はワイサ! 場所取りしてくれていたんだな!」
トロ達は、ワイサの座るテーブルに着く。
そして、テーブルの周りに目をやると、なぜか1人見知らぬ女の子が1人座っていた。
はて・・・相席だろうか?
「ん? ワイサ、その娘は?」
「ああ、この娘は今しがた仲良くなった娘で、名前は『ムラサキ』というんです」
「へえ・・・」
「ムラサキです よろしくお願いします!」
「どうも・・・俺達は『トロ愉快な仲間たち』って冒険者パーティーをしていて、俺がパーティーのリーダーをしているトロだ」
「はい! よろしくお願いします!」
「「・・・???」」
さっきから、『よろしくお願いします』と言うが、いったい何の事だ?
トロとナディーは、???だった。
それに、妙な違和感を感じた。
普通ならここで、女の子の俺が、自称『俺』と呼ぶところを不思議に思い聞いてきたり、怪訝な表情を見せたりするものだが・・・
そんな事には、まるで何も無かったかの様に話しかけてくる。
先に、ワイサ達と話しをしていたとしても、不自然なくらいに、ムラサキという少女にはよそよそしさがない。
そして、そんなムラサキから、いきなりな事を頼まれる。
「あの・・・初めて会って唐突なんですが、私を貴女のパーティーに入れてくれませんか!」
「「はあい?!」」
「「「・・・」」」
なんだ?! 初顔合わせでいきなりパーティーに入れてくれだと?!
ワイサとクレオとエヴァは、どうやら粗方自分達のパーティーについての話しはしていたようだが、おおよそこうなる事を予測していたのだろう。
しかも、もう受け入れているかの様に、うんうんと頷いている。
だが、トロとナディーはさっぱりだ。
そんな彼女から、思いもしない言葉が飛び出した!
「ちょっと待ってくれ!
どうやら俺の仲間達と話しはしていたようで、少しは打ち解けてはいるようだが、だからと言って、『はいどうぞ』と、簡単に入れる訳にはいかない!
先ず俺は、君の事を何も知らないし、ハッキリ言って信用もない
とにかく、君の話しを聞かせてくれないか?」
「はい・・・実は私は・・・元日本人です」
「ぶあはっ!! なんだってえ?!」
「「「「?!・・・」」」」
なんだと?! 元日本人だってえ?!
いやいやいや、そんな話し、今ここではできないぞ!
トロ達はとにかく、早々に食事を済ませて、トロの部屋に集まる事にしたのだった。
魔獣ロンデルとロプロプは、久しぶりに大暴れ!
トロは為す術なく、その姿はまるで囚われの女騎士・・・
身体は自由にできても、心まで自由にできるとは思うなよ!
くっ!殺せ!
まさかの元日本人と出会う・・・
さて、彼女は一体何者なのか?




